第17話
「えっ?私に指名依頼ですか?」
イベント開始3日目。私がテイマーギルドに薬の納品しに行っていると、買取担当の職員から私に指名で依頼が来ていることを知らされた。
ちなみにプレイヤーマーケットで商売できるのにわざわざテイマーギルドに売ってる理由は、単純に貢献度稼ぎでテイマーギルドのランク上げるため。私は討伐依頼とかしないからこういうのでチマチマ上げなきゃいけない……この方法凄い時間かかるからEで止まってんだけども……
「はい。衛兵隊の方からまとまった数の薬を納品して欲しいという依頼が……報酬としてはこちらになりますね」
「中級回復薬に毒消し、麻痺消し、下級魔力薬ですか」
数はそれぞれ100本ずつ。報酬は結構美味しい8万ゴールド……普通に同じ量を売るよりも稼げる。
「期限は5日後までになります。異邦人の方が今お忙しいことはこちらも承知しているので、ココロ様が受けないことも可能ですが如何いたしましょう?」
「大丈夫です。これくらいの量ならそこまで大変じゃないので受けます。(ライムの治療液を試したかったし)」
あと衛兵隊っていう大きい組織との繋がりが得られるのは大きい。この世界の衛兵隊って国単位で管理されてるから、他の町の衛兵隊とも少なからず関係が築ける。このチャンスを逃す手は無いね。
ちなみに薬は液体でも丸薬でもどっちでも良い。なら丸薬にしようかな……液体は輸送時のリスクが高いし。ちなみに瓶はテイマーギルド側が用意してくれてたので買いに行かなくてラッキーだった……最近道具屋の瓶買い過ぎてて若干行きにくくなってきてんだよね。一度に100個以上は買ってるから。
(イベントの攻略も少し飽きてきてたからね……偶には息抜きも大事)
そういうわけで私はテイマーギルドで部屋を借りて調薬作業に取り組んだ。まずは中級回復薬から始めよう……素材は地道に集めてたから充分ある。沼地の素材は霊結晶を取りに行くがてらに採取してたからね。
「治療液の見た目は薬液の時と変化無し……」
加熱時に固まるのはどのスライムでも発揮される特徴だから丸薬にはできるね……とりあえずいつもと同じ手順で作っていった。
(むっ、なんか沸騰するのが薬液の頃よりも早い気がする……)
薬液の時の感覚のままだと失敗しそう。失敗したら素材の無駄になるから気をつけないと……慣れるまでは並行作業は止めておこ。
「問題無く完成。性能の変化を見るのに進化前のやつと比較してみようか」
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中級回復丸薬(5個入り)
1粒でHPを20回復する
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中級回復丸薬(5個入り)
1粒でHPを30回復する
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上が進化前の薬液。下が進化後の治療液で作ったもの。しっかり性能が上がってるね……1.5倍は予想外。
(治療液……思ったより万能な素材だね)
効果が広くなったから上昇値が低いと思ってたけど、これは良い意味で予想を裏切られたね。これは調薬の幅が広がる……
「次は毒消しを作るか……これも少し改良しようかな」
ポイント交換にあったヤクゼンタケってキノコ。多分山にある素材で私は持ってないんだけど……ポイント交換で手に入るから問題無い。
(装備に使いたかったけど、交換できれば良い程度だったから別に問題無いんだよね……)
よくよく思ったら私たち、戦闘をガッツリやらない。それなのに装備更新するのはポイントが勿体無い気がする。王都に行けば交換できる装備よりも良い装備見つかりそうだし。
「ヤクゼンタケは細く刻んで擦り潰し……毒消しと混ぜる」
ここに治療液を加えいつもの工程を行う……そして完成。
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中級毒消し丸薬(5個入り)
1粒で毒を治し、猛毒の効果を3分軽減
5粒で猛毒を治し、15分間毒にならなくなる
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効果盛り盛りになったね。猛毒は沼地のモンスターたちも使わないから暫くは毒への耐性を得るのが目的になりそう。麻痺消し丸薬も同じようにヤクゼンタケを使って作ってみる。
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中級麻痺消し丸薬(5個入り)
1粒で麻痺を治し、硬直の効果を3分軽減
5粒で硬直を治し、15分間麻痺にならなくなる
