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【書籍化】スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第3章 拠点強化とフィールド攻略編
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第70話



「キシャァァァ!」


「ヒヤァ」


 鎌と盾がぶつかり合い甲高い音を響かせる。アルーリング・マンティスが両腕の鎌でガンガンと攻め立てるが、プルーンの氷の盾は砕けることもヒビが入ることもなく防ぎ続ける。


「ヒヤァ」


「キシャァ!!」


 アルーリング・マンティスのスタミナが切れ連撃の間に隙ができると、プルーンは右手に持った氷のランスを突き出して攻撃する。アルーリング・マンティスの胴体に渾身の一突きが刺さる。


「んー……騎士っぽい子が戦うの。絵になっていいね」


 私はそんな戦いを端でライムたちと見物していた。別に虐めてる訳ではないよ。プルーンが問題無く捌けるのを理解して1人で戦わせてるし……武器の扱いを上達させるためにね。


(進化していきなり武器を扱うようになったからね……)


 下地になる経験が不足していた。最初なんて武器に振り回されてたからね……

 なので武器の経験をここで積ませることにした。アルーリング・マンティスは誘惑以外は物理攻撃……強さも良い感じだから練習相手として丁度良い。危なくなったらレモンとアセロラが参戦するし。


「実戦を重ねる毎に動きが洗練されていくね……強い相手なら積める経験が多いのかな?」

 

 この様子なら物理型の相手はプルーンに任せられそうだね……これ見てると近接型のスライムヒューマはあと数体欲しいな。土と金属なら近接型になるかな?風は絶対違うだろうし……


「ヒヤァ」


「キ、シャッ!」


「おっ、終わったね」


 プルーンのランスがアルーリング・マンティスの頭を貫き仕留めていた。消える前のアルーリング・マンティスの身体にはいくつも穴と霜焼けのような凍結の跡があった。タフで死ににくいっていうのも考えものだね……あんな死に方はしたくない。


「ドロォ……」


「あっ、スチンおかえり。採取ありがとね」


 私がアルーリング・マンティスの死に様にビビっていると、湿地帯の水から出るようにスチンが出てきた。スチンの手には深い青色の液体が入った大瓶がある。

 この液体は蒼霊水。水属性強化薬の素材になるもので、湿地帯で魔力が強い場所から湧き出している。油のように普通の水には混ざらないため容器があれば回収可能……ただし、遊歩道から離れたところで湧いてるから中々難しい。


(私みたいにパートナーの力を借りれば割と安全……)


 普通は護衛してもらうのが正攻法だろうけど、スライムヒューマになって人と同じ作業ができるスチンなら1人でもいける。アルーリング・マンティス以外は余裕だしね……ウォータージェット・ミリピードは相性的に微妙だけど、でもあいつここまで来ると出てこないし。


「そろそろボス戦だしね。プルーンの武器の訓練もそろそろ良いかな……」


 蒼霊水もそれなりに在庫は溜まってる。アルーリング・マンティスも飽きてきたし、時間的にも攻略を終わらせよう。私は蠱惑の湿地帯のボスがいる場所に向かった。ボスのいる場所は湿地帯にできた円形の小高い丘のような場所。遊歩道が途切れているからこの丘に乗らないとだね。


「ここがボスのいるところか……甘い匂いが強いな」


 鼻が麻痺しそうなほどの甘い匂い。周りを見れば誘燗水花が丘を囲むように無数も生え、花を咲き誇らせている。今までのボスエリアの中でもダントツで景観良いな……匂いのせいか緊張感が湧いてこない。


ファサ……ファサ……


 私が頬を叩いて気を引き締めようかと思っていると、頭上から羽ばたく音が聞こえてくる。見上げればピンクと白のマーブル模様の羽を持つアゲハチョウがこっちに向かって舞い降りてきていた。


「ピヨオオオン!!」


 アゲハチョウは楽器のような鳴き声を響かせるとグルっと旋回し始める。アゲハチョウの周りに渦巻くピンクの球体がいくつも現れ……こっちに向かって飛んできた。


「ドロォ……」


「ヒヤァ」


 球体は全てスチンとプルーンが防ぐ。防がれた球体はパァン!と風船が割れるような音と共にピンクの粉を撒き散らす。


(誘惑効果の鱗粉かな……念の為に猛毒消し丸薬とかも飲んどくか。複合効果があると嫌だし)


 私は保険でいくつか丸薬を飲んでおく。液体だとお腹がタポタポになってたかもね……飲む種類多いから。


「ビリリ!」


「メララ!」


 私がモゴモゴと丸薬を飲んでいる間、レモンとアセロラがアゲハチョウに向けて攻撃を放つ。しかしアゲハチョウはフワッと高度を取り攻撃が届かない……電撃の鞭は分かるけど、絞った火炎放射が届かないのは想定外だね。

 その後もアゲハチョウが降りてくるタイミングでレモンとアセロラが攻撃するけれど、アゲハチョウはそれを嘲笑うかのように悠然と空を飛び続けた。


「ならあっち使おうか。アセロラ《爆炎弾》。プルーンの盾の後ろで隠れて溜めて」


「メララ!」


 アセロラは両手を前に出して火の玉を作り出していく。《爆炎弾》は溜めがいるけど飛距離が長めだから当たるはず……弾速遅めだからあれだけど。


「ピヨォォォン!!」


 アゲハチョウは球体を放ちながら近づいてくる。近くなると放たれる球体の数が増えるが……


「ドロォ……」


「ヒヤァ」


 スチンとプルーンの防御を貫くことはできず全て防がれていく。アゲハチョウはその防御を超えるためなのか更に近づいてくる。こちらの攻撃に対して警戒しているようだけど……その距離なら問題無いね。


