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【書籍化】スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第5章 第4回公式イベント 浮上都市編
160/173

第141話

本日、スライムマスターちゃんのVRMMO発売です!

興味のある方は是非買ってみてください




「ぎゃぁぁぁぁぁ!」


 クラゲ王の剣が振るわれるたびにプレイヤーとパートナーの悲鳴が聞こえてくる。一撃一撃が致命の一撃。こちらからのクラゲ王への攻撃は剣が打ち払ってしまい。こちらだけが命を削っている。

 一応、剣が離れてる時ならクラゲ王に攻撃できる……だけど黒いモヤのようなものが盾のように現れ威力を弱め有効打にならない。


(攻防……どちらも隙が無い)


 そして常に余裕を保っている。だってあのクラゲ王……立ち上がってから1歩も動いてない。慢心なんかじゃない……私たち如きに動く必要が無いって感じ。


「ラヴィア。スティグレ。やれ」


「「シャァァァ!」」


「ガシャド。サポートしてあげて」


「ガタガタ!」


 クラゲ王に向けて炎と雷が襲いかかり、カクリヨさんのガイコツが地面を引っぺ剥がした瓦礫を投げつける。

 それに対してクラゲ王はジッと攻撃を見定めゆっくりと腕を振る。他のプレイヤーを斬り刻んでいた剣がクラゲ王の元に移動し、風車のように回転し炎と雷を散らし瓦礫を真っ二つに切断……そして回転したままナギたちへと向かっていく。


「本気じゃないとはいえ……あんな簡単に対処されるとかムカつく」


「そんなこと言ってる場合じゃないわよ……さっさと逃げるわよ」


 ナギとカクリヨさんは左右に分かれるようにして回避しようとする。剣はそれに対して右側……ナギの方へと角度を変えて向かっていく。


「ちっ!こっちに来るか……今のうちにやれ!」


 回転する剣の刃を回避しながら、ナギは他のプレイヤーに向かって攻撃するように言ってきた。その声を聞きプレイヤーたちがクラゲ王へと攻撃を放つ。勿論私もレモンとアセロラに攻撃させた。


「ジュリリ……」


 流石のクラゲ王も同時攻撃を受けるのは痛手なのか剣を回転させたまま呼び戻し、飛んできていた攻撃を次々に打ち払わせた。それでも抜けた攻撃は黒いモヤが弱めてしまう。それでもダメージが入っているだけマシか。


「ジュリリ……ジュリ」


 クラゲ王は自分の頬にできた傷を指でなぞった。そしてパチン!と指を鳴らした。剣が光を纏うと3つに分裂した。分裂した分、サイズが小さくはなっているけれど……そんなことで脅威が下がったかなんてとんでもない。むしろ上がってる。


「ジュリリ」


 クラゲ王の腕の動きに合わせて3本の剣が縦横無尽に動き始めた。サイズが小さくなっても切れ味は変わらず……向かってくる剣に注意を向けていたら他の剣に串刺しにされる。飛ぶ斬撃も変わらずにあるため気を抜いたプレイヤーから死んでいった。


「危ない!」


「ひっ!?」


 私は近くに居たチェリーを引っ張ってしゃがませる。チェリーのアホ毛の先が飛んできた斬撃が掠めていった。危なかった……しゃがませてなかったら首が飛んでたね。


「あ、あわわ……い、生きてる〜……」


 間一髪で死から逃れたチェリーは腰が抜けてしまったよう……ここに居るといつまた巻き込まれるか分からないから端に引っ張っておこう。


「全く……私たちみたいな一般人には参戦は無理だね」


 動き速過ぎて追いつけない。下手に混ざろうとすれば巻き込まれて死ぬ……逸般人に任せよう。黒いモヤも攻撃を完全に防いでるわけじゃないからそのうち倒せるはず……気が遠くなる時間かかりそうだけど。


「こいつ弱点あるのか!?大体の属性で殴ったよな!?」


「火や雷といったメジャーなものは微妙だな。後試してないのは闇と光だが……」


「闇はダメだろ。見るからに闇属性ってモヤを纏ってるし」


 戦闘中のプレイヤーたちも攻めあぐねている様子……と、離れたところで戦っていたナギが私に向けて手招きしている。薬でも切れたかな?