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硬直は麻痺の上位にあたる状態異常。このゲームの麻痺は完全に動けなくなるんじゃなくて、感覚が鈍くなり力が入れにくくなる感じ。硬直になると痺れを通り越して動かなくなる、ただ全身が動かなくなるんじゃなくて一部が動かなくなる感じ。クイラさんのところで教わった情報にあった。
(全身動かなくなるのは硬直を治さず、上乗せされて重症化しないと起きないらしいからね)
まぁ、硬直もわりとキツい状態異常だけど。真に恐ろしいのはこれ感電とセットなことが多いらしいんだよね。麻痺自体もレモンの放電タックルで発生させられるし。レモンも進化したら麻痺から硬直に変わるんだろうなぁ……
ちなみに感電に関しては水に濡れているとダメージが増えて周囲に拡散するというもの。状態異常というよりは特殊ダメージ的な感じ?他にも炎上とか裂傷とかある。炎上は昨日マッチョゾンビを燃やしたことを思い出す。
「油もちゃんと燃やす用の用意した方がいいのかな?」
専用の物の方が効果高そうなのはゲームあるある。ただ燃やす用の油の作り方ってどうすれば?燃えるための油とか灯油やガソリンのイメージしかない……ガソリンは火をつけたら爆発しそう。
「あとで何か使えそうな素材があるか探してみよ。今は依頼の品を作ってしまおう」
次は魔力薬……もとい魔力丸薬。これは今までライムの薬液を使えるか分からず液体のままだった。だけど進化して変化した治療液なら上手くいくはず……とりあえず回復薬と作り方は同じだから早速やってみる。
「魔力草は上薬草より火が入りやすいのか……少し加熱を抑え気味にしよ」
この加熱板もそろそろ新しくしようかな……細かい火加減の調整がしにくくて。あと小さいから大量生産用に大きめの鍋を買っても均一な加熱ができない。
「そろそろ加熱板は買い替えても良いか……」
買うとしたら火加減の調整がしやすく、大きい鍋を置けるやつ。そんなことを考えながら沸騰前まで来たので加熱を止める。あとはいつもの通りに粗熱が取れてから丸薬に……さてさて効果の方はどんなもんかな?
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魔力丸薬(5個入り)
1粒でMPを20回復する
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うーん、私たちMPを回復することないからこれが良いのかどうかさっぱり分からない。ただこれ以上の向上は時間かかるし、一先ずこれで作っていこう。
「あとはそれぞれを指定数作っていくだけ……ライムたち手伝って」
「メキュ」
「ビリリ」
「ドロォ……」
「メララ」
私はライムたちに粗熱が取れた薬を丸くしてもらい、その間にガンガン調薬していった。そして午前中に規定数の薬を作り終えた。
それを納品するとギルドランクがDにアップ。更には称号の駆け出し調薬士が熟練調薬士に変化した。
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熟練調薬士
▷効果
調薬で失敗率が20%減少
調薬設備のある建物を借りやすくなり
家賃の値段が安くなる
▷取得条件
自作した薬の売上が合計10万Gを超える
調薬依頼で合計5万G以上の報酬を得る
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売上はプレイヤーマーケットも含むし、テイマーギルドにも売っていたからクリア済み。依頼の報酬をクリアしたからランクアップした感じか。
(そういえば最近自分のステータス見てなかった……久しぶりに確認しよ)
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ココロlv23
▷テイマーギルドランク:D
▷称号
・熟練調薬士
・狂科学者
・スライムテイマー
▷パートナー:4/4
ライム:ピュリファイ・スライムlv6
レモン:エレキスライムlv16
スチン:ハードマッドスライムlv10
アセロラ:ファイアスライムlv3
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あっ、テイマーギルドのランクが表示されるようになってる。アップデートで追加されたのか……全く知らなかった。
「さーて、リアルでお昼食べたら午後はイベントやろ」
私は1回ログアウトした。そしてお昼を食べてからログインした際、納品した薬の質が良すぎて追加報酬2万Gを渡されたのはちょっとした笑い話……




