第146話
「「「キュリリリリ!」」」
木の上から大きなコノハムシ。エアライド・リーフバグたちが舞い落ちるように襲撃してくる。リーフバグたちは薄い身体で風に乗り、読み難い動きをしているが……
「メララララ!」
アセロラに纏めて焼き払われた。薄く軽い身体は炎の熱気で舞い上がりながら光へと変わっていった。
「アセロラが居て本当に良かった……ここ本当に敵が多過ぎる」
弱点をついていなきゃやってられない。こんなことを思っている間にもほら……
「キシャァァァ!」
今度は葉っぱをくっ付け合わせたような見た目のカマキリ、ジャングルキラー・マンティスが現れる。カマキリはアルーリング・マンティスのイメージがあってちょっと嫌い……
「こいつは状態異常無いけどね」
ジャングルキラー・マンティスは状態異常のような特殊能力は無い。その代わりに攻撃力と素早さが強化されていて単純に強い。火属性に致命的に弱いことを除けばね。
「まぁ、他の子たちでも倒せるけどさ」
「メタァ」
「スナァ……!」
ジャングルキラー・マンティスの猛攻をドランが受け、レンシアが地面の砂を操って多方面から攻撃を行う。
「キシャァァァ!」
「ノロォ!」
ジャングルキラー・マンティスは両腕の鎌で円を作るように砂を打ち払う。しかし生まれた隙にルベリーが呪いの鎖で拘束する。
「キシャァァァ!」
自分に巻きついた呪いの鎖を力任せに引き千切ろうとするジャングルキラー・マンティス。しかし動きを止めた時点でこちらの狙い通り。ドランが右手を筒状にして狙いを定める。
「メタァ」
ドランの右腕から砲撃が放たれる。砲撃は鎖を引き千切りかけていたジャングルキラー・マンティスの胸へ直撃、大きな穴を作った。
「キ、シャァァ……!」
胸に風穴開けられたジャングルキラー・マンティスは身体から力が抜けていく。しかし虫のしぶとさを活かしてこちらへ歩み寄ってくるが……周囲の地面から砂の棘が無数に飛び出してトドメを刺した。
ジャングルキラー・マンティスは一矢報いることもできずに光へと変わった。
「虫は死ににくいから本当に面倒……楽するなら焼き払うに限るんだけど」
だけどここ、戦闘経験を積ませるにはかなり良い場所なんだよね。戦闘経験が少ないレンシアとドランの動きがかなり良くなった。正直、他のパートナーたちも連れてきて経験を積ませたいくらい。メロン連れてきたら地獄になりそうだけど……虫系はかなり集まってくるし。
(時々、無意識に香りをばら撒くからな……あの子)
裏庭行くと甘ったるい匂いがすることあるからね。どうも寝てる時に花が勝手に咲くみたい……《暗黙華の香り》の花は平気なんだよね。あっちは無意識に放たれると大分マズい効果してるからね。防犯向きではあるんだけども。
「ギュロロロ!!」
「……少しは考え事させてくれる暇くれない?」
ちょっとムカ!ってきた。しかも来たのデッドスティング・ステゴだし……お前、亜竜の癖にそこそこの頻度で出てくるね?まだ1時間ぐらいしか経ってないのに5体目だよ?
「アセロラ。燃やして」
「メララララ!」
「ギュロロロ!?」
地味に強く対応するのも面倒。さっさと焼いて終わらせる。雑処理に文句があるなら先に逝ってる仲間に言って。
「まぁ、素材は良いんだよね……毒消しは効果を上げられそう」
亜竜はやっぱり素材は優秀……というか素材で思い出した。私、ここに来て採取してないな。採取する余裕が無いってのもあるけど。
(この戦闘頻度だとね……これは獣避けと虫除けを作ろうかな)
流石にこの戦闘頻度で採取は危険。採取するならモンスターが寄り難くしよう。最近は作る理由無かったから手を付けてなかったし……あれ臭いが結構キツイからさ。私は探索を一度切り上げ、拠点へ帰ることにした。
◇
「ライムの分体たちも残ってない……よし、やるか」
調薬室。留守の時ははライムの分体たちが働き、私が実験する時はライムとルベリーが居る部屋。そこに今私は1人で居る。鍵をかけた扉では中に入りたいルベリーが叩く音が聞こえてくる……あ、ライムかプルーンが来て連れて行ったのか音が聞こえなくなった。
(あの子のケアは後でやらなくちゃ……その余裕があればの話だけど)
今までに無いくらい覚悟が決まっている。何せこれからやるのは私ですら地獄を見る可能性がある実験だからね。
「まずは悪臭の実の内部の液体を採取」
この時点で設備使わないといけないんだよね……最近、埃被ってた設備だったんだけども。私も若干忘れかけてた。
そうしたらここに亜竜の血……ラプトル、プテラ、アンキロ、トリケラ、ステゴの血を全部入れる。今回作る薬は強いモンスターの素材を使うことで効果を発揮させるもの……某有名ゲームのゴー◯ドスプレー的な感じだね。
「だけど亜竜だけじゃ足りないね……」
トリケラを入れたから……他のボスたちの素材も使おうか。私はドラゴンの形をしていたコピーミミック・トレントの樹液。ロストルーイン・サンドビーストの砂。トライヘッド・レイクバイパーの毒液も加える。
混ぜ合わせた液体はドス黒く変色し、黒いモヤのようなものが発生し始めた。私は呪物でも作ってるのかな?
