第75話
「ここがココロちゃんの拠点なんだね〜……なんか豪華だね〜。外はゴーストタウンみたいだったけど〜」
「チェリーさん。あんまりそういうこと言わない方が良いですよ……」
メロンが進化してから3日ほど経って、うちにチェリーとミリアちゃんが来た。助祭権限で無事に招待できたね……まだ立ち入り制限あるし。
「メキュ」
「わっ、ライムちゃんだ〜。人型になったのは聞いてたけどココロちゃんに似てない〜?」
「そうですね……というか全員ココロさんに似てますね。それぞれ個性がありますけど」
出迎えたライムを見てチェリーとミリアちゃんがこっちに視線を向けてきた。それを私に言われても……私自身分かってないし。
(というかメロンがスライムヒューマになったのもちょっと気になるんだよね……)
メロンって仲間にしてからそこまで時間経ってなかったけどスライムヒューマになったしね……まぁ、割と手間のかかる子だったから他の子よりも世話したりしてたけど。そもそも信頼って言葉がね……曖昧過ぎてよく分からない。何を持って信頼なんだろうね?
「まぁ、とりあえず部屋まで行こう……ここ玄関だし」
話する場所じゃないからね。私は色々と家具を増やした応接室にチェリーたちを案内した。ちなみにこの家、実験室と応接室とライムたちの部屋以外は何も無い。てか2階とか全然上がってないし……流石に活用すべきか?
「ヒヤァ……」
「ノロォ……」
「あっ、この子イベントの時の子〜?」
「そうみたいですね……えっ?進化早くないです?」
応接室にはライムとルベリー、あとプルーンが居る。ルベリーとプルーンはトランプで遊んでた……何で応接室で?
(大方、レモンとアセロラが居るんだろうな……)
あの2人。割と騒がしいからなぁ……ライムたちのための部屋は防音しっかりしてて騒いでも問題無いし。スチンとメロンは庭で寝てる。あの子たちは寝友だから……うたた寝好きのスチンとガチ寝好きのメロンってスタンスの違いがあるけども。なお、仕事はちゃんとやってくれてる。品種改良はまだだけどね……まだ育ててない植物があるからね。一通り効果とかを確認してから品種改良には踏み切るつもり。
あっ、ちなみにチェリーたちのパートナーは今は居ない。理由は船に乗れなかったから……人が3人乗るとパートナーは2匹しか乗せられないんだよね。重さ的に……なのでチェリーたちのパートナーはテイマーギルドで預かってもらってる。
(ミリアちゃんはモコモコのニワトリで可愛かったなー……チェリーのは黒い水晶チックな頭蓋骨だったけど)
凄い呪われそうな見た目だったね……今後はどんなヤバそうな見た目のやつが増えていくのか……
「そういえば、チェリーたちって自分たちの装備は買わないの?イベントの時から変わらないけども」
チェリーたちが着てるのって多分セカンディア辺りの装備。王都まで来たなら装備の更新はできると思うんだよね……2人ともパートナーの装備は考えなくて良さそうだし。いや、ウサギの子はなんかハンマー持ってたか……
「う〜ん、そうしたいのは山々なんだけど〜……そこまでお金が無いんだよね」
「山道を抜けるのに薬を沢山買っちゃいましたからね……お金稼ぐのも結構大変ですし」
…………あっ、そうか。チェリーたちって私と違って金策手段が依頼だけなのか。私は依頼とプレマでの売り上げがあるからお金を稼ぐこと自体は難しくない。そこを失念していたね。
(とはいっても……ここの金策って結構大変なんだよね)
王都周辺のフィールドはモンスターが強くないけど環境が厳しいのが2箇所。環境が厳しくないけどモンスターが厄介なのが2箇所。後者に至っては転移代がかかるせいで出費がかかる……ついでにチェリーは虫嫌いだから湿地帯は嫌だろうし。
「一応、聞いておきたいんだけど2人は何処から攻略するつもりなの?」
「えっ?特に考えてないけど?」
「昨日の夜に着きましたからね……情報も調べてませんし」
そう……なら何も言わないでおこう。楽しみを潰すのは良くない。ネタバレは処刑ものの極刑って渚も言ってたし。目が据わってて怖かったな……あの時の渚。殺意に満ち溢れてたね。
その後、私はチェリーたちと世間話をしたり、ボードゲームで遊んだりして時間を満喫した。こういうのも偶には良いね。
「そういえばさ〜。なんでココロちゃんの服、そんなにスケベになってるの〜?」
「聞かないで……私も気にしてるから」
途中、羞恥心を刺激されたりして大変だった。他人に指摘されると恥ずかしいんじゃい!!
