第121話
今日は作者の誕生日
20超えるとあんまり実感湧かないけども……
というか1年が早く感じる
月曜日。学校が終わり私はMEOへログインした。あぁ、渚に関する懸念だったけど大当たり……案の定サボってゲームしようとしてたから連行してきた。エナドリ買い込んで引き篭もるつもりだったね。
連行されるとき渚は『おのれー、悪魔の手先共めー』ってやる気の無い声で文句言ってた。誰が悪魔の手先だ……いや、桜に関しては部屋の中が怪しいものでヤバいからあってそうだけど。桜の部屋ってオカルト部?ってなるような感じだし。
(今週は渚の連行しなきゃかな?)
立てこもられたらアレだけど……その時は渚の両親に電話すれば問題無し。流石の渚も両親には逆らえないからね……渚もそれが分かってるから立てこもったりはしない。
と、そんなことがあったりしたけど無事にログイン……スチンとアセロラの能力チェック兼、プルーンとメロンのレベル上げといこう。今回のフィールドは……風笛の霞森になった。理由としては未攻略、かつモンスターに癖が少ないからだね。
「ドロォ」
「メララ!」
「ガァ……ゴボ……」
「ガァァァァ!!」
私の目の前では2匹のミストアサシン・パンサーがスチンとアセロラの能力チェックの実験台となっている。1匹はスチンの操る水の玉に包まれ溺れ、もう1匹はアセロラの青い炎に包まれ転げ回る。
溺れている方は抜け出そうとしているけれど、水圧によって抜け出せず動きが鈍って止まり。燃えている方は消そうとしていたが間に合わず黒炭のようになる……うん、過剰攻撃だね。
「アセロラ。《過燃焼》は使わないで良いよ……MP勿体無いから」
「メララ」
私の言葉を聞いたアセロラは胸の青白い光を抑えていく。スチンの方は……特に言うことは無いかな。MPがある限り無限の水……水圧を高めると消費量が嵩むけれど、それ以外は特に問題無い。タンク役よりもルベリーみたいな拘束役向きのになったけど……やれることが増えることは良いことだからね。
「プラァ……」
「メロン……連れてきたのはゴメンだけど。そろそろ機嫌直して」
スチンとアセロラの戦闘が一段落すると同時に、横で溜め息のような息を吐くメロンを私は宥める。ここ最近はずっと中庭で寝てたから、戦闘参加が嫌みたい……凄い目付きが悪い。徹夜明けで寝たばかりの人を叩き起こしてもこんなに睨まないよ。
(というか……あなたは寝てばかりでしょ)
それでそんな目を向けられるの心外過ぎる……どれだけ寝たいのさ。
「メキュ。メキュ」
「プラァ……」
目付きの悪いメロンに対し、ライムがモニュモニュと目尻の辺りを揉みほぐす。メロンの睨みの鋭い目がジワジワといつもの眠たげな感じに戻っていく……ライム助かるよ。
「ヒヤァ」
「プルーン?どうしたの?」
私がライムに感謝してるとプルーンに話しかけられた。プルーンが氷の槍である方向を指すと……ここで初めて見るものを見つけた。
見た目は木の幹から直接生えた薄い翡翠色の葉っぱの蕾……ただサイズが大きくて何かが入って居そう。
ペリ……パラパラ
私がそんなことを思ったからだろうか、葉っぱの蕾は外側から1枚……また1枚と剥がれていく。葉っぱが少なくなっていくに連れ中身が見え……その姿を現した。
「ギ、リリリ」
蕾から現れたのは霧のような白みがかった青の人型のモンスター。肌をよく見るとスベスベだけど木目があり、額には葉っぱの付いた枝の角が2本。腰には腰蓑のように大きな葉っぱが何枚も折り重なるように生えてる……
(ゴブリン……いや、オーガって言うべきかな)
オーガ。ゴブリンの特殊な進化系の1つで脳筋の鬼って感じのモンスター……闘技大会の時にちょっと調べたんだよね。目の前のこいつはそのオーガを木で模したって感じ。
ちなみにオーガは今のところ敵としては出てきていないし、ゴブリン系なのに進化すると《連携》が消失するため。ゴブリンテイマーの間では『身体でデカくて動きの鈍い案山子』と言われることもあるんだとか。オーガ、可哀想……百鬼夜行には何体も居たけどさ。
「ギ、リリリリ!」
木製オーガは耳障りな鳴き声を上げるとズシズシと足音を立てて向かってくる。それに対し、アセロラが攻撃体勢を取るけど……ここはプルーンとメロンに任せる。
「ヒヤァ」
プルーンは氷の大盾で木製オーガを受け止めると力を入れて押し返す。木製オーガは後ろによろめくように下がる。オーガの見た目の癖してパワーが無い?見かけ倒しの見た目かな?
