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【書籍化】スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第1章 ゲームスタートと第1回公式イベント編
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第21話




 胞子の山林。キノコや苔、シダなど胞子を放つ植物が多数生えたフィールド。あちこちに湧き水の池や小川があり湿気が高く、水を扱うモンスターが多く生息している。


「ジメジメしてるなぁ……空気が重い」


 湿気過多。しかも濡れた苔が地面に生えてるせいで滑りやすい……環境的には沼地よりも最悪。ライムたちも時々ツルっと滑って転がっていってる。喜んでいるのは……


「ドロォォ……」


 モシャモシャと土を食べてるスチンぐらい。珍しいよね……普段は動かず寝てるのに、今は服の間から触手を伸ばして食事してる。食べてるものの癖が強いけど。


「苔じゃなくて、その下の土だけを食べるっていうね……」


 保水性が高いのか水をたっぷり含んでいるのに、不思議とベチャベチャしてない土をね。これも新しい進化先に影響するのかな?とりあえず変なもの食べてるわけじゃないから止める気は無い。他のプレイヤーに見られたら私から触手がニョロニョロしてるように見えるんだろうけど……


「あれ?それ下手したらモンスターって思われるんじゃ……」


 できるだけ他のプレイヤーとの接触は避けよう。私は人目を気にしつつ、慎重に進んでいった。


(ここ足場が悪いからマイナスの印象持つけど、木と同じ大きさのキノコとかはファンタジーらしくて好きだね。採取できないのが残念)


 表面を削ってみたけどアイテムにならなかった。まぁ、巨大キノコの側には素材になるキノコ……ヤクゼンタケやファイヤマッシュルームが生えていた。ヤクゼンタケは使い道が多いから集めておきたい。


「ギュイイイ!」


 私がキノコ採取に勤しんでいると苔のような緑のトカゲ……モスリザードが茂みを踏み潰して向かってきた。大きさが5mを超えていて中々大きい。


「ビリリ!」


「メララ!」


「ギュイイ!?」


 モスリザードに向けて、うちの攻撃役2体が突撃していく。放電と炎を喰らいモスリザードは悲鳴をあげる。


(やっぱりレモンの攻撃の方が効きが良い……逆にアセロラは効きが悪いね)


 湿気が多い……つまりは水気が多いということ。雷は威力が上がって、炎は威力が下がる……となると。


「進化すればプルーンは有利になれるかもね」


「ピュキ」


 プルーンは氷雪砂利を食べながら返事を返した。プルーンは氷が好きだからなのか冷静なタイプ。先輩風吹かしたいアセロラがプルーンにモーションかけてるけど、大体無視されてる。


「メララ」


「ピュキ」


 今もモスリザードを仕留めて戻ってきたアセロラが「どうだった?どうだった?」と言うようにぴょんぴょん周りを跳ねてるけれど、プルーンの反応は薄い……仲が悪いわけでは無いのが救いだね。


(どっちの根気が折れるか……そんな感じだね)


 どちらにしろパートナー間の関係が拗れないように気をつけよう。


「ギチギチ!キシャァァァ!!」


 採取を終え、移動を再開すると次は胴体が苔に覆われたクモ。モススパイダーがのそりと地面から起き上がって襲ってきた。モススパイダーは糸の巣を作って獲物を待つタイプじゃなく、地面に潜り苔に紛れて不意打ちしてくるタイプ。見た目もタランチュラに似てる。


「キシャァァァ!!」


 モススパイダーは前足を高々と掲げ突撃してくる。口から生えた牙からはポタポタと毒液らしき液体が垂れている。ガブっていかれたら毒を流し込まれるんだろうね……だけど。


「スライムたちを噛むには大き過ぎる……」


「ビリリ!」


「メララ!」


 私はスイスイっと攻撃を躱し、隙だらけの胴体に攻撃するレモンたちを見る。モススパイダーは、中型のモンスターを相手取るなら強い。だけどスライムのような小型のモンスターは苦手なようだね。


「キシャァァァ……」


 モススパイダーは一度も攻撃を当てられず、ズシャっと地面へ崩れ倒れた。うん、ちょっと同情する……


「普通なら進化する度に大きくなるから、あいつに苦戦するんだろうなぁ……スライムは進化しても大きさ変わらないから」


 強い生き物や天敵が少ない生き物は身体が大きくなりやすい。この世界だと魔法とかスライムのような特殊な生物がいて、その概念に当て嵌まらない方が多い気がするけどね。


「っと、こいつの毒は睡眠毒なんだ……これ普通の毒と混ぜたら一度に複数の状態異常を発生させる毒が作れる?」


 毒、麻痺、睡眠……この3種を組み合わせた毒とか凄い強そう。これを餌にスライムを進化させたらポイズンスライムの特殊進化になるのかな?


