第126話
久しぶりに苦戦した……
やっぱり戦闘シーンは苦手だな
何回も書き直しましたね
「ギィビィアアアァァァ!」
呪毒キメラの最初の攻撃は腕の振り回し、シンプルな攻撃だけど、その巨体から繰り出されると太い柱を振り回してるのと変わらない。
「防御は無理か……なら迎撃だね。アセロラ!」
「メララ!」
私の指示を聞いたアセロラが腕に向けて《爆炎粘砲》を射出。腕に当たった粘液の砲弾が弾け爆発、呪毒キメラは怯んだ。
ポタ、ポタポタ
攻撃の衝撃か。呪毒の液体が雨のように周囲に飛び散る……高威力の攻撃を使うとカウンターで呪毒を撒き散らすのか。しかも傷はジワジワと再生してるし……身体の管内の液体が動いてるから呪毒で回復してるのかな?
「厄介だね……でも残念」
こっちは対策は万全、薬のおかげで呪毒は効かない……在庫も沢山あるしね。
「ミネル。旋回軌道を取りつつ攻撃!」
「皆、行くよー!♪〜♪♪〜」
呪毒キメラが怯んだ隙を狙ってデルタさんとキラリさんが攻撃を開始。鮮やかな弾幕があちこちから飛び交い呪毒キメラを襲っていく。とはいえ威力が再生力とどっこいどっこいなせいで有効とは思えない。
「効くか怪しいけど……ルベリー、鎖で拘束して」
「ノロォ!」
ルベリーがジャラジャラと呪いの鎖を呪毒キメラへと巻きつける。が、やはり呪毒の影響か呪いへの耐性があるようで鎖は容易く引き千切られる。でも隙を作ることはできそうだね……嫌がらせとして使える。
「ホー!ホー!」
「…………!」
呪毒キメラが呪いの鎖を引き千切っている間もデルタさんとキラリさんのパートナーたちの攻撃は続いている。デルタさんの子たちは顔……特に目を狙って攻撃している。6個も目があるからねー……凄いイライラしてそう。
攻撃されても再生するとは言え痛み……あそこまで改造されてて呪毒漬けだと痛覚あるか怪しいけども、刺激自体はあるから鬱陶しいのは変わらないはず。
「ギィビィアアアァァァ!」
やっぱり鬱陶しかったのか呪毒キメラは羽虫を払うかのように腕を振る。まぁ、腕に付着していた呪毒が周囲にばら撒かれたぐらいで被害は無く、再び弾幕の雨が襲いかかっていく。
それに対し呪毒キメラは口を閉じて上を向く、ゴボゴボゴボと泡立つような音が発生したかと思うと呪毒キメラが口を開け、大量の緑色の煙を吐き出してきた。煙は足場の上を滑るように広がり、私たちを飲み込もうとする。
(足場全体に呪毒の煙……これ対策してなったらほぼ詰みでは?)
流石に効果自体は原液に比べて下がっているだろうけど……何度も使われれば蓄積していってキツい。薄くても呪毒は簡単に治療し切れないからね……私の薬も大量に吸ってしまえば呪毒が通ってしまう。
「ウィングル、エアリア、ストムル。風で吹き払いなさい!」
デルタさんも同じことを思ったのか、かつてはストレージピジョン。進化してウィンドバースト・ピジョンとなった3羽に呪毒の煙を強風で流させた。足場を覆い尽くしていた緑の煙はあっという間に流され消えていく。
「ギィビィアアアァァァ……!」
煙を流されたのに腹が立ったのか、呪毒キメラは飛んでる鳥たちに憎むような目を向ける。すると呪毒キメラの背中が蠢きだし……砲身のように細い筒が突き出してきた。
「ギィビィアアアァァァ!!」
呪毒キメラが咆哮と共に筒から呪毒の液弾がばら撒かれ始めた。筒は上を向いているから下は安全だと思うけど……液弾は放物線を描いて落下するため、地上に呪毒の雨が降り注いだ。
私はプルーンの氷の盾を傘代わりに雨を避けた。デルタさんとキラリさんも自分のパートナーの能力で雨を回避していた。
「ギィビィアアアァァァ!!」
ガコン!!プシュー!!