◇
「ココロちゃん。またね〜」
「ココロさん。今日はお邪魔しました」
「またいつでも来てねー」
「メキュ」
「ノロォ」
私は手を振ってテイマーギルドに向かっていくチェリーたちをライムたちと見送った。さーて、このあと何するか。土曜日だからまだログインしてられるし。
「流石に色彩の迷宮は良いかな……行き帰りの転移代分を回収するの時間かかりそうだし」
まだ素材も充分あるんだよね……他のところのフィールドでも行こうかな?
「そういえば北にあるサブのフィールド……なんか面白そうなんだよね」
滅茶苦茶不人気な場所だけども……そしたら準備して向かおうとしよう。今回はライムとルベリーが活躍するだろうし……いつも以上にね。
私は一旦拠点に帰って準備を整え、北の町ノーステルマに転移した。この町は雪山の斜面に作られた町。色んなところから温泉が湧き出していて湯治の町としても有名。水路には湯気を出す温泉が流れており、雪が降る中でもあまり寒さを感じない。とはいえ……
(私の服装……場違い感が凄いね)
周りの人は厚着では無いとはいえ防寒着を着ているのに、私は露出過多のシスター服?だからね……気にしたら負けだ。強化で寒さは防げてるし。
私はビシバシと感じる視線をスルーしつつ目的の場所に向かう。そこまでは神殿所属の特権で馬車を出してもらえるからありがたいね。
「ほへー、嬢ちゃんその年で助祭なんか。頑張ってんだねー」
気の良い御者の人に話しかけられること30分弱、目的地へと到着した。そこは暗い谷に挟まれた町。霧に包まれ何処か別世界……死者の世界のような静寂さを放つ町。ここは旧ノーステルマ、湯が枯れ死者に支配された町のなれ果て。
「それじゃあな。帰りを呼ぶ時は狼煙を上げてくれー」
御者の人はそう言い立ち去っていった。ここに長居するのは危ないからね……一応、モンスターが出てこないように結界が張ってあるけども。私は薄い水色の膜のような結界を見る。この結界は人とパートナー以外を弾く結界、神殿が管理していて故意に壊せば地獄を見させられるほど重要なもの。
旧ノーステルマはその名前の通り前のノーステルマ。温泉が湧き出し王都の次に発展した都市と言われていたが100年ほど前に突然温泉が枯れ、集団地下墓地からアンデッドモンスターが大量に出現。アンデッドの大群により町は崩壊し、今では神殿が管理・監視を行っている。アンデッドの駆逐は何度も試みられたけれど、地下墓地がダンジョン化したのか尽きることなく湧き出すことから結界で隔離されている。
(ここのアンデッドを減らすのも神官の仕事の1つなんだよね)
定期的に減らさないと結界への負担が大きくなってしまうらしい……1回行くだけでそれなりの報酬が貰えるし、闇属性の強化薬の素材があるから個人的に旨味はある。
不人気な理由は町から遠くてモンスターの数が多いのに経験値が少なく、落とす素材もあんまり旨味が無いからだね。だから気兼ねなく探索できる。
「さて、それじゃあ行こうか」
私たちは結界を通り抜けて旧ノーステルマの町へと入った。町は荒れ果て物は何も無い……100年も経てば劣化に風化で大体のものは消えるか。
(さーて、ここではどんな素材が手に入るかな?)
闇属性強化薬の素材以外にも薬に使える素材があるか楽しみだね。




