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【書籍化】スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第2章 神官と第2回公式イベント編
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第50話

書き直しし過ぎて遅れました……



 偽悪魔を潰した後、光を放っていた石碑は消失した。その影響なのか黒化したモンスターたちも南側は少なくなった事で殆どの人は悪魔や他の拠点の補助をしに行った。

 そんな中で私は……ひたすら生産部屋で聖水を作り続けていた。


「最後の1箱できました。持っていってください」


「了解です!前線に持っていきます!」


「あー、ちょっと待って!前線に行くなら回復薬も!」


 悪魔との戦闘が始まって1時間経過した。南は粗方片付いたけど……中央と東、西、北はまだまだ激戦。というか中央に強い人が行っちゃって地獄なんだよね。

 自分で言うのもあれだけど、南が早く終わったのは私が森を焼き払ったり、聖水を惜しげもなく浪費したから。強さだけはちゃんとあるからね……ガツガツ戦闘するのが苦手なだけで。


(やらなくても良い仕事はしたくないしね……)


 薬作りが仕事だからね……だとしても聖水がこんな早く切れるとは。他の薬もかなり減ってきている。


「悪魔というより……他のところの被害がね」


 チャームマタンゴとパフュームバタフライ、そしてドランク・アニマプラント。こいつらの被害がね……こいつらのせいでグタグタになって前線が崩壊しかけたり、偽悪魔の呪いが撒き散らされてダウン者続出。その結果、物資が枯渇した。


(昨日量産された状態異常対策の薬……治療だけできて耐性は作れないからね)


 実験時間が足りなかったのと、大量生産に振り切った結果だから仕方ないけども。その結果、罹って治して罹って治してを繰り返して消費が加速……数を取るか質を取るか。ここは商売をする上で重要だよね。


(私は固定客を増やすために質優先だけどね)


 数は設備を揃えればクリアできる問題だしね……てかこのイベント終わったらお金稼ぎか。今薬とか作ってるけどお金じゃなくて素材で貰ってるし……また大型の依頼をこなして稼ぐか。


「それにしても……天気本当に悪くなってきたね。風も吹いてきたし」


 外は最早嵐……私は生産部屋に居るからあれだけど、外に居たらライムたち吹き飛んでいきそうだね。


「聖水も霊結晶が枯渇したし……しばらく仕事無いや」


 呪いの欠片を霊結晶に変換していってるけど、作るペースより消費ペースが多いとどのみちキツい……てか悪魔の方の戦況ってどうなってんのかな?伝令役の人近くに居たら聞いてみるか。


「ノロォ……」


「こら、つまみ食いしようとしない」


 私は霊結晶に変えるために出した呪いの欠片に触手を伸ばす黒スラをペチっと叩く。油断も隙も無いね……この食いしん坊。これが終わったら沢山あげるから我慢して。


「ギシャァァァァァァ!!!」


「み、耳が……何事!?」


 私が諦めの悪い黒スラのつまみ食いをペシペシと防いでいると、悪魔の咆哮がビリビリと感じるほどの音量で聞こえてきた。生産部屋から出て悪魔の居る中央付近を見ると、なんか竜巻が発生していた……えっ、ヤバくない?


ピシャーン!ピシャーン!


 竜巻の周囲には極太の雷が何度も落ちていく。それにより木が燃えたのか、風に乗って焦げ臭い匂いが……これ私が最初に燃やした火事の匂いかもしれないな。

 私がそんなことを何処か呑気に考えていると、私の足元が光始める。そして魔法陣のようなものが形成され始めた。


「な、ちょっ!全員集合!」


 突然のことに驚きつつも私はライムたちを呼ぶ。これ……多分転移の魔法陣だろうからね。黒スラはガシッと掴んでおく。そして魔法陣が完成し、私は強制的に転移させられた。

 景色が切り替わると、私は竜巻の中に居た……元あった迷宮は破壊され尽くしており、竜巻の頭上には紫色の球体が太陽のように浮かんでいる。肝心な悪魔の姿は何処にも無かった。


「ココロさん!?何故ここに!!?」


「いや、なんか強制的に……なんかメンバー少なくないですか?」


 顔見知りの前線組のプレイヤーが現れた私に驚いている中、私は竜巻の中にいるプレイヤーの数を不思議に思っていた。竜巻の中にいるプレイヤーは大体100人前後、前線組は交代組合わせて150人ぐらい居たはず。


「どうもさっきの悪魔の咆哮と共にプレイヤーの厳選が行われたようです。しかも外との連絡ができません」


「中々に面倒なことしてくれたな……あのタコネコ野郎」


「あっ、デルタさん。それにゲンさんも」


 デルタさんとゲンさんも転移させられたのか……てかゲンさん。タコネコってあの悪魔のこと?