四方八方に呪毒をばら撒いている呪毒キメラが更に叫ぶと何本かの管の中身が紫と黄色の液体へ変化した……そして弾幕に紫と黄色の液弾が混ざり始める。
(これ……色的に猛毒と硬直か)
カクリヨさんが言っていた状態異常の変化。あの管を破壊すれば防げそう。私はアセロラに指示を出して管の破壊を試みる。
「メララララ!」
アセロラの《爆炎粘砲》が1本の管に直撃……しかし破壊はできず、管に薄らと傷ができただけ……頑丈だね。《過燃焼》していないとはいえヒビ1つ入れられないとは思わなかった。
「メララ……!」
「アセロラ、《過燃焼》はしなくていいよ……」
消費を加速させてこいつを倒せるか分からない。手持ちのMP回復薬を全部消費しても倒せるなら良いけど、倒し切れなかったら再生で意味が無くなる。
(再生能力持ちの複数パーティー推奨ボスにたった3人で挑んでる時点でキツイしね)
とりあえずこの弾幕に対処しよう。都合の良いことに……液弾を発射している筒は金属製だしね。
「レモン!」
「ビリリリリリ!」
レモンは気合いを入れると呪毒キメラへ雷撃を解き放つ。雷撃は呪毒キメラへと伸びていき、身体中の筒に吸われるように着弾していく。筒を伝わり雷撃は呪毒キメラを内部から焼いた。
「ギ、ギィビィァァァ!!?」
流石の呪毒キメラも内部から派手に焼かれて動きを鈍らせる。また雷撃を喰らわないようにするためか液弾を発射していた筒が次々に身体の中へ引っ込められていった。
その代わりなのか左腕が蠢き出すと肥大化し、思いっきり私たちの立っている足場へ叩きつけた。足場が大きく揺れ転倒しかける。この足場……ちゃんと固定してないの!?
「ギィビィアアアァァァ!!!」
足場を揺らしこちらの動きを止めた呪毒キメラの管に紫、黄、桃色……様々な色の液体が注入される。呪毒キメラが口を開ければカラフルな絵の具を雑にマーブル柄になるよう混ぜ込んだ球体が見えた。球体は呪毒キメラの口の中一杯の大きさだが、圧縮されるように小さくなっていき自動車サイズになる。そして狙いは完全にレモンに向いていた。さっきの雷撃でヘイトを稼ぎ過ぎたか……
(あれは流石にプルーンでも受け切れるか……)
それほどまでに巨大な球体。避けようにもさっきの揺れの余波で足が上手く動かない……デルタさんたちも発射を阻止しようとしてれているが、呪毒キメラはそのまま発射してきた。
球体は形を保ちながら想定以上の速さでレモンへと向かっていく。レモンは一か八か迎撃しようと手に雷を集め始めた……その時。
「ノロォ!」
なんとルベリーがレモンの前にギュン!と飛び出すと球体に向かっていった。なんでいつもの速度以上の速さで動いているのかと思ったら、ルベリーの腰に黒い鎖が巻き付いていた。鎖の先は地面で……あの子鎖の巻きつき引き寄せる力を利用して動いてる。
「ノロォ!!」
球体の前まできたルベリーは球体を受け止めた。球体から黒いモヤが溢れ出しルベリーに纏わりつくが、ルベリーに影響は現れない……呪いならルベリーのエネルギーになるだけだからね。そして混ぜ込められた状態異常もスライムならなんとかなる……だけど。
「ノ、ロォ……!!」
質量に押し負けジワジワと押されていっている。呪いの鎖が地面にアンカーのように刺さっていなければ既に吹っ飛ばされる……ダメージもどんどん蓄積してるはず。
ピシ……ピキ……
鎖の方もヒビが入り始めている。助太刀しようにも球体とルベリーのぶつかり合いの余波で近づけない。このままだと蓄積ダメージでルベリーが倒れるか、鎖が千切れてこっちに飛んでくるかの2択……と、その時。天井から何かが落ちてきた。それもいくつも。
ポヨン!と弾んだそれは呪毒のような色で丸いボディ……その造形は私にとって馴染みのあるもの。
「「「「「ウィル!」」」」」
バイオ・スライムたちだった。




