第22話
『個体名:プルーンのlvが一定値に達しました。進化が可能となりました』
初めての胞子の山林攻略を切り上げようとした頃。プルーンのlvが10へと達した。イベントの感覚が若干残ってて遅く感じたね……このペースが普通なんだけど。
「てか、レモンの時と比べたら凄い早いしね。数日かけてたから……」
「ビリ?」
レモンが呼ばれたと勘違いして近づいてきたから撫でとく。電気を溜めてるからかパチパチする……凄い弱いから炭酸温泉みたいな感触。
(さーて、プルーンの進化先は……フロストスライムだね)
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フロストスライム
冷却能力を持つスライム
水に反応して凍結する液体を放って攻撃し
身体の表面を凍らせることで簡易的な鎧を作る
触り過ぎに注意
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思ったより器用だね。デバフ要員だけじゃなく、サブタンクや不意打ち要員にもなれそう。というわけで早速進化。
「ヒヤァ」
進化したプルーンは淡い水色に変化した。触ってみるとヒンヤリ……長く触ってると保冷剤を直接持ってる感じになってくるね。次はステータス。
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プルーンlv1/20
種族:フロストスライム(第1進化)
HP:30/30
MP:40/40
スキル
《悪食》《打撃耐性・Ⅰ》
《凍結液作成・Ⅰ》
水分に反応して凍る凍結液を作り出す
凍結液を身体の表面に発生させ鎧を作り出せる
《氷無効》
氷属性によるダメージ、影響を無効にする
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ステータスはアセロラの氷版って感じ。攻撃手段が近距離か遠距離かって感じ。
「それじゃあ実戦行ってみようか」
「ヒヤァ」
スライムのままだと危険過ぎて戦闘に参加させられてなかったけど、進化すればレモンたちのカバーがあればなんとかなるはず。
「ギュイイイ!」
「モスリザード……寄生はされてないね」
寄生されてるのは初戦の相手には難易度が高過ぎる。あいつ攻撃力とか強化されていて、凍結でも止められるか分からない。
「ヒヤァ」
「ギュイ!?」
モスリザードがノシノシと近づいてきたところに、プルーンがビュッ!と勢いよく凍結液を吐いた。スライムが生成する液体にしては粘度が低く、中々の勢いでモスリザードに吹きかかる。
パキ……ピキパキ!
モスリザードに吹きかけられた凍結液が音を立てながら凍り、モスリザードの動きを鈍らせていく。なんか凍る速度が思っていたより早い……
(この環境……空気中の水分が多いから凍結液の効果が高くなってるのかな?)
これは嬉しい誤算だね。変温動物なトカゲだから冷えるのは苦手だろうし……プルーンは相性が良い。
「ギュィィィ……」
身体の表面が凍りつき動きが鈍くなってもジリジリと向かってくる。プルーンはそこにまた凍結液を吹きかける。よ、容赦無い……
「レモン。トドメ刺してあげて」
「ビリ」
これ以上はモスリザードを甚振るだけ、必要以上に苦しめないためにレモンにトドメを刺させた。プルーンは特に気にしては無さそう……
(倒すためなら徹底的に叩きのめす……冷静というか冷酷って感じる人も居そうだね)
あんまり情の無い子にはなって欲しくないんだけどね……冷酷なのも個性ではあるけども。身内にも冷たいのはね。
「メラ!メララ!」
「ヒヤァ……」
…………アセロラに任せようかな。あの子、根気強くプルーンと接しようとしてるし。アセロラの熱意がプルーンの氷を溶かしてくれることを祈っていよう。勿論、こちらからもサポートはしっかりとする。
「ライムたちもそれとなく見守ってて」
「メキュ」
「ビリ」
「ドロォ……」
私たちはピョンピョン跳ね回るアセロラと、それを面倒そうに対応しているプルーンを温かい目で見守った。
◇
胞子の山林2日目。今日は昨日と違う方向に進んでみることにした。今回進んでいるところは小川多めで、水の流れる音が心地いい……足元が昨日よりも滑りやすいけど。
「ヒヤァ……」
「プルーンが通ってるところ、薄ら凍ってる……あそこは踏まないようにしよう」
凍結液が身体の表面に滲んでるんだろうね。薄い氷だからすぐに溶けるだろうけど……戦闘時に使う凍結液だとガチガチに凍るだろうから、踏んでスリップしないように気をつけよう。
「ギチチチ!」
「おっ、こいつ初めて見る……カニ?」
小川沿いに進んでいるとサバッ!と川から苔が付いたカニがハサミを鳴らして威嚇してきた。名前は……モスクラブとか?
