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【書籍化】スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第1章 ゲームスタートと第1回公式イベント編
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第28話



 鳥たちを倒し、砂嵐をやり過ごし、落石に怯えながら進むこと2時間弱。鬱陶しいスカイファルコンや砂嵐、いつ落ちてくるか分からない落石のせいで割と疲れてきた。

 ライムたちもあんまり動き回れないから、若干ストレスが溜まってきてる……レモンやアセロラはスカイファルコンを思いっきりボコボコにしてる。


(まぁ、スカイファルコンの頻度も下がってきたけどね)


 下ってきたらスカイファルコンが襲ってきにくくなった。バトルチキンは相変わらずだけど……スカイファルコンは標高が高いところがメインの狩り場なのかもね。


「ま、新しいモンスターが出てきたけどね」


「クェェェ!」


 私は遠くからこっちに向かってくる土埃を見る。その土埃を起こしているのはダチョウのモンスター……マウンテンランナー。荒れた山道を猛スピードで走ることができ、遠くからでもプレイヤーを感知し斜面を平気で駆け上がってくる。


(強さ自体はそんなでもないんだけど……あいつの走りで落石が起きるんだよね)


 暴走族みたいな走りのせいでね。上からあいつが来る時、本当に肝が冷える。ちなみに対処の仕方は……


「スチン。プルーン」


「ドロォ……」


「ヒヤァ」


 私が声をかけるとスチンが地面へ水を撒き、プルーンが凍結液を散布した。乾いた地面が凍りついた。これで良し。


「クェェェ……クェ?」


 マウンテンランナーは地面の様子など気にせず走ってきて、凍った地面を踏んだ。マウンテンランナーはツルッと滑り……斜面を転がり落ちていった。


「クェェェ!?」


 マウンテンランナーはゴロゴロと転がって消えていった……おっ、素材手に入ったね。不味い肉とゴワゴワの羽毛が。


「スカイファルコンの素材よりも使えない素材……下には下が居るもんだよね」


 肉は人が食べると硬くて筋張っているから不味いだけで、モンスターからしたら美味しいのかもしれないけど。羽毛は知らん。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


「ん?なんか上から悲鳴が……わっ、岩が落ちてきてる」


 悲鳴に斜面の上を見てみるとそこそこの大きさの岩が転がってきていた。岩より上の斜面にはマウンテンランナーが走った後の土埃が残留している……マジであの暴走鳥余計なことを。


「皆、こっちに移動!」


 私は岩が来ない方へ急いで避難した。避難した私たちの前を岩が転がっていき、そのまま下へと向かっていった。


ゴロゴロゴロ……


「セーフ」


 あの大きさの落石は初めてだったね。山道の下に行けば行くほど落石のリスク高まる……本当にこの山道を考えた人は良い性格してるよ。


「クェェェ!」


「ちっ、また来た……スチン、プルーン。またお願い」


 遠くから向かってくるクソ鳥の鳴き声にイラッとし、さっきと同じように対処してもらった。クソ鳥はゴロゴロと転がり落ちてゴ……素材に変化した。


『個体名:アセロラのlvが一定値に達しました。進化が可能となりました』


「あっ、今のでlvが20になったのか。腐ってもこの山道のモンスターってところか……」 


 こう、戦闘っぽくない経験値で進化って変な感じがする。さーて、進化先はどんなかな?一応、進化中に砂嵐来た時に備えて物陰で確認する。マウンテンランナーにも見つかり難くなるだろうしね。


ーーーーーー

進化先

▶︎ハイファイア・スライム

より強力な発火能力を得たスライム

生成する粘液はより長く燃え消されにくい

また粘り気が強くなったことで、相手に付着させ長く燃やす

粘り気を減らし、炎を放射することもある

ーーーーーー


 なんか遠距離攻撃覚えてる。火炎放射って範囲は兎も角、距離は短いイメージあるし……あと世紀末。


(嬉々としてモンスターを燃やさないと嬉しいなぁ……)


 確認終わったから進化させる。見た目の変化としては赤い身体にほんのりとオレンジ色が混ざった感じになった。ステータスの方は……


▽▽▽▽▽▽

アセロラlv1/40

種族:ハイファイア・スライム(第2進化)

HP:70/70

MP:90/90

スキル

《悪食》《打撃耐性・Ⅱ》《炎無効》

《発火・Ⅲ》

身体の表面に粘度の高い油に近い粘膜を纏い、自在に発火させ炎上させる

MPを消費して粘液を生成できる

《火炎放射・Ⅰ》

粘度の低い粘液を溜め、前方に噴き燃やす

溜めるほど範囲が広がり距離が伸びる

《炎上強化》

燃やしたもの、相手へ与えるダメージを10%上昇

消火されにくくなる

△△△△△△


 順当に強化された感じだね。なんか発火の説明文がかなり変わってる……サイレントでアプデでも入った?


