第37話
アイテムの持ち込みですが
装備は枠に入ってないです
感想で指摘されたので一応書いておきます
装備を含めるとゴブリンオンリーの人がヤバいので
(まぁ、予備の武器は枠取るんだけども……)
「久しぶりに生えてる薬草見たなぁ……おっ、毒消し草もある」
話し合いからしばらくして。私は森の中でブチブチと採取をしていた。新緑の森レベルの素材しか今のところ無いんだけどね。
「ココロさん。この草は素材ですか?」
「んー……それはただの雑草だね。足元に生えてるのは麻痺消し草で素材だよ」
「わっ、ありがとうございます」
私は1人で採取していない。さっきの子──ミリアちゃんとペアを組んでる。
私の班は採取班で、始めたての第2陣や生産職が多い。役割は探索班が拠点にできそうな場所を探している間に素材を集めること。ついでに第2陣の子の指導だね。第1陣と第2陣でペアになって戦闘や採取を教えている。
「ギュイイイイ!」
「おっ、ホーンラビット。食料になるね」
砂浜とは違い、この森にはモンスターが出現する。強さとしては新緑の森のモンスターぐらい。採取班の中で1つルールが決められていて、モンスターは極力第2陣に譲る。危なくなったら助太刀に入るってね。
「ミリアちゃん。行けそう?」
「大丈夫です!行くよモロコシ!」
「コーン!」
ミリアちゃんのパートナーはミニフォックスっていうキツネのモンスター。名前は……鳴き声がコーンだから、コーン=とうもろこしってことかな?独特なネーミングセンスだね。
「ギュィィィ!」
「コーン!」
ホーンラビットとモロコシの戦いは言っちゃあれだけど地味。体当たりと噛みつきの応酬だからね。ただスライムよりは戦いらしい戦いができてるね。
(やっぱ、初期のスライムって弱いんだね……レモンの時は苦労した)
私がアースワームとの戦いを思い出していると、モロコシがホーンラビットを倒した。それなりに被弾受けてるね……
「ライム。治療お願い」
「メキュ!」
ライムはモロコシの治療を始める。初心者には回復薬の出費は地味に痛いだろうし、サービスサービス。
「ありがとうございます。ココロさんのパートナー……なんでも出来るんですね。さっきもカラスのモンスターを焼いてましたし」
「スライムの特性だからね……食べ物で進化先決められるから調整は楽だよ。進化させるのが大変だけど」
正直、確実にこういう能力が欲しいって時じゃなければパートナーにしないほうが良い。真面目に苦労するから。
「ポッポー。ポッポー」
「おっ、デルタさんのパートナーだ」
デルタさんが3羽も仲間にしていたハトのモンスター。種族名はストレージ・ピジョンだったかな?異空間にアイテムを入れて運搬できる便利な子らしい。
「ポッポー」
「ここに停まっていいよ」
腕を差し出すとストレージ・ピジョンが止まり、ストレージ・ピジョンの前に黒い渦ができた。そこからメモが出てきたので受け取った。
「ありがとうね」
「ポッポー」
お礼を言うとストレージ・ピジョンは飛び立っていった。見送りつつ私はメモに目を通した。ふむふむ……
「ココロさん。向こうで何かあったんですか?」
「えっとね。拠点になりそうな場所……というか拠点を作るべき場所が見つかったって。丁寧に座標まで書いてくれてる」
「作るべき場所ですか?」
「コーン?」
小首を傾げるミリアちゃんとモロコシを横目に、私はマップを開いて座標を打ち込んだ。普段使わないけれど、マップには座標を打ち込むことでマークを付ける機能がある。この未探索だらけで空白だらけのマップに赤い点が出現した。とりあえず採取しながらここを目指そう。
「ミリアちゃん。移動するよ」
「はい!」
私はマップを確認しつつマークの位置を目指した。その途中でこのイベントの限定らしき素材が見つかった。割と厄介な素材を。
「何これ?見た目からして毒キノコなんだけど……」
私が見つけたのは紫に赤の斑点模様のキノコ。見るからに危ないって感じがする……
「わぁ、凄く美味しそうなキノコですね」
「えっ?」
私がキノコに顰めっ面していると、ミリアちゃんが横から覗き込んできてそんなことを言った。美味しそう……?この見るからに危険物が?