「プラァ……」
木製オーガが下がるとメロンが面倒そうに地面に向けて赤い粒をばら撒く。木製オーガは体勢を立て直すと再び向かってきて赤い粒を踏んだ……その瞬間、赤い粒がバチバチバチ!と弾けた。
「ギ、リリリ!?」
木製オーガは植物の癖に怯んだような悲鳴をあげる。赤い粒を踏みつけた足からはジュゥゥゥ……と音が鳴る。
あいつが今踏みつけたのは品種改良で誕生したニトロアシッドベリー……ニトロペッパーとアシッドベリーを掛け合わせた植物の種子。潰すと破裂し酸性の果汁が付着するという特性がある……はっきり言うと危険物だね。
(品種改良を色々試す中で生まれた失敗作の1つ……でも武器としては使える)
そうして品種改良を更に重ねて武器として使えるようにしたのがあれ……そういう方向性で改良したせいで薬の材料にはできないし、プレイヤーが使った場合はダメージがしょぼくなるデメリットが付いた。それでもメロンの武器としては充分……
本来は闘技大会の時に使いたかったんだけど……ゴブリンたちは《酒肉華の香り》で充分だったのと、他は相性的に選出しなかったからね。長らく登場させられなかった。
「ギ、リリリ!」
足が酸に侵されようとも向かってくる木製オーガに対し、今度は紫色の撒菱のようなものを撒くメロン。考える頭も無いのか木製オーガは警戒せず踏み抜くが……特に変化無し。
今踏ませたのはベノムローズを主軸に色んな毒を持つ植物を掛け合わせたもので、種の状態でも毒が滲み出す危険物。種自体も撒菱のような形に変化して中々に危険……なんだけどね。
「毒は効かないか……というか痛覚も無い?」
さっき怯んだのは爆発の衝撃かな?ふむふむ、ある程度は向こうのことが分かってきたね。メロンの武器はまだあるけど、そろそろこいつは始末しちゃおう。残りの奴は真っ新なやつで検証したい。
ちなみにメロンの武器は基本的に種子……理由としてはメロンの今の能力だと種を作って撒いてもすぐには成長しないからね。生えているものは罠として利用できるんだけども……ここは進化先の能力に期待。
「ヒヤァ」
「ギ、リリ」
私がメロンの武器の効果をメモしている間、木製オーガはプルーンの氷の槍で串刺しされてトドメを刺されてた。防御力は特に高くないと……なんかよく分からないモンスターだったね。
「素材の方は……あぁ、成程。そういうことね」
素材を見たことで私は木製オーガの正体を理解した。木製オーガ……正式な名前はコピーミミック・トレント。他の生物の姿を真似る植物系モンスター。あの姿は他のプレイヤーが連れていたパートナーの姿を真似たものだった。
「擬態……とは違う感じかな」
リアルの生物にも他の生物の見た目に寄せて身を守るものが居るけど……こいつの場合はそっち系では無さそう。そしてそういう特性があるのなら。
「グ、ルルル」
「ピ、イィィ」
他のモンスターの見た目を真似たやつも出てくるよね。よく見ればコピーミミック・トレントの蕾があちこちにある……オーガの奴は大きかったから気づきやすかったね。
新たに現れたのはオオカミの見た目をしたやつと、鳥の見た目をしたやつ。毛の部分は葉っぱで表現されているね。よく燃えそう。
「耐性関係とオーガと同じかな?その辺も試してみるか」
私はここぞとばかりにメロンの品種改良で生まれた植物たちを試していった。
やっと……品種改良の伏線を回収できた
まだいくつか残ってんだよなぁ……
頑張って回収しなきゃ




