第161話
「ギャァァァス!」
変貌したヘルゲート・ガーディアンは耳を劈くような咆哮をあげる。み、耳が……しかもこの咆哮、ただの咆哮では無い様子。
「か、身体が……動かない……」
「衰弱に恐怖……呪い付きの咆哮かよ」
「あ、あぁぁぁぁ!!?」
咆哮を受けたプレイヤーとパートナーたちが地面から起き上がれない。酷い人だと発狂も併発してる……あれは恐怖の重症化か。
ただ、この咆哮は一定lv以下のプレイヤーとパートナーにしか効いてない様子。私のような第1陣や第2陣の何人かは咆哮を受けても動けている。
「皆、動けない人たちを下げるよ」
「メキュ!」
私は動けないプレイヤーとパートナーたちを後ろへ移動させた。ゴーレムとかはゴメン……流石に無理。あと発狂してる人暴れないでほしい。これ殴って気絶させた方が早いかな?非力な私じゃ殴っても気絶してくれなさそうだしやめとこ。
私が救助活動をしている間に動ける戦闘班がヘルゲート・ガーディアンへ攻撃を始めた。ヘルゲート・ガーディアンは回避も防御もせず、向かってくる攻撃をその身に受けた。
「ギャァァァス!!」
「攻撃は通ってる……いや、結構入ってるぞ!」
「防御力が落ちてる……だけど油断はするな。気を引き締めていけ!」
変貌の際に鎧が大きく剥げた影響か、防御力はかなり下がっている様子。しかしただ弱体化するなんてことはなく……その牙がいま発揮されようとしていた。
「ギャァァァス!!」
攻撃を受けたヘルゲート・ガーディアンは両腕の融合した槍に赤黒いオーラを纏わせ突撃、まるでやり返すかのようにパートナーたちへ攻撃を振るっていった。
攻撃は最初の熟練の達人のような技では無く、ただひたすらに暴れる本能剥き出しの攻撃……腕を突き出せば放射状にオーラの槍が5本放たれ、振り回せば斬撃波のようにオーラが飛ぶ。更に竜のようになった下半身は馬の時に比べると軽快には動けないが、その歩み自体が武器であり小型のパートナが突撃に巻き込れ踏み潰されていく。
「ギャァァァス!!」
「な、ブレス!?まず……!」
「アチ!?アチ!?」
更には解放された口から紫色の炎が放たれる。その炎は地面を覆い巻き込まれていなかったプレイヤーとパートナーを焼く。炎に包まれたプレイヤーとパートナーたちに他のプレイヤーたちが水をかけて消火しようとするけれど……特殊な炎なのか火が弱まる気配が無い。この感じだと呪いが含まれてそう。試しに聖水をかけてみたら炎の勢いは弱まったけど……効き目が薄い。
「ライム!《慈悲の祝福》!」
「メキュ!」
ライムの《慈悲の祝福》をかけると炎はたちまち消えていった。やっぱり呪いにはこれだね。火が消えたとはいえかなり重い火傷が全身に残ってる。これ薬何本分?
(さっきの咆哮でサポート班の殆どが動けなくなったの辛……)
サポート班は第3陣の子たちが多かった。さっきの咆哮の効果はまだ継続中……衰弱は兎も角、恐怖は進行は防げるけど薬で治せない。発狂までいってると手遅れだね。
「ギャァァァス!」
「というか……あれ暴走してるよね?」
今も攻撃を振るい続けるヘルゲート・ガーディアン。しかしその動きは知性の欠片もない。ただ目につく相手を攻撃しているだけ、攻撃されたから攻撃し返す……そんな感じ。
(なんだろう……ちょっかい出されたからやり返してる子どもみたい)
ちょっかいもやり返しも過度だけどさ……こっちどんどん戦力減ってるし。余波がヤバすぎる。何、攻撃にオーラの追撃付けてるのさ。近接型の子たちが近づくことすらできてない。
何か作戦を変えなきゃいけない気がするけど、咆哮による多数の戦闘不能。ただひたすら暴れるヘルゲート・ガーディアン……司令塔もパンクしててダメだこりゃ。
「なら、私は私で動きますかね」
私のやること。それは可愛い後輩たちが巻き込まれないようにすること。うちは弱小だからね……さっきの咆哮で私以外倒れちゃってるからね。誰も発狂してないのは感心感心……まぁ、うちの神殿心臓に悪いことちょいちょいあるから鍛えられるか。
「レモン、アセロラ。もう我慢はやめていいよ……今までの鬱憤、あの暴れ騎士にぶつけてきな」
「ビリリリリリ!」
「メラララララ!」
戦闘解禁。うちの戦闘狂にとっては神様の言葉よりも嬉しい言葉。凄いウキウキしながらヘルゲート・ガーディアンへと向かっていく。ちょ、思ってたよりも行き過ぎ。
「プルーン……悪いけどあの子たち頼むね」
「ヒヤァ……ヒヤァ」
私のお願いを聞いてプルーンは小さく溜め息を吐きながらレモンたちの後を追っていった。プルーンが居れば早々死にはしないでしょ。
「これで前線は大丈夫……でもこれじゃ勝ちは狙えない」
あの子たちを送ったのは前線が崩壊しないようにする時間稼ぎ。全ての種族の中で戦闘能力の低さで1、2位を争えるスライムじゃどう足掻いてもね……だからここは最強に頼ろうと思う。
「この薬……メリットだけを見ればこの戦局を変えるには充分」
私はドラゴンの神殿から回収した竜種強化薬を手に取った。絶大な力を得る代わりに理性を狂わせる薬……いや、薬とすら呼びたくないもの。このままでは到底使えない……だからこれを今から使えるようにする。
(薬の改変。まさかこんな場面でやることになるなんてね……)
薬の改変。それは調薬士が目指す到達の1つであり……忌避される禁忌でもある。私はそれを今この状況で行おうとしていた。
もうちょい長く書きたかったけど
中途半端になるんで分割します
本当に申し訳ない