「拠点を構えたら是非試してみよう。ポイズン系統は欲しい」


 毒っていうのは薬の材料になる。毒草で有名なトリカブトやベラドンナ……これらも薬として使われることもある。少量なら毒も薬に、多量なら薬も毒だから。


「おっ、また巨大キノコだ。採取♪採取♪」


 私は戦闘をレモンたちに任せつつ、ひたすら採取に勤しんだ。



 胞子の森には大まかに2種類のモンスターが存在する。1つはモスリザードなどの普通のモンスター。そしてもう1つは……キノコに寄生された悲しきモンスター。


「ギュイイイ!!」


 目の前にいるのは身体のあちこちから白いキノコを生やし混濁した目のモスリザード……口からはダラダラと液体が垂れており、理性を欠片ほども感じられなかった。


「ギュイイイ!!」


「ビリリ!」


「メララ!」


 キノコに操られたモスリザード……寄生モスリザードはレモンたちの攻撃を受けても怯むことなく、私目掛けて突撃してくる。


(プレイヤーに一直線……厄介だね)


 大体のモンスターはパートナーの方を優先して襲ってくるけど、こいつは私しか狙ってこない……プレイヤーが死んだら終わりだから、狙われるのは嫌だね。


(スチンを狙ってるっていう希望的観測もあったけど……擬態状態のスチンを看破したとは思えない)


 ビシビシと私に殺意が向けられてる。こんなに殺意を向けられたのは初めてだよ……とにかく攻撃を食らわないように立ち回ろう。


「ギュイイイ!!」


 私は噛みつきや尻尾の薙ぎ払いを回避しつつ、レモンたちが倒してくれるのを待った。スチンに頼んで泥弾当てたりしたけど……顔に当てても怯まないのは流石に苦笑いを浮かべざるを得なかった。


(キノコに操られてるんだろうけど……これモスリザードは完全に傀儡だね)


 死んでるのと変わりない。あの背中のキノコ……ちょっと怖いね。


「ビリリ!」


「ギュイイィィィ……」


 私が憐れみながら回避に徹しているとレモンの放電タックルを受け、寄生モスリザードは動きを止めた。そして光へと変わっていった。


「うわ……あのキノコが素材として手に入ってる。しかもかなりヤバいこと書いてる」


ーーーーーー

パラサイトマッシュルーム

モンスターに寄生し、その身体を操るキノコ

味は旨く、高級キノコと引けを取らない

麻薬に近い依存成分を持っており、食べ過ぎると体内で菌糸を増殖させ根のように張る

そして菌糸が脳を支配することで新たな傀儡となる……

しっかり加熱することで寄生されなくなり、依存性も無くなる

ーーーーーー


 生で食べなきゃ危険性は無い。だけども火の入りが悪いと……豚肉や鶏肉みたいな感じだね。


「火が入ってても、あのモスリザードを見ちゃうと食べる気失せるよね……」


 売るのも憚られるし……これはストレージに死蔵しよう。最悪アセロラに頼んで全部燃やして灰にしてしまおう。


「みんなも変なキノコは食べないよう……って、そういえばスライムは《悪食》があるから寄生されないか」


 あれ飲食による悪影響は全部無効化されるからね……そう思うと《悪食》便利だね。私も欲しくなってきた。


(変な食べ物を食べれば称号で手に入るかな……それやると人としての尊厳が地に落ちそう)


 私は《悪食》のために尊厳を捨てるか捨てないか……割と真剣に考えつつ山を進んでいった。







 結果として称号が確実に取れるか分からないから尊厳は捨てないことにした。


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― 新着の感想 ―
[一言] >私は《悪食》のために尊厳を捨てるか捨てないか… 捨てるべきですね! そんなに個人情報あちらこちらにみられるわけありませんし、自身の身を守るのに必須な能力ではないですか〜。 自分が作り上げ…
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