「クェェェ!」


「と、見つかったか……でも丁度良いや。アセロラ、あれ燃やして」


「メララ!」


 私はドドドド!と走ってくるマウンテンランナーの処理をアセロラに頼んだ。アセロラはピョンっと前に出ると身体を少し膨らませた。しばらく溜めるような間を作ってから身体を発火させると……マウンテンランナーに向けて炎を吐き出した。炎は5m程の扇状に広がり、マウンテンランナーを包み込む。


「クェェェ!?」


 全身をこんがり燃やされたマウンテンランナーは悲鳴をあげた。バタバタと火を消そうとしているが、進化したアセロラの粘液は簡単に消えることはなく。マウンテンランナーは黒焦げになって消えた。


「うーん、エグい」


 思ったより強力だったんだけど……Ⅰだからそんなに強くないと思ってた。進化によって強化された粘液のおかげかな?


「もしくは溜めた時間も関係してるのかな?」


 試しに溜めずに《火炎放射》を使ってもらった。結果としてボッ!というコンロのような音と共に、小さい炎が出た。あー、これ溜めないと威力が低いやつだ。


「溜める隙があるなら火炎放射で、隙が無いならいつもの炎上タックル……そういう使い分けで良さそうだね」


 てか火炎放射は範囲が広すぎて味方ごと燃やしかねないし、森みたいな燃えるものが多い場所だと火事が発生するかもしれない。


「強いけど使い方には注意だね……スチンの水で消火し切れるか分からないし」


「ドロォ……」


 炎が消えにくくなったことが裏目になりかねない。火炎放射の扱い方には気をつけつつ攻略を再開した。


「メララララ!」


「進化してテンションが燃え上がってる……物理的にも燃え上がってるけど」


「ヒヤァ……」


 プルーンがテンションの高さにウンザリしてる。あのテンションで来られるのを考えたら仕方ないか……


(時間で落ち着いてくれればいいけど……ちゃんと気にかけとこ)


 それが私の仕事だからね。



 アセロラが進化してからいくらか経過した。道中は進化してテンションが上がりまくったアセロラが、出てくるモンスターを燃やしてばっかだったので割愛。ある程度自由に暴れさせたら落ち着いてくれたから一安心。まぁ、プルーンがキレて凍結液をかけたけど。


(火属性は氷に対して強いから凍ったりはしなかったけどね)


 そんなこんなで私たちは乾風の山道を進んで行き、遂に1番下まで辿り着いた。


「岩が沢山転がってるね……これ全部落石か」


 今までの積み重ね……よく見ると骨らしきものも見える。深く考えないようにしよう。


「というか、本当に骨が多いね」


 人間というよりはモンスターの骨があちこちに散らばってる。まるで何かの食事場……もしくは巣って感じ。先に進んでみると骨の量は段々増えていき、遂には一面骨だらけの鳥の巣のような場所に出た。これはあれだね……


「ボロロロロロ!!」


「やっぱり主だよね」


 空から不思議な鳴き声を奏でながら現れたのは横が5mはありそうなハゲワシのモンスター。全身に骨を纏っていて、白い鎧を着ているかのよう。


「ボーンアーマー・バルチャー。スワンプ・メガロドンを除けば初めての『・』入りモンスターだね」


 名前に含まれる『・』は強さの証のようなもの。油断していたら痛い目を見るだろうね。こいつに関しては資料でも名前以外の情報は載ってなかったし……資料室の資料だと主の情報は詳しいことは知ることができないみたい。


「ボロロロロロ!」


 ボーンアーマー・バルチャーは鳴き声をあげると、一度高く舞い上がりこっちに向かってダイブしてきた。速さはそこまでではないけれど、身体が大きいからまともに食らえば危ない。


