第8話
『個体名:レモンのlvが一定値に達しました。進化が可能となりました』
「地獄だったね……まさか3日もかかるなんて」
「メキュ……」
「ピキュ……」
レモンを仲間にしてから3日。ようやくワームを倒していくレベリングが終わりを告げた。こんなに時間かかるとは……
「長期休み中で、日中にログインし続けていられたからこれで済んだけど……学校があったら何日かかったことやら」
想定外だったのは《食育》の経験値の少なさ。ワームから大して経験値を得られないとは最初から思っていた……だけど《食育》の経験値があれば上がると思ってたんだけど当てが外れた。
(ライムの成長スピードを参照したんだけど……やっぱり与えた物の質が違いすぎたかな)
店売りのやつと調薬に関しては最先端のクイラさんの薬。比べるまでも無く後者の方がスライムの餌として上質なもの……得られる経験値の量に差も出るよね。
「次はもっとマシな餌を用意できるようにしよう……さて進化先はどうやったかな?」
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進化先
▶︎ラージスライム
▶︎エレキスライム
電気を発生させることができるスライム
静電気を体内に蓄電し、任意で放電できる
自身に発電能力が無いため蓄電が必須になる
▶︎バトルスライム
戦闘に対する意欲が強いスライム
スライムとしては好戦的であり戦いを求めがち
所詮スライムなので実力はお察しである
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ラージスライムは共通進化ってところか。2つ目が餌による進化で3つ目が行動による進化……3つ目は物凄くネタの香りが強いけども。
「まぁ、ここは普通にエレキスライムだね」
私はサクッとエレキスライムを選んだ。レモンの身体が光り、薄いレモン色のスライムになった。サイズは変わりない……ライムみたいに小さくなったりはしないんだね。
「ビリリ!」
進化したらライムの時と同様に鳴き声が変わった。ステータスはどうなったかな?
▽▽▽▽▽▽
レモンlv1/20
種族:エレキスライム(第1進化)
HP:40/40
MP:35/35
スキル
《悪食》《打撃耐性・Ⅱ》
《蓄電・Ⅰ》10/100
静電気や雷属性攻撃を体内に溜め込む
溜め込める量を超えるとその分放電する
《放電》
溜め込んだ電気を一気に放電する
《蓄電》で溜め込んだ量が多い程威力が上がる
また威力が高い場合、麻痺を発生させる
△△△△△△
《蓄電》と《放電》を使いこなすタイプのスライムみたいだね。《蓄電》は帯電砂利でも溜められるから溜めさせておこ。
(あとライムと比べてステータスが控えめなんだよね……メディカルスライムはなんか特殊な進化みたいだし。それが関係してる?)
んー、これはいつか検証してみたいね。余裕が出来てからになるだろうけども……
(私のlvが10にならないと新しく仲間にできないしね)
まだ7とかなんだよね……本気で出遅れ感が凄いことになってきた。あっ、ちなみに全然見せてなかった(そもそも見る気が無かった)ステータスはこんな感じ。
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ココロlv7
▷称号
・新人テイマー
・駆け出し調薬士
▷パートナー:2/2
ライム:メディカルスライムlv9
レモン:エレキスライムlv1
▲▲▲▲▲▲
こんな感じだから見る意味特に無いんだよね……称号の効果を確認するくらい?
「新人テイマーが残っているうちに次の町に行けるか試してみるか……レモンの能力チェックしてからになるけども」
「ビリリ?」
ワームは流石にもう弱すぎるからパス。オオカミを狙うか……進化したレモンなら無謀な戦いにはならないはず。私はレモンを連れてオオカミを探した。
レモンはピョンピョンと跳ねて私の後を着いてくる。動くことでも蓄電できる……意外と蓄電しやすいんだね。
「グルルル……!」
段々とカラフルになりつつあるメンツで森を進んでいると目当てのオオカミが現れた。オオカミは1匹で唸りながら近づいてくる。
「向こうから来てくれたね……てか、見かけるたびにいつも1匹なのなんでだろう?」
オオカミって群れで行動する動物だと思うんだけどね。そういえばこいつの名前……確かロンリーウルフだったかな?ロンリーって独立の意味があったし、一匹狼ってこと?
