第132話
「ここは涼しくて良いね……本当にあそこは暑かった」
アセロラの試練を終えてしばらく。私は水湧きの霊山に居た。来た理由はプルーンのlv上げと攻略。
既にテイマーギルドのランクは上げたからジャングルや火山に進めるけど……1箇所だけ攻略してないの気になるからね。
(東西南北バランス良くね)
決してここの亜竜にボコられかけて逃げてた訳じゃないよ?あれより強い亜竜とは大氷原で戦ってるしね。
ちなみに編成はライム、レモン、プルーン、ルベリー、メロン。lv上げ要員多いけどいけるでしょ。
「プラァ……」
不満そうなの居るけども……そんなしょっちゅう連れ歩いてる訳じゃないんだから、そこまで嫌そうな顔しないでよ。
(メロンの試練が1番大変そうだなぁ……違う意味で)
最悪、ライムにも手伝ってもらって試練の場まで連れて行こう……そんな先のことに若干胃を痛めているとガサガサと茂みが揺れ、久しぶりに見るマッドアーマー・ニュートが現れ……
「ニョロ……」
「ビリリリ!」
……きる前にレモンの雷撃で消し飛んでいった。あぁ、無情……あのマッドアーマー・ニュートはきっと自分が死んだことも認識できていなかったね。
(というか……ここ最後に来たのいつだっけ?あいつがどんな攻撃してくるか覚えてないや)
アンキロ以外、割とサクサク倒してたからね……ここのイメージって時折発生する水災の方が強いし。
「素材もパッとしない……」
アンキロに関しても亜竜の素材が必要なら、群れるアースラプトルで集めれば効率が良いからね……あれ?ここに来る意味ある?
(貝も養殖成功してるからね)
水質管理して餌を適度に与えれば良いだけ……思ったよりも簡単に成功した。繁殖ペースもそれなりに早いから大きい生簀を用意する必要も無い。
「サクッと攻略しちゃおうか」
強行軍開始!出てくるモンスターたちを蹴散らしながら先へと進んでいく。ここのボスは山頂に居るらしいから上へと向かっていけばOK。
「ニョロロロ!」
「「「ガァァァ!」」」
マッドアーマー・ニュートにホワイトウェイブ・アリゲーター……戦意を滾らせたモンスターたちが襲いかかってくるが。
「ビリリリ!」
こちらも戦意を滾らせているレモンの雷撃であっけなく散っていく。相性的に雷の通り良いからね……こうなるのは予想できてた。
「相性悪いアセロラも《過燃焼》でゴリ押しできそう……」
火力の暴力。それをあの弱かったスライムができるようになるなんて……最初の頃は思いもしなかった。というか今みたいにバリバリ戦ってるのも想像してなかったし。
「キロロロロロ!」
「ビリリリ!」
初めてここに訪れた際に軽くトラウマを植え付けらたプラントアーマー・アンキロ。そいつも今レモンの雷撃の剣を振り下ろされて瀕死状態。一撃死してないだけ強さを証明してるかな?サクッとトドメ刺されてるけど。
「亜竜……ちょっと前までは苦戦してたんだけどね」
それもちょっと強い雑魚敵ポジに。インフレって怖いね……ナギとかだと本当に雑魚敵なんだろうけども。あれ?攻略勢の方が化け物な気が……
そんな多数の攻略勢を敵に回しそうなことを思い浮かべていると、私は遂に山頂に辿り着いた。山頂は火山の火口のような窪みが湖となっている。ここが水源……なんかこう神秘的な感じかと思ったけど、割とリアルでも見れそうな景色だね。
「「「シャァァァ!!」」」
そんなことを思ったからなのか、水源である湖から大きな水飛沫をあげてボスが飛び出した。ボスの見た目は3つの首があるヘビ、トライヘッド・レイクバイパーって名前だったかな?
能力としては高い再生能力で……タフさと水による攻撃で強いというより面倒臭い敵らしい。ピンチになると湖に一旦逃げるとかいう遅延行為もするんだったかな?