「一先ず、各々攻撃を回避しつつ、自分の仕事を行うように。何かあったら指示は出す」


 私は指示を出しながら攻撃の軌道から外れた。ライムたちも無事に回避し、攻撃を外したボーンアーマー・バルチャーは地面に降りた。ちゃんと攻撃後に隙があるみたいだね。


「ビリリ!」


「メララ!」


 地面に降りたボーンアーマー・バルチャーにレモンとアセロラが攻撃を加える。それぞれがほぼ最大威力の攻撃……流石にボスとはいえかなり効いてるはず。


「ボロロロロロロ!」


「あれ、なんか全然効いてなくない?」


 ボーンアーマー・バルチャーは攻撃の影響が無いように鳴き声をあげ、再び飛行し始めた。第2進化の攻撃を受けてほぼ無傷……流石におかしいと思って観察してみると、さっきレモンとアセロラが攻撃した部位の骨の鎧が消失していた。


「骨の鎧がある部位は、一度だけその部位への攻撃のダメージを減らす感じか……あの様子だと攻撃による状態異常も無効化かな?」


 つまりは骨の鎧を剥がし、鎧の無くなった部分を攻撃すれば良い。ただ、こういうのって剥がし過ぎるとそれはそれで良く無い気がする。

 鎧を着込んだキャラが鎧を脱ぎ捨てた途端に強くなるのは、ゲームのお約束的なものだって渚が言ってたし。


「レモン、アセロラ。相手が隙を晒したら骨の鎧を攻撃で削って。ある程度削れたら合図するから、合図の後は鎧を削った部分に攻撃。ライムはいつも通りで、スチンとプルーンは凍結で動きを鈍くして」


 何をすればいいか分かれば、後はそれを達成できるように作戦を立てて指示をする。ライムたちは私の指示を聞き、テキパキと動き始めた。


「ボロロロロロロ!」


 ボーンアーマー・バルチャーの攻撃は初撃のダイブ攻撃の他は、勢いよく地面に降り立ち地面の骨を巻き上げてばら撒く攻撃。転がっている岩を持ち上げて落とす攻撃など多彩。しかしどれも攻撃後の隙が大きく、予備動作も大きいから一度見れば対処は簡単だった。

 むしろ飛び立つ前に出る蹴りなどの小技は予備動作が小さく、そっちの方が危険だったね。向こうからしたら邪魔だから蹴ってるだけなんだろうけど、スライムにそれは割と痛手。


「ビリリ!」


「メララ!」


 骨の鎧は既に4割ほど削り、現在は本体へ攻撃を入れている。プルーンの凍結も骨の鎧がある部分は効きが悪いけれど、スチンの放水でゴリ押しして動きを鈍らせていった。ライムはレモンとアセロラの治療で頑張っている……私は指示出し兼スチンの移動役だね。割と攻撃食らわないかヒヤヒヤしてる。


「ボロロロロロ……」


 ダメージが嵩み、ボーンアーマー・バルチャーも元気が無くなってきている。そろそろ倒せるかな……そう思った時。突如ボーンアーマー・バルチャーの様子がおかしくなった。


「ボロロロロロロ!」


 ボーンアーマー・バルチャーが翼を大きく広げて身体を震わせると、纏っていた骨の鎧を全て地面へ落とし、真っ黒な身体だけとなった。


「ボロロロロロロ!」


「瀕死になったから本気を出してきた感じかな……」


 バトルチキンみたいな感じ。私がそう思っているとボーンアーマー・バルチャーは骨だらけの地面に右足を突き刺した。そして右足を引き抜くと、右足の先には骨が集まった塊のようなものがついていた。


「ボロロロロロロ!」


 ボーンアーマー・バルチャーはその塊を付けたまま飛び立つ。そして高く舞い上がると、骨の塊を放り投げ自ら破壊した。バラバラになった骨が辺りに落ちてくる……先が尖っていたり、当たったらただでは済まない大きさの骨が。


「骨の雨。皆、当たらないように気をつけて」


 私は骨の雨を避けながらライムたちに声をかける。骨の雨は30秒程続いたが、誰も怪我することなく凌ぐことができた。


「ボロロロロロ……」


 骨の雨が止むと力を使い果たしたのかボーンアーマー・バルチャーが落ちてきた。ズン!と地面に墜落したが、HPが残っているのか消えていってはいない。


「アセロラ。トドメ刺していいよ」


「メララララ!」


 前回の主ではあまり活躍できていなかったから、トドメはアセロラに刺させた。ボーンアーマー・バルチャーはアセロラの火炎放射に包み込まれ、光へと変わっていった。


ガラ、ガラガラガラ!


 ボーンアーマー・バルチャーが消えると、巣の奥の骨の山が崩れて道ができていた。あの先が王都か……いよいよだね。


「国の首都。一体どんな町なんだろうね」


 私はライムたちの状態をチェックした後、王都への道へと進んでいった。



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