第61話
「クイラさんは相変わらずだったね……さーて、それじゃあ属性強化薬を作ろうかな」
クイラさんと感動?の再会を終え、私は自分の拠点の実験室で実験を開始しようとしていた。帰ってきた時からルベリーが離れようとしなくてちょっと怖い……そんなに寂しかった?
「まずは森の琥珀を粉砕してと……粉砕機買うか」
ゴリゴリと人力で砕くの辛い……お金も消えて辛い……そんなことを思いつつ、私は頑張って森の琥珀を砕いていった。ライムも手伝おうとしてくれたけど……砕く用の器具が1個しか無いから私1人で頑張った。
「森の琥珀はこれで良し。他の素材は……」
基本素材は森の琥珀とライムの治療液。それと効果を高めるためのヤクゼンタケと抗体液。これ以外のものは変に混ぜると失敗しかねない。
「まずは森の琥珀の粉末を治療液と抗体液の混合液に入れて加熱……まぁ、いつも通りの手順」
ライムの治療液を使うとね。私の作る薬で液体なのは聖水ぐらい……9割丸薬って偏ってるな。
「でも液体の薬って瓶詰めするの面倒なんだよね……丸薬の達人の道に進むか」
液体の作るより丸薬の方が慣れちゃったし……そもそも液体=ライムの治療液を使わないってこと。ライムの治療液を抜いたら薬の効果が下がるからね……効果を下げてまで液体の薬を作る気は無い。
「とりあえず試作第1号完成。ツヤの無い真緑だからゴムボールっぽい……肝心の効果の方は」
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植物属性強化丸薬
植物属性のパートナーのみ使用可能
服用したパートナーの植物属性スキルの効果を1分間1.15倍する
追加で飲ませても効果時間が延長されるだけで、効果の強化は重複しない
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ここまでできたらあとは試行錯誤の時間。長くて楽しい時間だね……森の琥珀を砕く工程に目を向けなければ。
「蓋付きの調薬鍋と粉砕機……どっち買うか」
そして私の貯金が沢山貯まる日はいつ来るのか……最近、貯金のことばっかり悩んでるな。これJKの悩みじゃないよね?
(リアルだと貯金に悩んだ事無いのに……そもそもお金使う機会が無いのもあるけど)
服とか化粧品全然買わない……というかお母さんが買うから買う必要が無い。他は友達と出かけた時にいくらか使うだけで溜まってる一方なんだよね。
(リアルでお金は使わないのにゲーム内は大量に消費してる……なんだこれ?)
私はゴリゴリと森の琥珀を砕きながらそんなことを考えていた。こういう作業してる時、違うことを考えることあるよね……そしてこういう時の思考の方が固まりやすかったりする。
(今回の思考はどう考えても金策に結びつくんだけどね……)
キリキリ働いて稼がなきゃ……そういえば今日の狩りの素材をまだ売ってないや。実験終わったら売りに行ってこよう。大森林の素材なら結構良い値段で売れるはず。
「あっ、てかイスティリアの中央神殿支部に顔見せに行くの忘れてた」
なんか色々とやり忘れてるなぁ……あの時、連戦に連戦で全然頭が回ってなかったし。てかボスの素材も確認してないや。
「実験終わったら寝よう。頭が限界を迎えてる……」
私は自分の脳の処理限界を感じた。とりあえず一度始めた実験を放り出すのはしたくないから頑張って終わらせる。治療液と抗体液の配合で多少手こずったけど無事に完成させられた。
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植物属性強化丸薬
植物属性のパートナーのみ使用可能
服用したパートナーの植物属性スキルの効果を3分間1.3倍する
追加で飲ませても効果時間が延長されるだけで、効果の強化は重複しない
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「あとは自動化できる……メモはしっかり取った。よし、寝よう」
現実じゃなくてこっちで寝るか。時間的にリアルは2時……昼寝程度ならこっちでも良いでしょ。
「1時間くらい経ったら起こして……」
「メキュ」
私はライムにそう声をかけてからリビングのソファに寝転んで目を閉じた。そしてウトウトと睡魔の波に揺られて眠りについた。
◇
「メキュ。メキュ」
「ん……?あぁ、時間になった?」
ユサユサと揺すられ私は目を覚ました。壁にかけた時計(高かったけど無いと違和感があったから買った)を見るときっかり1時間経ってるね……というか。
「なんで皆集まってるの?」
「メキュ?」
「ノロォ?」
ソファの周りにはライムたち全員が集まっていた。ライムとルベリー以外は皆寝てる……レモンとアセロラが寝てるのは珍しいね。やっぱりあの連戦は疲れたのかな?
(レモンもアセロラにイタズラされてないよね?流石にライムとプルーンが止めてくれるか……あとルベリー)
てか私のパートナーも増えたよね……あと仲間にしてないのは土と風と金属、そして不明な2つの属性。そろそろ60になるから新しい子を迎えられるけど。
(現状、新しい子を迎えるのは無理かな……他のことで手が一杯一杯だし)
拠点の設備投資が一通り終わってからかな……正直、今は手に入れた拠点の環境を良くしていくのに注力したい。それと同時に薬の開発もね。
(メロンは生産の補助として仲間にしたけど、現状仲間にできる他の3属性はそこまで必要性を感じない)
特に金属。防御力が高くてタンク役にピッタリだろうけど……うちにはもうスチンとプルーンがいるんだよね。あと銀色の果物の名前とか思いつかん。灰色で考えるべき?
「灰色の果物も思いつかないな……まぁ、金属はちょっとやりたいことあるし。風と土が優先かな」
とりあえず色々考えてたら頭が冴えてきた。ログアウトまで2時間くらいか。属性強化薬を作ってプレマに流してログアウトかな。夜はダンジョン……色彩の迷宮に行こうかな。軽く様子見にね。
(メロンは置いていこう……流石に死ぬ)
あと状態異常対策はしっかりしておこう。石化とか不穏なものもあるみたいだし……潜っては薬を作ってをしばらく繰り返すかな?
「石化とかはよく売れそうだね……当面は色彩の迷宮に潜るのをメインの目標にしよう」
新しい目標は決まった。そしたら今やるべきことをやろう。私は寝てる子たちを起こさないようにソファから立ち上がり、ライムとルベリーと一緒に実験室に向かった。




