表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第4章 第3回公式イベント 闘技大会編
86/172

第72話



「暑い……溶ける……」


 朝の時点でそれなりの暑さ。腹が立つほどに快晴の中、私は久しぶりに通学路を歩いていた。エアコンの効いた部屋で早く涼みたい……


「やっほ〜心ちゃん〜。元気無いね〜?」


「桜……暑いからくっつかないで……」


 私が暑さでゾンビになりかけていると、桜がギュッとハグしてきた。死ぬ……まな板に殺される。


「誰がまな板だって〜?」


「あっ」


 暑さで口が軽くなってたみたい。私はピキとこめかみに筋を浮かべた桜に揉みくちゃにされながら学校にたどり着いた。桜とワチャワチャしてたからチャイムギリギリ……


「おはよー。心ちゃん久しぶりー」


「いつ見ても可愛いねー」


「おはよう。そして当たり前のように頭撫でないで……」


 下駄箱から教室まで行く間、久しぶりに会うクラスメイトたちと挨拶を交わす……マスコット扱いだからかいつも頭撫でられるんだよね。挨拶するたびに撫でられるけどハゲるわ!


「人気者だね〜」


「本心から言ってるなら、そのにやけ顔をやめてから言ってくれる?」


 私はニヤニヤしている桜に溜め息を吐きながら教室に入った。そして自分の席に鞄を置き……前の席で凄い目立つ格好、机の上にU字のクッションを乗せてうつ伏せで寝ている奴を見た。


「渚……学校に何持ってきてるの?」


「んっ……?」


 寝ているこいつの名前は白凪渚……マイペースを貫き通した廃人ゲーマー。徹夜でゲームして学校に来るから仮眠のためにいつも枕を持ち込んできている。


「ふわぁ……おっ、ロリ巨乳とまな板だ。久しぶり」


「「あ"っ?」」


欠伸をしながら枕から顔をあげた渚は、いきなり私たちの導火線に火をつける発言をした。こいつ……どうしてくれよう?


(渚はマイペース過ぎて煽りが効かないんだよなぁ……)


 とりあえず頬を引っ張っておくか。私はミョーンと渚の右頬を横に伸ばした。反対側は桜が引っ張ってる。


「……痛い」


「徹夜ゲームで寝ぼけてる頭には良い刺激でしょ?」


「うんうん。寝不足だから私たちの地雷を踏み抜いたんでしょ〜?目を醒めさせてあげる〜」


 捻ってないだけ感謝して欲しい。暑さでイラついてたのもあって割とカチンと来たからね……桜はまな板弄り2回目だからかな?


「頬取れるかと思った……」


 私と桜に引っ張られた頬を摩りながら渚は文句を言いながらジト目を向けてくる。目の下に濃い隈があるせいでパンダみたいだな。


「その隈。夏休みどんだけゲームしてたの?」


「1日20時間くらい?VRMMO内で寝てたりしたし1週間に1日は丸一日睡眠に充ててた」


 極端過ぎる生活習慣だな。しかも聞いた話だと食事はサプリメントとゼリー飲料のみ……廃人?

 渚の家は親が共働きで家に居ないことが多い。朝早くに出て夜遅く帰ってくるのがデフォルトだから極端な生活をしても何も言われないらしい。羨ましいって感想が湧く前に人としてマズくない?って感想が出てくる。

 ちなみに渚は私と同じく宿題はさっさと終わらせるタイプだから、そこはちゃんとしてる……どちらかと言うと。


「そういえば桜。夏休みの宿題っていつ頃終わったの?」


「えっ?宿題?昨日だけど〜?2割くらい残ってたから大変だった〜」


「今年もか……」


 桜はスケジュール管理が下手……スケジュールを立ててもその時の気分でやることを変えるから、立てたスケジュールが無くなったり後に回されたりして……そのツケを後で払うことが多い。


「……桜は将来浪費で借金しそう。貸さないからね?」


「借金なんてしないよ〜」


 渚の言葉のナイフが桜に深く突き刺さる。ついでに私にも……EMO内でかなり散財気味だからね。懐が寒くなった回数とか両手の指の数より多いかも?


「あっ、そういえば心ちゃん〜。私もう少しで王都に到着しそうだよ〜。ミリアちゃんと一緒に〜」


「あっ、そうなの?じゃあ拠点の片付けしとかないと……」


 そんなに散らかってないけどね。ライムが普段から掃除してくれてるし……というか思ったより時間かかったね?坂でも転がり落ちて死んだりしたのかな?


