第153話
「ここかな?……凄い白い建物だね」
「メキュ」
お茶会当日。私は招待状に書かれていた座標にライムと来ると真っ白な建物があった。洋風なお屋敷なんだけど……白過ぎて反射が眩しい。と、とりあえずチャイム押そう。ちょっと待っているとガチャっとドアが開いてマシロさんが出てきた。
「あ、ココロさん。お待ちしてました。今日は来てくださってありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ招待してくださってありがとうございます。あ、これつまらない物ですけど良かったらどうぞ」
私はマシロさんに手土産の香水を手渡した。匂いはバニラみたいな甘い匂いがする花を使ってる……マシロさんのイメージ的に強い匂いは合わなそうだったからね。
「香水ですか?ありがとうございます。大事に使わせていただきますね」
私はマシロさんに案内されて中に入った。交流会は広い応接室でやるみたいで、すでに色んなシスター服の人が居た……あっ。
「キラリさん。お久しぶりです」
「あ、ココロちゃん。久しぶりだねー」
精霊の神殿所属のキラリさん。前回イベントのボス戦以来だね。傍らにはあの時に居た火属性の精霊が……ちょっと前より人に近くなってる?
「キラリさんも招待されてたんですね」
「まぁねー。マシロちゃんの辻ヒールにはお世話になってるしね。火山とかちょいちょい焼けてダメージ受けちゃうから」
キラリさんは火山探索してるのかぁ……あそこ薬の素材になるもの少なそうだから行ったこと無いんだよね。あと暑そうだし。
「あれ?キラリ、誰と話してるの?」
「私たちも混ぜろ」
私がキラリさんと話していると、背中に小さな鳥の羽のような装飾が付いたシスター服を着た人と私と同じくらいの露出度(こっちはどちらかと言うと水着っぽい)を着た人が近づいてきた。キラリさんの知り合い?
「ココロちゃん紹介するね。羽が付いてるのがヒヨリで、露出魔がシズク……私のアイドル仲間だよ」
「どうもヒヨリです。鳥系の神殿所属のシスターやってまーす。ダンスが得意だよ」
「シズク。水生系の神殿所属。得意なのは……ファンサ?あとキラリ、露出魔って紹介は酷くない?」
確かに酷い。そして私にも刺さってる……あっちは理由がある露出だろうけど、こっちは意味が分からない露出だからね。
「アイドル仲間っていうことは……リアルの方の?」
「そうだね。私たち3人のユニットだから」
「センターのキラリ。私とシズクは2番手3番手って感じ」
「センターは注目されるからキラリがやってくれて楽」
その後、私はキラリさんたちと攻略の話だったりをした。その中でキラリさんたちとフレンド登録し薬の取引もすることになった。やったねライム、大口の顧客が増えたよ。
「それにしても……色んな服装の人が居ますね」
「種族ごとに変わるからねー……その中でもココロちゃんとシズクのところが1番ヤバいと思うけど」
「「それは確かに」」
「あ、本人たちが認めちゃうだね」
キラリさんの言葉に私とシズクさんは深く頷く。だってね……この露出度だからね。
「あと個性的なやつだと……鬼系は和服っぽいし。死霊系は喪服っぽいからね」
「物質系とか鎧着込んでるし……正直シスターって感じが無いのもいる」
ちなみにマシロさんのような中央神殿の属性神官は普通。属性毎に色が違うくらいで、シンプルなシスター服。普通が良いよね……マシロさんとか真っ白なシスター服が光属性って感じで似合ってるし。
その後、キラリさんたちは他の人たちと交流してくるってことで一旦別れた。私も交流を広げよ……新しい販路を開拓しなくては。
(あと神殿関係の繋がりは全然無いからね……)
攻略組は百鬼夜行やナギと繋がりがあるんだけども……神殿の方は全然交流無かったからね。スライムの神殿とか最近になって神官増えたし。
「他の所……獣系は神官多そうだよね」
確か獣系オンリーのクランもあるくらいだしね……ちなみに獣系の神殿のシスター服はケモ耳とケモ尻尾が付いてる。色々形があるから選択式なのかな?
「それにしても……人の輪に入るのキツ」
交流会だから当たり前なんだけど……人同士が話してるところに入るの苦手なんだよね。私、グイグイ行けるタイプじゃないし。特にコミュニケーション関係は。
(こういうのはチェリーが得意なんだよなぁ……)
ナギに関しては言わなくても分かるよね?あっちは自分で1人になってる節があるけど……
「頑張って交流するしかないか……ん?」
飲み物片手に歩き回っていた私がふと視線を横にズラすと壁際にポツンと佇んでいる人が居た。ギザギザの模様の入ったシスター服に、大きなフードの付いたパーカーを着た私より年下そうな女の子。紫の髪で儚そうな感じの子なんだけど……
ガブガブ……
なんか頭を小さい黒いドラゴンに齧られてる。ヨダレで髪が……そして齧られてるのに無反応過ぎない?
「あの、大丈夫ですか?」
「あぁ……いつものことですので……お構いなく……」
「ガゥ!」
心配になって話しかけたら儚い感じで返事が返ってきた。齧ってるドラゴンは元気一杯に返事を返してきたけどね。それでもすぐに女の子の頭を齧り始めた。
その後、女の子と少しずつ話をしていった……反応薄いから嫌なのかと思ったけど、嫌がったり迷惑な感じの反応をされなかったから単に反応が薄いだけみたい。
女の子の名前はリュカちゃんといって、所属はドラゴンの神殿。頭を齧ってるのはパートナーのクロン。頭を齧ってるのは仲間しにした時からの癖らしい……齧り癖?
「ずっと齧られてるんで……慣れました……ベタベタしますけど……」
「ガゥ」
ちなみに他にもう2匹パートナーが居るらしいけど……その子たちも一癖二癖あるんだとか。た、大変だね。
(いや、うちも似たようなもんか……)
ルベリーとかメロンとか割と癖ある方だし。てかドラゴン系ってやっぱり育成大変なのかな?パートナー3匹だけってね。
「そういえばドラゴンの神殿って何処にあるの?私のスライムの神殿は王都の外れにあるけど」
「ドラゴンの神殿はお城の近くですね……1番上の人が元王族の人なんで……」
「ブッ……!?ゴホゴホ!!」
私は思わず飲み物を吹き出しかけた。元王族……宗教に王族が関わって大丈夫なのか?
(てか待って……そういえばドラゴンの神殿って第3回公式イベントの時にクイラさんに喧嘩売ったところの1つじゃなかった?)
確か精霊、ゴブリン(鬼)、ドラゴンだったはず……元王族でドラゴンの使い手とかめちゃくちゃイキリそう(偏見)。出てた人、服装的に神殿未所属でナギにやられてたけど。
(これ、下手すると向こうの地雷になってそうだから……言わないでおこう)
変なことで宗教戦争になったらめんど……大変だからね。変にクティアさん好戦的なところあるから……本当に起こりかねない。
PKできないけど……今は闘技場があるせいでプレイヤーと戦えちゃうからね。絶対、私の知らないところで試合が組まれる。そして逃げる選択肢が潰されてる。
(ドラゴンと戦いたくないなー……本当に)
そう思いながらも表には出さないようにリュカちゃんと交流。フレンド登録までは行けなかったけどある程度親しくはなれたかな?ってところでお別れした。
その後も何人かの神官プレイヤーと交流し、最後にマシロさんとフレンド登録をして交流会が終わった。
その夜、遂に公式第5回イベント。【The New Stage】が発表された。
神殿の内情会でした
次からはようやくイベントが動き出す……
なんか思ってたより遅くなっちゃった。何故?