「だから……速攻で片を付けるか、状態異常で縛ってボコボコにするのが攻略法。ルベリー、メロン」
「ノロォ!」
「プラァ……」
ルベリーは呪いの鎖、メロンは《酒肉華の香り》をレイクバイパーに放つ。レイクバイパーは誘惑と酩酊により動きが緩慢になったところを、呪いの鎖でガチガチに締め上げられる。
「「「シャ、シャァァァ!!」」」
「うちの最凶拘束……簡単には抜け出せないよ」
正直、これを使うのは私も控えたいし……使うと相手をボコ殴りするだけになるからね。厄介な相手か、手早く終わらせたい時ぐらいにしか使わないようにしてる。今回は後者が目的。
「「「シャァァァ!」」」
動きを縛られたレイクバイパーは3つある頭の口を開けると水弾を撃ってくる。しかし誘惑と酩酊により狙いはズレまくり、偶々当たる軌道で撃ててもプルーンの盾が防いでいく。威力もヘロヘロで全然脅威を感じない。
「レモン。威力高めでやっちゃって」
「ビリリリリリ!」
そんな無駄な足掻きをしているとレモンのチャージが完了。バチバチと空気が弾けるような音を鳴らす雷撃の剣をレモンが振り下ろす。剣は真っ直ぐレイクバイパーへと伸びていき、激しい音を奏でた。
「「「シャァァァ!!!」」」
レイクバイパーの絶叫が湖に広がっていく。チャージャーされたことで威力の上がった雷撃はレイクバイパーのHPを削り切るには充分……一撃で散っていった。
「弱点っていうのもあるだろうけど……あと凄いMP消費したのも効いてるかな?」
確認したら5割消費してるからね。威力高めって言ったけど、そこまで消費して放つとは思わなかった……リアルだったら二次被害がヤバかったかも。ゲームの世界で良かったね。
「さて、ボスを倒したし……新しい町に向かおう」
私は湖の縁を沿うように移動。戦ったところと反対側に来ると、ロープウェイのような移動用のゴンドラがあった。これに乗れば麓の町まで行けるみたい。無人だけど……乗るだけで勝手に動くシステムっぽい。
(地道に下山しなくて良かった……)
それじゃあ町まで景色を堪能させてもらうとしよう。私たちはゴンドラに揺られながら新しい町に向かった。
◇
水湧きの霊山の先にある町は湾岸都市シーフロンティア。海岸に作られた町で多くの船が並ぶ港が壮観……人の数もアマゼニアやペレーミア、スノウフォートに比べても多い。活気のある港町って感じ。
「雰囲気は好きだね……人混みはアレだけど」
「メキュ」
観光で来る分には良いけど、住みたくは無いって感じ。そしてここからの攻略ルートだけど……まぁ、海だよね。
シーフロンティアでは船をレンタルしたり、買うことができる。そして船に乗って海に点在する島やダンジョンを攻略する……他に比べるとちょっと変わっているフィールド。
潮の流れや天候なんかで行ける場所が変化するし、更に海の上は安全ではなく時折モンスターが襲いかかってくる。うん、別ゲーだね。
「船もピンキリみたいだしね……レンタルだと壊したらかなりお金取られるみたいだし」
そのため最初は船を買うことが重要になる。まともな船の値段は30万〜50万Gくらい。なんの設備も無いプレーンな状態でね。そこに色々設備を付けたら70万Gはかかるかな?
こんな感じだから南の攻略はあんまり進んでいない……皆、金策で苦しんでるからね。一応金策用なのかシーフロンティアの近くには難易度高い代わりに換金率の良い素材が手に入るサブフィールドがある。
「まぁ、私は先にアマゼニアのジャングル攻略が先かな……素材的に」
魔境の素材……どんなのがあるか楽しみだね。薬を作るのが楽しみ……今日はもうログアウトするけど。明日も学校あるし……イベントも佳境迎えそうだし。
私は転移で王都の拠点に戻ってライムたちと戯れてからログアウトした。そして翌日、イベントフィールドの最後のボスが倒されたことを渚から聞いた。その時の渚の感想。
「あいつとは二度と戦いたくない……眠……」




