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【書籍化】スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第2章 神官と第2回公式イベント編
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第47話



「ビ、ビリリィィィ!」


「メ、メララァァァ!」


「はいはい。落ち着けー……」


「ドロォ……」


 ジタバタと暴れるレモンとアセロラをスチンと押さえる。暴れている理由は……まぁ、モンスターと戦わせてないからだね。


「あはは〜。大変そうだね」


「あのー、別に戦わせてもいいんですよ?」


「いや、私たちが戦闘に参加すると経験値を奪っちゃうからね……それに我慢を覚えさせなきゃ」


 この戦闘狂たちにね。今までは戦闘を我慢させるって機会があまり無かったけれど……今回はピンチ以外は参戦させない。てか明日決戦なんだから、その時までテンションとか取っておいてほしい。


(私が参加しちゃうと経験値も渋いしね)


 今までパーティー組んでなかったから支障はなかったんだけどさ。パーティーを組んだ状態で戦闘を行うと、誰のパートナーが活躍したかが算出される。その算出された数値を基に経験値がプレイヤーに分配され、その分配された経験値が更にパートナーへ分配される。


(だから今のように戦闘に全く参加しなければ、私に経験値は入ってこない)


 このシステムはパワーレベリングや寄生といった行為を咎める意味があるのかな。今はその仕様がありがたいね。


「キノォォォ!」


「あっ、キノコだ。インディー」


 通路の奥からチャームマタンゴが現れ、チェリーがインディーに指示を出す。インディーの目が光って風の刃がチャームマタンゴを切り刻んでいく。インディー結構強いな……見た目結構変なのに。


「モロコシ、火球!」


 ミリアちゃんもモロコシにチャームマタンゴへ攻撃させる。モロコシは尻尾が増えただけじゃなくて火属性の能力を得たようだね。なんかファンタジーのキツネって炎の攻撃をするイメージあるよね。


「シャァァァ!」


 チャームマタンゴを片付けると今度はポイズンスネークが天井から奇襲をかける。その牙は攻撃後のモロコシに向かっているが、その間にヌッとイースターが割り込んだ。


ガッ!


「シャァァァ!?」


 石の身体のイースターを噛み、ポイズンスネークは驚愕の声をあげる。そしてイースターが回転してポイズンスネークを地面に振り落とす。


「キュ!」


「シャッ!?」


 地面に落ちたポイズンスネークはキャロットの強烈な後ろ蹴りを食らって吹き飛んでいく。メリッて音がしてたね。リアルだと陥没してそ。


(安定してるね……バランスもいいし)


 強いていうなら回復役と支援役かな。そこが補填されたらよりバランスが良くなるね。今そこはライムがカバーしてるけど。


(今後2人が一緒に組むかは知らないけど、回復役はミリアちゃんかな……)


 チェリーは多分、デバフ系のパートナーを増やすだろうし。次は水晶の髑髏が欲しいな……って言ってたから。ちなみにイースターとキャロットは既に進化済み。

 イースターは防御に秀でたヘビィアーティファクト。キャロットは物理戦闘に秀でたバトルラビットに進化している。


(なんだろう……この短期間で2体も進化してるとか、スライムの戦闘力の低さを思い知らされるね)


 そんなことを思いつつ、チェリーたちの戦闘を見学。ダメージの回復をライムに任せ、ちょいちょい素材採取をしながら進んでいき、ボス部屋へと辿り着いた。

 今はボス戦前の準備中……私はあんまりこういうことしないんだよね。とりあえず入ってから考えるタイプ。


(ここに着くまで危ない状況無し。それは喜ばしいことだけど……)


「ビリ……」


「メラ……」


「ノロォ?」


 私は暴れ疲れてヘニャヘニャになっているレモンとアセロラを見る。薄くなってて黒スラに不思議そうに突かれてる。黒スラは特に暴れたりしなかった……てかこの子の場合、呪いの欠片を見ると勝手に食べちゃうこと以外は問題起こしてないんだよね。


(黒スラ……呪いの欠片の実験でできた失敗作の処理で活躍しそう。仲間になってくれればだけど)


 懐かれてはいるんだろうけど……野生のモンスターを仲間にするの、私が初だろうから情報無いんだよね。


(私も称号で可能になってるからね……しかもごく稀にだし)


 まぁ、今考えることではないか。と、チェリーたちの準備が終わったようで、扉を開けて中に入っていった。扉が閉まる前に私も入る。


「シャァァァ!!」


 ボス部屋にいたのは10mはありそうな大きなヘビ。確かあれは……ヘビィスネークだったかな?動きは鈍いけど防御力が高い面倒なモンスターって聞く。薬の素材にはならないから興味無かったんだよね。