「ビリリ!」
唸り声をあげて威嚇するロンリーウルフに対し、レモン(?)は身体を震わせて威嚇し返す。威嚇されたロンリーウルフはスライム如きに威嚇されてムカついたのか牙を剥き出して飛び出してきた。
「ガァァ!!」
向かってくるロンリーウルフに対しレモンは動じず待ち構えていた。そしてロンリーウルフの牙が当たりそうになったところで……
「ビリリ!!」
一気に放電した。溜め込んでいた量は半分程だったけど派手にバチバチ音が鳴り、青白い電撃がロンリーウルフへと襲いかかった。
「ギャウン!!?」
電撃を鼻先に食らったロンリーウルフは悲鳴をあげて怯んだ。威力もかなりあったのか白い煙がロンリーウルフの身体から薄らと立ち上っている。更には身体が痺れて動きが鈍っている。
「ビリリ!」
レモンはロンリーウルフへ体当たりを食らわせてトドメを刺した。蓄電量が半分でロンリーウルフを瀕死に……素晴らしい威力だね。蓄電量が100%ならどれだけ威力あるんだろう?
「試してみたいけど……オーバーキルになりそうなんだよね」
この森で強い方のロンリーウルフが半分の蓄電で瀕死になら、他のモンスターたちは同じ量で多分死ぬ……一気に全部放電するからオーバーキルは無駄だよね。
「あっ、そういえば1体だけ蓄電量100%を耐えそうなの居たね……」
そいつに対して使ってみよう。私はレモンに帯電砂利を与えたりして蓄電させながら目的地へ向かった。モンスターと戦闘して無駄になると面倒だから、隠れたり獣避け使ったりして戦闘は控えた。
「さてとそろそろのはずなんだけど……」
レモンの蓄電を100%にした私は地図を見つつ辺りを見回した。情報通りならあることが起きるはず……
グォォォ……
「おっ、来たかな」
獣の咆哮が遠くから聞こえてくる。そして茂みを掻き分け……いや、踏み潰して強引に進むような音が近づいてきた。そしてゆらりと森の暗がりから現れたのは深緑色で身体に赤い傷跡があるクマだった。
「グォォォォ!!」
(流石にボスなら100%の放電でも耐えられるでしょ。ついでに倒せれば次の町に行けるし丁度良い)
この森のボスであるフォレストベア。次の町へ行こうとするプレイヤーの前に立ちはだかるモンスター。こいつがいるせいで次の町に行けなかったんだよね……レモンが未進化のままだと確実にボコボコにされて死ぬから。
(スライムがパートナーだと進化しないと勝つ未来が無いっていうね……)
進化しても進化先によってはキツイんだけどさ……まぁ、正面から戦うつもりはないけどね。こっちを美味しい獲物と認識したのか涎を垂らして近づいてくるフォレストベアを私は見る。スライム2匹に見た目は子供の女1人……美味しそうに見えるだろうね。
「とりあえず動きを止めよう」
レモンが放電する前に攻撃されたら危ないからね。私は獣避けをフォレストベアの顔目掛けて思いっきり投げた。
「グォォ!?グォォォォ!!!」
獣にとって劇薬な獣避けを直に、しかも顔にかけられたフォレストベアはもがき苦しみ始めた。ばっちり効いてるね。
「ビリリ!」
苦しんでいるフォレストベアにレモンがピョンピョンと近づき思いっきり体当たりを食らわせる。そして一気に溜め込んでいた電気を放出した。バチバチバチ!!と青白い電撃が爆ぜるように発生した。
「グォォォォ!!?」
獣除けで視覚と嗅覚を潰されていたところに強烈な電撃を食らいフォレストベアはパニックを起こした。しかし痺れているせいで大暴れはできずピクピクと悶えていた。
「耐え切ったね……痺れが回復する前にトドメ刺そうか」
「ビリリ!」
100%放電も確認できたから適当に50%蓄電させた放電でフォレストベアにトドメを刺す。蓄電前に復活しかけたから獣避けを追加でかけた……ボスなのにまともに動けずやられてるのには同情する。
『称号:狂科学者を獲得しました』
「なんかやばい称号手に入ったんだけど!?」
取得条件何!?私は驚きつつ効果を確認した。
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狂科学者
効果
危険物に分類される調薬の成功率を15%上昇
危険物に分類される調薬の失敗率を10%減少
取得条件
自作した薬で敵を苦しめて倒す
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獣避けって危険物扱いなの?まぁ、獣系のモンスターにとっては危険物か……原材料も危険物だし。
(クイラさんも持ってそうな称号だね。役に立ちそうな称号で良かった)
あんまり口外できるようなものじゃないけどね。効果の方はあとで調薬をしに行って確認しておこう。
「とりあえずこれで次の町に行けるね」
着いたら1回ログアウトして夕食。そのあとは情報収集しよ……新しく薬の材料とか見つかると良いなぁ。