「そうだ、これも入れてみよう。必要無いなら抜けばいいし」
私が取り出したのは呪毒の液体。イベントの時に採取しておいたんだよね……これを少し加え、気をつけながら加熱していく。そうして香水の瓶に入れれば試作品第1号が完成した。
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悍ましき忌避剤
▷効果
1回の使用で30分間。自分のパートナーで1番lvが高いパートナーを参照し、それよりも弱いモンスターを近寄らせなくする
ただし効果が切れると逆に強いモンスターを引き寄せ、使用していると悪臭、呪毒の状態異常を受け続ける
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おっと、どうやら過剰に混ぜ過ぎたみたい。余計な効果が付いてるね……ここから調整していこう。とりあえず呪毒は1回抜こう……悪臭の実は香水の形にしたいから抜けないし。
(悪臭は血を入れ過ぎたことによる生臭さもあるだろうからね……)
私は悪臭に気をつけながらチマチマと調整をしていった。ここからが長いんだよね……今回の調薬は特に神経使うから休憩挟みながらやろう。
(呪毒を抜いたら忌避剤の効果が凄い弱くなった……これ抜くとダメなのか)
じゃあ今度は血の方を調整……こっちは一先ず量から弄ろう。気持ちトリケラ多めで調整したら大分良い感じになってきた。これボスだったトリケラだけで良いかも?
「それでもステゴは残しておこうかな……なんかステゴの血は悪臭の実と相性が良い気がする」
表記上は同じ説明なんだけど。元のモンスターの特性が反映されてるのかもね……隠し効果的なものなのかな?
私はその後も試行錯誤を続ける……そして3時間後、ようやく満足がいく物が完成した。
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強力忌避剤
▷効果
1回の使用で30分間。自分のパートナーで1番lvが高いパートナーを参照し、それよりも弱いモンスターを近寄らせなくする
lv差が大きい程効果を発揮するが、強い相手の場合は逆に引き寄せてしまう可能性がある
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強いモンスターを引き寄せる効果は消せなかった。これに関しては臭いによる忌避剤だから、強いモンスターには挑発として受け取られてしまうみたい……戦闘回数の減少ていう目的は達成できるし許容するしかないね。
「あとはこれを量産……だけどそれは明日にしよう」
神経使い過ぎて頭重い……今日は生産しない方が良いね。やらかす未来が見える。
「片付けて……応接室行ってルベリーの機嫌取りしよ」
私は設備の掃除をし、鍵を外してドアを開けた。ドアを開けた途端、待ち構えていたルベリーが飛び込んできて、頭が私の鳩尾に減り込んだ。せ、精神ダメージ蓄積でこれは……ちょっと無理。
「グフゥ……」
私は情けない声と共に体内の空気を吐いて倒れた。
ココロ「ねぇ?私になんか怨みでもあんの?ルベリー絡みのオチでいつも痛い思いしてるんだけど?」
作者「あるわけ無いでしょ。ただ単にルベリーの執着が強いだけだから……まぁ、最初はこんなにヤンデレ気質にするつもりは無かったんだよね」
ココロ「じゃあなんでこうなったのさ」
作者「そりゃ、ヤンデレとメンヘラが好きだからだけど?私の趣味」
ココロ「このヤロー!」
作者「ぎゃー!」