「ミリアちゃん。チェリーのこと見ててくれる?ちょっと行ってくる」


「分かりました。気をつけてください」


 私は腰抜けチェリーをミリアちゃんに任せ、ナギの元へと移動した。剣と斬撃が飛んでくる中、なんとか無事に到着……あのクラゲ王が攻撃してくるパートナーと指示を出したプレイヤーを優先してくれて助かるね。


「来たよ。で、何の用?薬切れた?」


「そっちは平気。ココロに来てもらったのはそっちの子の力を借りたくて呼んだ」


「メキュ?」


 ナギが指差したのはライム。何でもクラゲ王の弱点として光属性が1番有効かもしれないってなったが……生憎、光属性のパートナーがあんまり居ないらしい。


「大体は攻撃役多めで来て、回復は薬……私はエンジェを連れて来ているけど、この子は属性攻撃できないからね」


 ナギはそう言って肩に乗せてたエンジェを撫でる。連れてたっけ?と思ったけど、どうも小型化状態でフードの中に居たらしい……いや、気づかないって。


「で、どう?いける?」


「うーん、無理だね。ライムも攻撃技無いから……ガチガチのヒーラーだからね」


 スライムは基本的に1つのことに特化するからね。プルーンやドランみたいな汎用性のある能力になる方が珍しい。ライムはヒーラとしての能力をどんどん伸ばしてるから攻撃性能無いに等しい。


「そもそも光属性の攻撃能力持ちってそう簡単に居ないでしょ?大体はヒーラーとして育成するだろうし」


「それはそう。仕方ない地道に削るか……」


「光属性でお困りですか?」


 これは光属性で削るのは無理そう。私とナギがそう思った時、突然後ろから声をかけられた。振り向くと白い修道服を着た金髪碧眼の女性が居た。近くにはパートナーらしき白いオオカミとトラが佇んでいた。あれ?この人、初対面だけど何処かで見たことがあるような……


(あ、この人……よく見たら前回の闘技大会本戦に出てた人だ)


 確か属性型の光属性代表。相性的な問題で1戦目敗退しちゃって……あんまり印象に残ってなかった。


「お、マシロじゃん。取り巻きの聖女親衛隊はどうした?」


「一緒に来た方々は他のプレイヤーの方の支援に向かってます……あと取り巻きと呼ぶのはやめてください。私からは何も返せないのにお手伝いをしてくださる方々なのですから」


 なんだこのthe聖女って感じは。リアルでこんな人居るの?演技には見えないし……私みたいな見た目だけ神官じゃなくて、ちゃんとした神官だね……服もちゃんとした修道服だし。


「おや?隣の方は噂のスライムマスターさんですね。初めまして、私はマシロと言います。中央神殿で神官をやらせてもらっています」


「あっ、どうもココロと言います。スライムの神殿所属です」


 剣とか斬撃とか飛び交っている状況で自己紹介……この人マイペースか?