「アセロラ。発射」


「メラ!!」


 アセロラはプルーンの盾から出て火球をアゲハチョウに放った。アゲハチョウはそれを見て上へ上がり火球の射程からズレた……その瞬間。


「ビリ!」


 レモンが伸ばした電撃の鞭が火球に触れた。火球は花火のように盛大に爆ぜ、その炎はアゲハチョウの身体を襲った。


「ピョオオオオン!!?」


 爆炎に炙られ羽の端が焼け焦げたアゲハチョウは地面へと落ちていく。防御面が脆くて助かった。


「ビリリ!」


「メララ!」


 地面へと落ちたアゲハチョウにレモンとアセロラの追撃が放たれる。攻撃が全然当たらなくて余程ムカついてたのか苛烈だね……


「ピョオオオオン……」


 可哀想になるほどボコられたアゲハチョウは儚い鳴き声を響かせながら消えた。アゲハチョウが消えると風が吹き、周囲の花びらが舞い散っていく……なんか演出があるんだけど。


「他のボスのところには無かったのにね」


 さて、それじゃあ新たな町へ行こうっと……そしていざ助祭へ。丘の奥に移動すると遊歩道の続きがあったので、私は遊歩道をそのまま真っ直ぐ進んで新たな町へ移動した。



「まさかこんな早く助祭になるなんて……ちょっと驚きね」


「パートナーの子たちが強くなってくれたおかげですね。みんなの力が無かったら乗り越えられませんでした」


「メキュ」


「ノロォ」


 割とサクサクと助祭になった私はスライムの神殿でクティアさんと話していた。大所帯で来るのもあれなのでライムとルベリーだけ連れてきてる。本当はライムだけのつもりだったけど、ルベリーの無言の『連れて行けー』オーラに負けた。


「ショゴー」


 ショゴちゃんがお茶を出してくれる……なんか黒くない?このお茶?コーヒーかと思ったけど匂いはお茶なんだよね。


「それは私の先代から引き継いでいるお茶でね。見た目はあれだけど美味しいのよ」


「成程。頂きます」


 私は若干の覚悟と共にお茶を飲んだ。結論としては蜂蜜を入れた紅茶の味がして美味しかった。とろみがあって飲みやすかったし。


「さて、改めて助祭おめでとう。助祭になったからその神官服の強化許可が出せます。素材とお金は自腹だけど好きな効果を付けられるわ。耐寒とか耐暑とか便利ね」


「それ助祭になる前に欲しかったです……」


 耐寒と耐暑……それらのせいで苦労したし。クティアさんは『それらに耐えて乗り越える精神力も必要だからね』と笑っていた。それ言われたら何も言えない……


「それと助祭になると神殿への招待と神官勧誘ができるようになるんだけど……変な人を呼んだりしたらダメだからね?」


「分かってます……また面倒なことになるでしょうしね」


 出禁食らったのに未だにここへ来ようとしているやつも居るらしいからね……水路使おうとしてしょっ引かれたやつもいるらしい。馬鹿だよね……氷海商会のアザラシちゃんの尻尾ビンタでボコボコにされちゃえ。


「まぁ、ココロちゃんが呼んだ人なら大丈夫だろうけどね。で次の話が1番重要なんだけど……その前にココロちゃんに訊いておきたいことがあるんだよね」


「なんですか?」


「訊きたいのはね今後の昇格について……中央神殿規定の司祭になるか、このスライム神殿の聖女見習いになるか」


 聖女見習い?私が不思議に思っているとクティアさんが詳しい説明を始めてくれた。まず神官の昇格は神官→侍祭→助祭→司祭→司教。しかし一部の条件を満たすと各神殿の聖女への道ができるらしい。

 スライムの神殿の場合は①全てのパートナーがスライム系統(今後もずっと)。②同じ属性のパートナーが居ない。③神殿管理者から推薦されること。以上の3つの条件を満たしていて試練を突破すれば聖女見習いになることができる。


「本当はlv100になって10種類の属性のスライムが揃ってから伝えるべきなんだけど……ココロちゃんは今後もスライムだけパートナーにして、属性バラバラにするでしょ?だから今伝えちゃおうかなって」


 えー、良いのそれで?怒られても知らないからね。


(聖女……ラノベとかだとかなり重要な職業だよね?なれるならなってみようかな)


 普通の道も面白くないしね。私は聖女への道を進むことにした。


「了解。じゃあ聖書出して頂戴。聖女への道に進むならやっておくことがあるから」


 私はクティアさんに聖書を渡した。7つの結晶に色が付いている私の聖書にクティアさんが手を翳すと、聖書がチカチカと点滅した。


「これで良し。はい返すね」


「ありがとうございます……さっきのは一体なんだったんですか?」


 見た目は特に変化してないんだよね……私がそんなことを思っていると、クティアさんがその答えを教えてくれた。


「さっきのは聖書の続きを読めるようにしたの……11種類目(・・・・・)12種類目(・・・・・)の属性についてのね」


 それはまさかの謎に包まれていた2つの属性についてだった。遂に謎に包まれてた属性の答えが明かされる?

 


ーーーーーー

一般助祭(スライム)

▷効果

スライム系のモンスターからの敵意減少(中)

野生のスライム系モンスターをごく稀に仲間にできる

仲間にしているスライムの能力を1.5倍

スライムの神殿のある地区への立ち入り許可発行

スライムの神殿への勧誘可能


▷取得条件

スライムの神殿に所属。一般助祭に昇格

ーーーーーー


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