「竜巻の中に転移させられたプレイヤーを見た感じ、どうやらこのイベントでの貢献度が高いプレイヤーが集められてるみたいですね……戦闘力なら私やココロさんは外れそうですし」


「何人か生産班の連中や第2陣のやつも居るしな……んで、タコネコの野郎は何処に居んだろうな?」


 ゲンさんが辺りを見回してそう呟いた時、ピシ!ピシピシ!というヒビが入るような音が上から聞こえてきた。上を見てみると紫色の球体に黒いヒビが入っていた。まさか……


「あっ、悪魔なら上の球体の中ですよ?叫んで竜巻を起こしてから球体になってました」


「「「それを先に言え!」」」


 前線組プレイヤーの発言に私、デルタさん、ゲンさんが突っ込みを入れる。そして球体が眼前に割れて砕けた。


「ギシャァァァァァ!!!」


 球体を割って現れた悪魔は下半身が無くなり、代わりに触手がワイヤーのように捩れあって尻尾みたいに変化。更に新たに腕が4本生えて6本となった虫のような異形の造形となっていた。しかしサイズ自体はかなり小さくなっている……最終形態ってところかな。


「ギシャァァァァァ!!!」


 地上に降り立った悪魔は咆哮をあげるとプレイヤー目掛けて、虫のように這いながら向かってきた。き、気持ち悪……


「恐らくこれが最終フェーズだ!お前ら行くぞー!」


「「「うおぉぉぉ!!」」」


 前線組に居た人たちは鬨の声をあげて突撃していった。悪魔は急ブレーキをかけるように停止すると、その場で横回転し尻尾で薙ぎ払ってきた。


「「「ぐぁぁぁぁぁぁ!」」」


「ギャウン!」


「ガァァァ!」


 回避し損ねたプレイヤーとパートナーが地面を転がる。回避に成功したプレイヤーたちは各々攻撃を悪魔に叩き込む。


「ギシャァァァ!!!」


 攻撃を受けた悪魔は沢山ある腕を滅多矢鱈に叩きつける。法則性の無い動き故に巻き込まれたプレイヤーやパートナーがやられていく。


「ヴァァァァ……」


「ガルルルル……」


 攻撃に巻き込まれ死んだプレイヤーやパートナーがいたところから、黒い影が滲むように出現する。それはまるで死んだプレイヤーやパートナーが黒化したような……まさか!


(あいつの攻撃で倒されると敵として復活する……悪魔らしい能力だね!)


 死んだ生物を自分の手駒に変える。なんて嫌な能力だろうね。


「私は悪魔本体との戦闘に参加はできないから、あの黒いモンスターを処理しましょうか……何かしら貢献しないと」


「いいですね。なら私がモンスターたちを釣りますね。私も参戦するには戦力が無いので」


「なら俺は護衛だな。俺もあれに参加したくねぇし……カメキチが撥ね飛ばすかもしれないからな」


 私はデルタさんとゲンさんの3人で黒いモンスターたちを片付けていった。黒いモンスターたちの強さはそこまででは無く、数発攻撃を叩き込めば簡単に倒せる。ここは雨が降ってないからアセロラも戦える。


「ホー。ホー」


「「「ポッポー!ポッポー!」」」


 デルタさんのパートナーたちが他プレイヤーを襲う前に攻撃してヘイトを稼いで釣る。ノコノコと誘い出された奴らをレモンとアセロラ、カメキチが倒していく。


「ビリリ!」


「メララ!」


「………!」


 黒いモンスターたちは物理攻撃のみ故に倒すのは簡単だった。死に際になんか呪いの残滓みたいなのがこっちに向かってくるけれど……


「ノロォ!」


 黒スラに食べられて消えてしまった。本当に黒スラ……呪い持ち相手には無敵過ぎるね。あとやったところを見たことないけど、黒スラ自身呪いの使い手だろうしね。まさに呪いのスペシャリスト。


(呪いの欠片に対する食い意地だけはあれだけど……どんだけ食べられただろう)