「ギチチチ!」
「プルーン。凍らせちゃって」
「ヒヤァ」
威嚇してくるカニにプルーンが凍結液を吹きかけた。カニの甲殻が凍っていくけれど、硬い殻に包まれているからか効果が薄い。
(いや関節部分の動きが悪くなってる……)
どんなに防御力が高くても何処かに隙はある……鎧とかだって関節部分は薄いしね。
「ビリリ!」
「メララ!」
カニの動きが鈍くなれば、あとは攻撃役の仕事。レモンとアセロラの攻撃で削り、氷が薄くなればプルーンに追加してもらう……デバフ要員がいると戦闘が楽。
「ブクブクブク……」
レモンとアセロラにボコボコにされたカニは泡を吐きながら倒れた。素材を確認してみるとロッククラブって名前だった……苔要素無いやんけ。
(苔が多いところに生息しているから付着した……そういう感じか)
素材に関しては甲殻とカニ肉。甲殻は砕いて粉にすれば防御力上昇薬の素材に使えそう……肉は売ろう。割と良い値段で売れるでしょ……だってカニだよ?
「この甲殻、軽さの割に硬いから期待値上がるね……あともう1種類くらい別の素材欲しいかな?」
これだけだと効果が高くならなさそう……もう1体硬そうなモンスター居ないかな?
「ゴガァァァ!!」
「居たわ。寧ろ向こうから出てきたよ」
川の上流から濁ったような鳴き声で現れたのは軽自動車サイズのカメ。甲羅は黒く苔が付着していて、形状としてはミシシッピアカミミガメだね……
(こいつの甲羅が手に入れば薬の開発に目処が立ちそう……だけど凄いタフだろうな)
カメって寿命長いし。確かゾウガメって200年も生きるんじゃなかったかな?普通のカメも20年は生きるって聞いたことある。
「ゴガァァァ!!」
私が無駄なカメの知識を思い出していると、カメがこっちへズシズシと向かってきた。プルーンは早速凍結液をカメへかけていく。カメの身体の表面が凍りついていくが、身体が大きいせいか効きが悪い。しかも身体から何かを分泌してるのか、凍りつくのが遅い気がする。
「ゴガァァ!」
カメは口を大きく開けるとゴポゴポとうがいをするような音が聞こえてきた。うがい音は大きくなっていき……
ドパン!
口から水の砲弾が放たれた。狙いは……プルーン。私はプルーンを抱え、地面を転がって回避した。砲弾はプルーンが居たところを大きく抉っている。
「危な……速度が遅くて助かった」
プルーンを地面に下ろし、着弾地点を見て苦笑いを浮かべる。流れ弾で死なないように気をつけよう……スチンすら突破されそうな威力してたからね。
「ゴガァァァァ!」
カメは再び口を開けてゴポゴポと発射準備をする。止めようとレモンとアセロラが攻撃するが、カメは気にせずに溜めていき再び発射した。今回もプルーンを狙っていたけど、何が来るか分かっていたから無事に回避できた。
(プルーンに対するヘイトが高いね……)
攻撃しているレモンとアセロラを無視してる訳じゃない。踏みつけようと足を動かしているから……攻撃されるより凍らされる方が嫌みたい。
「ゴガァァァ!」
「また発射しようとしてる……そろそろあれどうにかしたい」
そういえば、口の中に溜めてるのって水だよね?なら口の中に凍結液を入れれば……
「プルーン。あいつの口の中に凍結液」
「ヒヤァ」
私の指示を聞き、プルーンが口の中へ凍結液を入れた。ゴポゴポという音が次第に変な音へ変わっていき……
「ゴ、ゴガァ……!?」
口の中の水が氷塊になり、カメは苦しそうな鳴き声を出していた。噛み砕くことも吐き出すこともできないようで、凄い戸惑っている様子が伺えた。
「上手くいくんだ……なんか対策されているもんだと思ってた」
途中で吐かれると思ったしね。もしかして1回溜め始めるとキャンセルできないのかな?まぁ、これで危険な遠距離攻撃は封じた……あとは倒すだけ。私たちはまともに動けないカメをタコ殴りにし、倒して素材を手に入れた。
「キャノンタートルの甲羅片。年代を重ねるごとに硬くなる甲羅の欠片か……これは良い素材だね!」
ロッククラブとキャノンタートル……この2つで実験していこう。そのためにはある程度素材を集めておかないと……
(両方とも小川周辺に生息している感じだし……この辺で採取しつつ倒していこう)
私は素材が充分な量が貯まるまで、カニ狩りとカメ狩りを行うことにした。