「ねぇ、ミリアちゃん。これどんな風に見えてる?」
「えっ?普通にシイタケみたいな見た目ですけど……」
成程。分かった……このキノコは罠だ。多分、調薬の知識が無いプレイヤーには美味しそうに見えるっていう。
(なんて悪辣な。これを考えた人は悦楽の沼地を考えた人だろうね……)
私は心の中で舌打ちをした。そしてミリアちゃんにこのキノコのことを説明する。ミリアちゃんは「ヒェ!?」と悲鳴をあげた。モロコシも「コン!?」と鳴いた。
「多分、これと同じようなものが他にもあると思う。食べられそうなものがあっても1回私に見せるようにね」
「はい。食中毒は勘弁です……」
なんか食中毒にトラウマでもあるのか、ミリアちゃんは青い顔をしながら頷いた。その後、マークのところに着くまでにドクロの模様が入ったリンゴ。洗剤のような薄水色のラズベリーがあった。
ラズベリーに関しては毒か分からなかったけど……ミリアちゃんには真っ赤で美味しそうなラズベリーに見えていたらしいから、ほぼ毒だろうね。
「てか、ちゃんと食べられるやつもあるから本当に性格が悪い」
「私には全部同じに見えますね……ココロさんが居なかったら食べちゃってたかもしれません」
私たちは運営の悪意にドン引きしながらも、無事に目的地に辿り着いた。目的地は森にぽっかりとできた空き地。何やら建物の残骸が残っていて、その修復を始めているようだった。
「あぁ、ココロさんにミリアさん。到着したんですね」
私たちが拠点候補地を観察していると、中央で指示を出していたデルタさんが話しかけてきた。頭には白いフクロウが居た……凄いモフンって感じで居るね。
「この子は気にしないでください……お仕事頼んだらいつもこうなので。そちらは何か収穫はありましたか?」
「薬草などの素材がいくらか……あとはこの悪意の塊ですね」
私は毒キノコを見せる。デルタさんは苦い顔をした。
「ココロさんにもそれがちゃんと毒物に見えるようですね。どうやらそれは植物への知識が無いと普通のものに見えるようで……あれ見てください」
「あれ?」
私はデルタさんが指差した方を見る。そこには地面に寝て苦しんでいるプレイヤーとパートナーたちが居た。あれってもしかして……
「ご想像の通り。毒の木の実や果物を食べてしまった人たちです……普通の毒と違って効果は弱いんですが、その分効果が長くて」
長くジワジワと削るタイプか。シンプルに面倒なタイプだ……
「毒消しは無いんですか?」
「あるにはありますが量が少ないです。第2陣の方は始めたてなので毒消しを用意していない人が多く、第1陣の方は中級の毒消しでこの程度の毒に使うほどじゃないという」
ふむふむ、要するに数が足りてない+弱い毒に使いにくい毒消ししかないということか。確かに中級の毒消しは猛毒に使いたいしね。今後どんなモンスターが出てくるか分からないし。なら私の出番だね。
「分かりました。じゃあ集めた素材で毒消し作りますね。あと回復薬も」
「ありがとうございます。ではあそこのスペースを使ってください。ミリアさんは……どうしますか?」
「私は……探索しに行きたいです。モロコシを鍛えたいですし。ココロさんに素材のことを教えてもらったので、ココロさんが薬を作っている間に採取して手助けしたいです」
ミリアちゃん。なんて良い子なんだ……この子には後で全力を注いだ薬をタダであげよう。
「分かりました。では丁度探索に出る班があるのでそちらに合流してください。こちら話をつけておきます」
「分かりました。ココロさん、また後で!」
「頑張ってね」
私はミリアちゃんを見送る。そして私は指示されたスペースで薬を作っていった。
そして私が聖水を作ったプレイヤーってことがあっさりバレたのだった。丸薬って要因もあったけれど……1番は品質だった。自覚は無かったけど、私の薬ってほぼトップレベルだったみたい。
「うーん、どうしよう?予想外のところでバレたぞ?」
そんでもってフラグ回収早過ぎる。こーれ、私のせいで拠点内でトラブル起きそう。
「とりあえずデルタさんに相談するか」
 