 あんまり考えないようにしよう。そうじゃないと心が痛くなる。


 なお、死んだプレイヤーやパートナーたちはちゃんと戻ってきている。どうもリスポーン地点が竜巻内にされてるみたいだね。ただ無事に復活できてるわけでは無く、解呪できない呪いを帯びて復活しているみたい。


「聖水でも回復できねぇ……効果は5%の能力ダウンか」


「死ねば死ぬほど呪いが強くなるみたいだ!できるだけ死ぬな!!あとで苦しくなるぞ!」


「もぎゃぁぁ!?手持ちの薬が呪いでダメになってるんだけどぉぉ!?アイテム破壊はやめてくれよー!!?」


 どうやらアイテムの汚染の効果もあったみたいだね。接近戦主体のプレイヤーはあの大暴れに巻き込まれやすい……そんで遠距離攻撃には耐性がありそう。遠距離チクチクで簡単に倒せるようにはされてないでしょ。


「ギシャァァァ!!!」


「ん?なんかあいつ……胸のところに光が集まってない?」


 私が悪魔の方を見ると胸の中心に紫色の光が発生していた。その光はジワジワと強まっていき……一際輝いたかと思うと辺りにレーザービームのように散乱した。


「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」


 悪魔の近くにいたプレイヤーとパートナーがレーザーの餌食に。私の方にも流れ玉が飛んできたけど……


「ノロォ!」

 

 対呪い最終兵器である黒スラに吸収されてしまった。周囲の様子を確認すると、レーザーは一撃でやられるほどの威力では無いようだけど、かなり重い呪いが身体を蝕む。死んで呪いが蓄積していたプレイヤーやパートナーは動けるどころじゃない。幸いなことにレーザー分の呪いは回復できるけれど……何度も撃たれたら戦線が崩壊するね。


「ギシャァァァ!!!」


 悪魔が暴れ、呪いの回復が間に合っていなかったプレイヤーとパートナーが潰され黒いモンスターが生み出される。そして時間が経ったらまたレーザーが放たれて同じことの繰り返し……最悪のサイクルの完成だね。


(これ雑魚処理だけじゃなくて本体にも参戦しなきゃかな……フレンドリーファイヤ覚悟で)


 じゃないと怠そうだからね。新しく出てきたモンスターたちを処理しつつ、私は色々と考えていった……何が最適解なのか。こういうボス戦は初めてで何すれば良いのか困るね。それはデルタさんとゲンさんも同じだったらしく。


「うーん、正直私は戦闘は専門外なのですが……ここまでグダグダになるとは。テコ入れが必要ですかね?」


「デルタの嬢ちゃんとこの奴が居ないからじゃねぇか?確か戦闘の指示役が居たはずだが……姿が無いからな」


「あー、ベータですね。彼、戦闘指揮は得意なんですけど……基本的に面倒臭がりなので貢献度が低かったんでしょうね。仕方ないですが……さっさと終わらせるために一肌脱ぎましょう」


 そう言うとデルタさんは何人かプレイヤーを集める。戦闘から抜け出したプレイヤーたちとデルタさんは話し合いを始め…………作戦をすぐに作成した。


「では今立てた作戦の通りにお願いします」


「「「「了解」」」」

 

 集まったプレイヤーは他のプレイヤーに話しかけ、ある程度グループができた。えっ、作戦の内容?なんかゲーマー御用達の単語だらけで分からなかった。戦闘関係は元々得意じゃないしね……スライムだと王道の戦い方というよりは邪道の戦い方になるからさ。

 まぁ、いくつか物資の補給はしたよ。溜め込んであったやつをね……あとで素材をくれるからタダじゃない。別にタダでも良かったんだけどね……


「A班、誘導!B班は側面から遠距離攻撃!」


「ラジャー!こっち来いよ上半身野郎!」


「虫みたいに這ってきやがれ!蚊みたいに殺虫してやるよ!」


「ギシャァァァ!!!」


 A班の挑発?に反応したのか悪魔は咆哮と共に突進していく。その横っ面に無数の魔法などの遠距離攻撃が突き刺さる。


「ギシャァァァ……!!」


「C班。聖水投下!」


 横から攻撃を受け、動きが止まった悪魔に、鳥系などの飛行能力を持つ無数の聖水が降り注ぐ。あれは私が溜め込んでいた失敗作……効果が薄くて捨てるのも勿体無いから取っておいたやつなんだけど、チリ積も的な感じでジワジワと弱体化が入っていってる。