「……ん?何の話?ゲーム?」


「あっ、そうか渚は分からないか。えーと、【Monster・Evolve・Online】ってVRMMOの話で……」


 私が説明しようとすると『キーンコーンカーンコーン』とチャイムが鳴った。これは話はあとだね……


「ごめん渚。続きは後でするね」


「あー、うん。別にそこまで興味無いから……ふわぁ……」


 本当に興味無さそうだな。それはそれで腹立つ……私はそんなことを思いつつ自分の席に座る。少しして肌をこんがり焼いた担任が教室に入ってきた。なお、私のクラスの担任は黒木勝(くろきまさる)先生でスキンヘッドのマッチョ……だけど担当教科は体育ではなく英語。ユーモアーがあるから生徒人気は高い。


「おーす、お前ら久しぶりだな。それじゃあ出席取るぞー」


 こうして2学期の学校がスタートした。












 「(心と桜もやってるんだMEO……まぁ、どうでも良いけど)」



 夏休み明けの学校1日目は基本的に始業式とクラスで軽い説明がされて終わりがちな気がする。体育館というエアコンの無いところで30分間も話を聞くという苦行を乗り越えれば早く帰れる……ちなみにうちの校長は話がとても短い。一言二言言ったら終わり……逆に教頭先生の話が長いんだけど。


(早く帰りたい……でもこの時期にはあれがあるからなぁ……)


「それじゃあ次に文化祭の出し物を決めるぞ。3週間後だからテキパキ決めろよー」


 そう文化祭。うちの学校は割と力を入れがちで、全3日間で2日目と3日目には校外から沢山のお客が来る。

 去年、私のクラスは缶ジュースを売るお店をやっていた。その時は600本近く用意していたのが2日目で売り切れ……追加補充して3日目を乗り越えた。売り上げも凄かったね……山分けしても手元に結構来た。


(激混みだから結構地獄なんだよね……私や渚みたいなタイプは特に)


 桜みたいな陽キャタイプは良いけど、陰キャな私たちは人が多い場所自体が苦手……渚なんて幽霊みたいになってたしね。サボろうとして私と桜が逃さなかったのもあるだろうけど……

 私が去年の文化祭のことを思い出している間、文化祭で何やるかの話し合いは進んでいた。えっ、参加しないのかって?私はこういうのは傍観する派だね……決められたことに粛々と従うのみ。まぁ、度を越してるようなものなら流石に意見を言うよ……メイド喫茶やコスプレ喫茶とか言ってる男子諸君?


(少しは欲を隠せ……目がギラついてるんだよ)


 面倒だから口には出さないけど……てか渚の方から音がしないと思って見てみたら寝てるよ。寝息すら聞こえないから一見死んでるように見えるな……背中に指で文字でも書いてよ。


「えー、出し物もある程度出揃ったので今から多数決で決めたいと思います」


 そんなこんなで時間を潰していると多数決の時間になった。えーと、出揃っているので良さげなのは……あれかな。私はパッと見た中でやっても良さそうと思ったものに手を上げた。そして多数決の結果私が手を上げたものが選ばれた。


「では私たちのクラスの出し物はカジノで決まりました」


 今年の文化祭の出し物はカジノになった……決まったけど大丈夫だよね?本物の賭け事するわけじゃなくて、景品はお菓子とかになるだろうし。


(うちの校長。ノリが軽い方だから大丈夫か……)


 その後、カジノは無事に通りました……なんなら校長がルーレット台を貸してくれることになった。なんで持ってるのかは不明であるけど……これからコツコツ準備を進めよう。


「ゲームの時間が減る……」


 平日の放課後は準備に使うからね。商品補充だけ頑張ろう……土日はガッツリ攻略だね。



なお、リアルの方はガッツリカットさせて頂きます

ゲームの方が良いでしょ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
親戚が変な趣味持ってたり実家が古くて大きかったりすると蔵に「なんでやねん」な物があったりする。文化祭でカジノなら雰囲気作りするとしてもウサ耳カチューシャがせいぜいでしょうからねえ。
ひぃん……動いてないのに暑いよぉ〜……干からびちゃいそう……
[一言] 作者もVRものでのリアル描写ほぼいらない派かな。同志。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