「それで先程のお話ですが……光属性のアタッカーが必要なんですか?」


「そう。あいつの弱点が光属性っぽいからね……頼める?聖女様」


「お任せください。私が活躍できる機会はそうはありませんので……それと聖女ではありません。私はただの神官です」


 マシロさんはそう言いながら側に居る2匹のパートナーに指示を出した。オオカミとトラは静かに前に出ると白い光を纏ってクラゲ王へと突撃していく。


「ジュリリ」


 自分に近づいてくる2匹に気づいたクラゲ王は斬撃を飛ばして迎撃しようとする。しかし斬撃は2匹が纏う光に触れた途端、急に弱々しくなって威力が大きく下がっていた。

 そしてある程度近づいた2匹は爪を振って斬撃を飛ばす。クラゲ王は黒いモヤで防ごうとしたが斬撃はモヤを消しながらクラゲ王の身体へしっかりと爪痕を残した。


「やっぱり光属性ならあのモヤの影響を受けないか……」


「お役に立てて良かったです。ですが相手もかなり強いですね……あれでは致命傷を与えるのは難しそうです」


 そう確かに爪痕は残せた。だけどその傷は浅く致命傷に至らせるには遠い……光属性は攻撃向けじゃないから火傷や感電みたいな副次効果も起きないようだしね。


「こうなりますとこちらの方が良さそうですね。ルクス、プリム。《聖なるご加護》を使って」


 マシロさんは2匹に指示を出すとオオカミとトラが戻ってきた。そしてマシロさんが膝をついて祈り始める。その両脇で2匹が光を纏いながら高らかに咆哮をあげる。


「ウォォォォン!」


「ガァァァァァ!」


 2匹の体から光の柱が発生し、そこから光の玉が次々に他のパートナーたちへと吸い込まれていく。私のライムやレモンたちも同様に光の玉が吸い込まれ淡い光を纏ってる。


「これでしばらく一部の攻撃に光属性が付与されます……ただこれだけの人数ですと効果は下がってしまうので、効果はあまり期待しないでください」


「問題無い。攻撃が通るようになればこっちのもの……効果時間は?」


「ルクスとプリムのMPが切れるまでですね……この数だと5分が限界でしょうか?あとどちらか片方がやられてしまいますとその時点で終わりです。あと私含めて1歩も動けません」


「おけ。ならエンジェをMP補給役で置いとくよ。あとココロはマシロの護衛して……集団戦闘不慣れでもできるでしょ?」


「一言余計だよ?まぁ、できるけど」


 守るぐらいならね。スチンとプルーンを主軸にレモンとアセロラを補助に……ライムは変わらず回復役にすれば問題無い。


「攻撃通るうちに押せ押せー!」


「今までの恨みを晴らせー!」


「GO!GO!」


 攻撃が通りやすくなったことで攻略組たちの勢いが上がっていく。クラゲ王の方も斬撃を飛ばし、剣を飛ばして迎撃していくが蓄積していくダメージは無視できない。


「ジュリリ……」


 クラゲ王は少し考えるような素振りを見せると剣を更に分割させ6本に増やした。そして4本で攻撃してくるプレイヤーの迎撃……残る2本をこちらに向けて飛ばしてきた。


「原因を直接潰しに来たね。スチン、プルーン!頑張るよ!」


「ドロォ……」


「ヒヤァ」


 向かって来る剣は斬撃を飛ばしてくる。斬撃はスチンが水を操って膜を張るように防いだ。水にも光属性が付与されているようで、分割により威力が落ちたこともあり無事に防ぐことができた。しかし剣は水では防げず、容易く貫かれこっちに向かってくる。


「ドロォ……」


「ヒヤァ」


 向かって来る剣に対してスチンが水の壁を作り出し、それをプルーンが瞬時に凍らせる。剣は氷壁に突き刺さるが貫けない。


「分割してくれたおかげでなんとか防げるね……でも」


 私は氷壁から抜ける剣を見る。剣はそのまま氷壁を飛び越えて向かってきた。やっぱり氷壁程度じゃ止められないか……


「ドロォ……」


「ヒヤァ」


 飛んでくる斬撃はスチンが防ぎ、直接貫こうとしてくる剣はスチンが盾で弾いた。分割により弱体化と光属性の付与があるおかげでプルーンの盾も斬り裂かれずに済んでいる。


「でも1本だけならなんとかなるんだけど……2本はちょっとキツいな」


 斬撃は良いとして、直接攻撃だとプルーンしか受けられないからね。レモンとアセロラに撃ち落とさせようとしてるけど、雷は効果的じゃないしアセロラの炎は弾速のせいか当たらない……さっきの巡礼者の長戦での疲労も抜けてないし。


(向こうがさっさと片付けてくれれば良いんだけど……まだかかりそうだね)


 攻撃が通りやすくなってもクラゲ王は健在。向かってくるプレイヤーとパートナーを迎撃している。素のHP自体も高そう……と、こっちに集中しなきゃ。

 私は剣の不規則な動きを見極めつつ指示を出してマシロさん達を守っていく。だけどやっぱり疲労で頭が回りにくい……私がなけなしの集中力を振り絞って捌いていると、視界内に見たくないものを見てしまった。それは剣……3本目の剣だった。


「ジュリリ……」


 どうやらクラゲ王はマシロさんをさっさと片付けたい様子。流石に3本は捌ききれない……しかも斬撃飛ばしじゃなくて突き刺し。2本はマシロさん……もう1本は私を狙ってきている。それも回避したらマシロさんを貫くコースで。


「私も脅威判定されたか……」


 もしくはマシロさんを消すのに邪魔だから掃除したいだけかも……若干の現実逃避をしつつも私は最適な指示を出すために頭を回す。現時点で優先するべきはマシロさんを生き残らせること。なら!