「シャァァァ!!」


 とぐろを巻いているヘビィスネークは、尻尾を持ち上げ大きく横に薙ぎ払った。速くはないけれど重い風切り音が鳴り、威力の高さを表していた。


「イースター。お願いね〜」


 イースターがフワッと移動し薙ぎ払いを身体でブロックした。ドガ!という音がし、ヘビィスネークの尻尾は止まる。そしてヘビィスネークの動きが止まったところに風の刃と火球が襲う。


「シャァァァ!」


 身体に切り傷と焦げを作ったヘビィスネークが怒りの鳴き声を放つ。そして尻尾を振り上げ叩きつけようとした瞬間。


「キュ!」


「シャァァァ!?」


 ヘビィスネークの身体を駆け上がったキャロットが、ヘビィスネークの目へ蹴りを叩き込む。大きく怯んだヘビィスネークは誰も居ないところに尻尾を叩きつけた。


「あれはダメージとかよりも、シンプルに嫌だね」


 威力が足りてなくて潰れてはいないようだったけど……目を蹴られるとか絶対痛いし不快。てか指示無しでキャロットが目を狙ったってことは……ミリアちゃん、普段から目を狙わせてるね。怖。


「シャァァァ!!」


 目を攻撃されたヘビィスネークは憎悪の目でキャロットを見ると丸呑みにしようとする。キャロットはちょこまかと動いて回避し、ヘビィスネークのヘイトを稼いでいく。


「物理アタッカーだけじゃなくて回避タンクとしての役割もあるんだね」


 他人の戦闘、見てるだけでも色々学べて面白いね。その後もチェリーたちはヘビィスネークへと攻撃をしていく……しかし。


「こいつ硬過ぎ〜。もうインディーのMP無いんだけど〜?」


「全然倒れる気配がありませんね。どうしましょう……」


 ヘビィスネークはチェリーたちと相性が悪かった。チェリーたちの火力だとヘビィスネークの防御力を破り、HPを削り切れない……これ多分、私が居るからだなぁ。


(ここのボスはパーティー全体の強さを参照して選出される……そういう話があったけど正しそうだね)


 チェリーたちはもう戦えない……よーし、じゃあ私の出番だね。


「チェリー、ミリアちゃん。あとは任せて……レモン、アセロラ。やっていいよ」


「ビリリリリリ!!」


「メラララララ!!」


「ノロォ!?」


 私の許可が出てヘニャっていたレモンとアセロラが闘志を放って復活した。黒スラが驚いてビクッ!と驚く。


「シャァァァ!!」


 ヘビィスネークは参戦してきたレモンとアセロラを威嚇する。しかしそんな威嚇は2体に届かない……戦える喜びに震えてるからね。


「ビリリ!」


「メララ!」


 レモンとアセロラは跳ねてヘビィスネークへ向かっていく。ヘビィスネークは近づかせないように尻尾を振るが、イースターが割り込んで止めた。チェリー、ありがとう。


「ビリリリ!!」


「メラララ!!」


 ヘビィスネークに放電タックルと炎上タックルが叩き込まれる。我慢させていたからか過剰な威力の攻撃がヘビィスネークを襲う。


「シャ、シャァァァ……」


 全身が真っ黒に焦げたヘビィスネークはズズンと音を立てて倒れ伏す。よし、倒せたね。


「お疲れ様。良い勝負だったよ」


「倒すの速くな〜い?一瞬で黒焦げだったんだけど〜」


「やっぱりココロさん凄い……」


 戦闘が終わり私たちはハイタッチした。その後、もうちょっと3人で楽しみかったから、追加で2回周回して拠点へ帰った。

 帰った私に聖水作成のデスマーチが待っていたが……これは時間をちゃんと管理してなかった私のせい。浄水は用意していたから霊結晶を砕いて調合し、明日の決戦への備えは完了した。


「明日が正念場……頑張ろう」


 とりあえずデスマーチで疲れた私はスチンベッドで泥のように眠った。





 そしてイベント最終日を迎えた。



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― 新着の感想 ―
>インディー、その見た目で風属性なのか。 風属性なのについては既に48(42)話で >チェリーによるとミステリーアーティファクトは遠距離攻撃に秀でたアーティファクト系統で、インディーは風属性を得意とし…
[気になる点] 黒スラはイベント終了後に持ち帰る感じ? [一言] スチンベッドで泥のように眠った。
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