第2話
テイマーギルド。テイマーのための組合で仕事の斡旋、アイテムの販売、モンスターの情報収集とその発布を行っている。
ギルドに所属するとギルドカードを渡されどんなモンスターを倒したか、どれだけクエストを達成したかが記録される。その記録を元にランクが上がっていく。
ランクは下からF、E、D、C、B、A、Sと上がりより良い報酬の仕事を受けたり、良いアイテムを買えたりする。入りたての私はFだね。
「仕事も戦闘系以外は安いものしか無いね……仕方ないけども」
「ピュキ?」
私が受けた仕事は薬草採取。町の南にある森で薬草を集めるだけの仕事……受けた理由は非戦闘系で1番報酬が良くて、森なら餌になるものとかありそうだったから。
(強いていうならモンスターに襲われると死ぬってことだけど……デスペナ軽いし死んでもなんとかなるか)
死んだら死んだで無問題。そんな精神で私は町の外へ出て森へと入っていった。薬草の見た目は青い花の生えた草……それを探して根っこごと採取する簡単な仕事。
「早速発見」
私は見つけた薬草をそっと地面から抜き、アイテムを入れておくストレージに入れた。依頼の最低数は10本だからこの調子で探していこう。10本からは5本ずつで追加報酬が貰えるからできるだけ採取しないと。
「ライムも探すの手伝ってくれる?」
「ピュキ!」
私はライムの手も借りて薬草を探していった。流石に採取はできないからライムが見つけたものを私がせっせと引っこ抜いていった。
「この紫の植物……素材みたいだから引っこ抜いていこ。こっちの黄色の植物も」
薬草以外の植物も採取しておいた。薬草以外は情報が無いから名前と効果が分からない。薬草は説明を受けたから分かるけど、他のやつは後で資料室で調べておかないと。
「紫の草は毒っぽいしね……」
食べさせるものの厳選は気をつけたい。私がそう思いながらスッ……とライムの方を見ると、ライムは薬草を身体に取り込んで溶かし食べていた。ちょっ!?いつの間に!!?
「ピュキ?」
「はぁ……まぁ、いいや。ライムは薬草とか薬の材料になるものを重点的にあげることにしよ」
回復役になれるかな?だとすると攻撃役が居ないから相変わらず危険……ライムの次のパートナーは攻撃役になるようにしよ。私がそう思っていた時だった。
「グルルル……」
獣の唸り声のようなものが聞こえてきた。戦ったりしたら確実に死ぬから、私はライムを抱えて木の影に隠れる。しばらくすると黒灰色のオオカミの姿が見えた。
「(ライム。静かに)」
「(ピュキ)」
オオカミは私とライムが居たところを嗅ぎ回っている。マズい……臭いを辿られたらバレる。私が動いて逃げるか考え始めた時。
ドォン!バキバキ……
戦闘音のようなものが遠くから聞こえてきた。他のプレイヤーのものかな?だとしたらパートナーが大きいモンスターだね。スタートしたばかりでここまで大きな音が鳴るってなると……
「グル!」
オオカミも戦闘音が聞こえたようで耳を立てると音の方へ走っていった。ふぅ……助かった。誰だか分からないけどサンキュー。
「さて、それじゃあ採取の続きしよ」
「ピュキ!」
その後も私はモンスターをなんとかやり過ごしながら採取を続けていった。そして1時間くらいのところで仕事分を確保しつつ、ライムの餌分も良い感じに溜まったから1回帰ることにした。もう敵のいる森に留まってるの辛い……安全な町でライムをプニプニしていたい。
(思ったより精神削られる……出てくるやつ怖いんだよ)
オオカミとかガチの獣って感じで、襲われてたらメンタルブレイクしてたかも。私は帰り道に襲われないよう少しビクビクしながら町に帰った。若干、方向音痴気味だから帰るのに苦労した……
「最初からちゃんと地図見ておけば良かった……」
◇
「さてお金は稼げた。けど少ないなぁ……」
町に無事に帰った私はテイマーギルドで薬草を渡して報酬の800Gを得ていた。基本報酬500Gで追加50G×6。40本売ってこれか……
(多分、戦闘系の仕事のついでで稼ぐ目的の仕事なんだろうなぁ……メインの稼ぎにするにはキツイ)
だけど戦闘で稼ぐなんてもっとキツイ。死にまくって逆に損するのが目に見えてるしね……
「そうなると生産が1番稼げるかな……」
このゲームにも生産要素はある。モンスターの武器を作ったり薬を作ったりね。今回の薬草も薬に加工すれば、ただ納品するよりは稼げるはず。問題は初期費用がかかること、そしてやることによってはモンスターの力が必要になるっていうこと。鍛治とかは火を使うモンスターや力のあるモンスターが居ないとキツいって下調べの時に見た。
「スライムの力を借りられそうなのは……薬の生産かな?」
これなら力も必要無いし、素材も薬草があれば良い。場所もギルドの多目的室を借りればなんとかなる……それにライムの餌も薬草そのままよりは加工したものの方が良い気がする。
「うん、この路線で進めて行こう。まずはいくらで生産アイテムが買えるか確認してこよ」
私はライムを抱えながら道具屋へと向かった。売っているか不安だったけれど道具屋には薬を作る調合キットが置かれていた。金額は……1500G。
「買えない……また薬草のクエスト受けてこようかな?」
他の素材は調べてないから価値が分からないんだよね。調べてから行動するべきだったかな。そもそも薬の作り方も知らないし。
「はぁ……」
「ん?嬢ちゃんどうしたんだい?溜め息なんかついて」
私が自分の行動の甘さに溜め息を吐いていると店主の人が話しかけてきた。変に思われたかな?
「いえ、お金が無くて調合キットが買えないなぁ……って。あと薬の作り方もよく知らないという」
「あー、異邦人らしい悩みだね。ついさっきも鍛治士になりたい子が同じように項垂れてたよ」
「そうなんですか……」
お仲間が居たんだね……仲間が居るってなるとちょっと恥ずかしさが軽減されるね。ありがとう顔も知らないプレイヤー。
「正直素人がここのキットを買ってもちゃんとしたの作るの難しいと思うよ。テイマーギルドで先生になってくれる人を紹介してくれるから先にそっちに行くといいよ」
「成程……分かりました」
先生……つまりは師匠になってくれる人が居るのね。最初にそういう説明無かったなぁ……
(異邦人は全員戦闘好きとでも思われてたのかな?それか生産したい人はこの店に来るだろうからこっちでフラグが立つのか)
買える場合は作る技術が足りないから習いに行けって感じになると予想。とりあえずお店の人の言う通りテイマーギルドで紹介して貰おう。私はお礼を言ってテイマーギルドまで戻り生産の先生について聞いてみた。幸い受付は空いてた。
「薬の先生ですね。空いてる人を紹介できますが……あっ」
「どうしました?」
「いえ、その……1人空いてるんですけど、その人が結構癖のある人でして」
なんでも腕は1番いいけど色々と面倒な人らしい。教わりに行った人が1日も経たずに逃げ出す程なんだとか……癖が強いでそうなる?
「でもその人以外は空いてないんですよね?多少の癖は許容するのでその人を紹介してください」
「分かりました……責任は持てませんよ?」
テイマーギルドの職員は渋い顔をしつつも紹介状を用意してくれた。私はそれを持って教えてくれる人のところへと向かった。