「スチン、プルーン……悪いけど私は無視してマシロさんを守って」


「…………ドロォ」


「…………ヒヤァ」


「ありがとうね」


 自分の身体を盾にするため私は自分の命を捨てた。スチンとプルーンはマシロさんへと向かう剣を防ぐために動いた。私は向かってくる剣を見つめた。


(初デスがこれか……まぁ、悪くないか)


 無駄死にじゃないだけマシ。私は覚悟を決めて剣を待ち構えた……その時、私と剣の間に何かが割り込んできた。それは白いカメで剣はカメの甲羅に当たるとカーン!と甲高い音を立てて弾かれていった。か、硬……というか何処から。


「ちょっと隊長!カメノスケを投げないでくださいよ!あの子、足遅いから戻ってくるの遅いんですよ!?」


「すまんすまん。でもあれが最適解だったから許せ」


 私が呆然としているとドタバタと2人のプレイヤーが近づいてきた。お揃いの白装束で、パートナーは隊長って呼ばれた人が白いゴリラにサイ。もう片方の人が頭に白いモモンガを載せていた。カメは2人目の人のパートナーかな?


「あなたたちは一体?」


「初めまして。私たちはマシロ様護衛隊の者です!私は3番隊隊長のフォレと言います」


「私はタマミです。よろしくですスライムマスターさん!」


 その後、フォレさんが自分たちがどういう組織かざっくりと説明。彼女からはマシロさんのファンクラブで、マシロさんのサポートをしているらしい。他のプレイヤーからは聖女親衛隊とも呼ばれてるとか。


(あぁ、ナギが言ってたやつか……)


 なおマシロさん本人がそこまでサポートされることを望んでいないため、普段は影からこっそりと手助けをしたりしているらしい。弁えてるファンクラブなんだね。


「他のプレイヤーの援護も終わりましたので、マシロ様の防衛をお手伝いいたします」


「少しはスライムマスターさんの負担を肩代わりします!」


 こうしてマシロさんの防衛に心強い味方が増えた。3人になったことで剣の対処が楽に……単純計算1人1本対処すれば良いからね。しばらく3人で防衛していると不意に剣が全てクラゲ王の元へと戻って行ってしまった。


「ジュリリリ……」


 クラゲ王の方を見るとクラゲ王は剣を1本に戻して周囲を大きく薙ぎ払っていた。身体は見てない内に傷だらけになっていて消耗も多いそう。


「こっちに半分割いてマシロ様を狙うよりも。周囲のプレイヤーの排除を優先したようですね」


「マシロ様があちこちのボス戦に参戦するから戦闘経験多いけど……あの王様賢いね」


「そうですね。まぁ、賢いおかげで助かりましたけど……」


 あとは攻略組に任せよう。ちょっと肩の力抜けちゃったし……と、攻撃しているプレイヤーたちを見ていたらチェリーとミリアちゃんが攻撃しているのが見えた。


「よくも私の髪を〜!!絶対に許さないからね〜!!」


「チェリーさん。ここゲームなので切られた髪もすぐに戻りますよ?」


 なんかチェリーキレてる。胸以外でキレてるの珍しい……ミリアちゃんも少し戸惑ってるし。あれに関わると面倒そうだし見なかったことにしよう。

 その後、私はナギのエンジェちゃんにMP回復薬を飲ませながらクラゲ王との戦闘を観戦していた。クラゲ王は剣を分割したりしながらプレイヤーたちを相手取っていく。しかしプレイヤーたちも慣れてきていてやられにくくなっている。そして積もりに積もった傷はクラゲ王の判断力を削ぎ落としていき……


「ジュリリリ……」


 クラゲ王は床に膝をついた。剣も床へと突き刺さっていた。ようやく終わりか……このボス戦はね。


「まだあれが居る……」


 私がそう呟いた瞬間、クラゲ王が後ろに身体を大きく反った。そしてガクガクと変な動きをしたかと思うと、心臓の辺りから半透明の触手が突き出してきた。それを機にクラゲ王のあちこちから触手が突き出すように現れ球体のようになっていく。球体は脈動しながら大きくなっていき……解けるように広がった。







































そして神が降臨した。


「ジュリララララララ!!!」


次回、神との最終戦

早くお出しできるよう頑張ります

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― 新着の感想 ―
そういやスライムマスターちゃん、いまだにノーデス保ってるのか…
クラゲの姿をした邪神か……名前はなんじゃらほい?
チェリーのアホ毛が根本から切り飛ばされたらアイデンティティが失われるね…
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