 今まで弱体化してなかったのか?って思うだろうけど……タイミング的に前線組は補給できてなかったんだよね。だって聖水を作って送って時間が経たずに転移させられたから。タイミングが本当に悪かった。


「ギシャァァァ!!!」


 嫌がらせの聖水シャワーを食らい、悪魔は悲鳴を放ち身体を捩るようにして悶えていく。そんな隙を誰も逃すわけは無く攻撃がどんどん叩き込まれていった。


「作戦があるとここまでスムーズなんですね」


「各々が自己判断で突っ込んでたからな……それが悪いわけじゃないが、集団の強みが活かせないからな」


 死者が減って若干暇になりかけている私とゲンさんは悪魔との戦闘を眺めていた。私は参加しても連携取れるか分からない……というか確実にレモンとアセロラの攻撃で巻き添えが発生するから不参加。ゲンさんはカメキチの気分が乗らずに不参加……カメキチ、うちの子と負けないくらいマイペースだね。


「ビリリ……」


「メララ……」


「まだダメ。トドメを刺す時になったら全力出していいからさ」


 そこはもぎ取っておいた。じゃないとレモンとアセロラが不貞腐れそうだからね……レモンとアセロラは機嫌を損ねるとちょっと面倒。ストレス発散し切るまで戦闘しなきゃだからね。あと黒スラ……呪いのビームの気配を察知したからって暴れないで。

 私はレモンとアセロラ、そして黒スラに気を配りながらも仕事をこなしていく。悪魔の方も最初のグダグダだった戦闘は無くなり、着実に悪魔を削っていった。そして……


「ギシャァァァ……」


 悪魔はHPもスタミナも尽きかけ、動きが緩慢になった。レーザーも放てるほど溜まっていない……いよいよトドメを刺す時だね。


「全班、攻撃!!」


「おらぁぁ!トドメじゃあ!」


「踏み潰してくれた恨み……晴らしてやらぁ!」


 トドメの合図が出た途端にプレイヤーたちが殺意を滾らせていく。鬱憤でも溜まってたのかな?まぁ、最初の方プチプチ潰されてたしね。とりあえずレモンとアセロラに突撃命令を出そう。


「よーし、行ってこい!」


「ビリリ!」


「メララ!」


「おい、カメキチ。お前も最後は行ってこい」


「…………」


 帯電したレモンと燃え上がったアセロラが悪魔の身体にぶち当たる。カメキチもヒュー……ドン!って感じでぶつかりに行っていた。


「ギシャァァァ……!!!」


 プレイヤーたちから容赦の無い攻撃を食らった悪魔は断末魔をあげ倒れ伏した。身体が端から崩れて消えていき……最後には何やら黒い結晶が残った。結晶は鼓動するかのように紫色の光を点滅させている……その点滅は段々早くなっているような気がする。


「「「「なんだ……あの見るからに危険な物体」」」」


 プレイヤー全員。その結晶がヤバいものだとは一目で分かった……悪魔が倒せて気が緩んでいるとはいえ、あんな怪しいものを警戒しないわけがない。大方、呪いの爆弾だろうね……最後の悪足掻きとしてはうってつけ。最後の最後でハッピーエンドにしないって悪魔らしいね……ただ、1つ誤算だったのは。


「ノロォ♪」


 こっちには呪いがご飯なスライムが居たことだね。点滅する結晶を見た黒スラは上機嫌な鳴き声を出しながらピョンピョンと跳ねて移動。結晶を丸呑みに。私たちはしばらく黒スラの様子を見たけれど……何も起きなかった。


「無事解決!」


「「「「いや、スライムヤバくね……?」」」」


 こうして悪魔との決戦は終わり竜巻が消えた。竜巻が消えると遺跡は跡形も無く崩壊していたけれど……空は快晴で虹が出ていた。




この章はあと1話+掲示板で終わりです

就活の面接があるためちょいと遅れます

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― 新着の感想 ―
[一言] やはりスライムは進化を重ねて化けるタイプで不遇なモンスなんていなかったんや てかスライムは特化型になりやすい?
[一言] 完全なメタが味方に居たからねぇwww
[一言] 大事な時はゆっくり終わらせてからでいいですよ。 新入社員になって忙しくて帰ってこれない人もいたし。
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