第120話
「メラララ……」
「キンキンに冷やした濡れタオルがすぐに乾き切るね……どんだけ発熱してるのさ」
拠点のソファに寝かせたアセロラの額からカサカサのタオルを取った。倒れたアセロラはまだ起きてなく、地味に発熱し続けてる。
原因はやっぱりあの炎を変化させたやつかな。あれ、結局のところよく分からないんだよね……アセロラのステータスには特に変化無かったし。火事場の馬鹿力みたいなものだと予想してるけど。
「ヒュウ」
「ヒヤァ」
私があのアセロラの行動について考えていると、チェリモは冷たい風を送ってエアコンみたいにアセロラを冷まし、プルーンは濡れたタオルを凍らせてアセロラの額に乗せた……凍ったタオルがすぐにフニャリ始めてるのは気にしないでおこう。
「ドランの方はもう全快したんだけどね……あ、ドラン。あの加速方法はダメだからね」
「メタァ」
アセロラの元に高速で移動したあれ、やり方は単純で自分と後ろにある物体に《磁力操作》で強力な磁力を付与、磁力による反発で勢いよく射出されるという……カタパルト射出みたいだね。しかも射出時には地面にも磁力を付与して浮き上がるようにしてる。
(ただ細かいコントロールがまだできないせいで……反動が発生するんだよね)
特に衝突時にあまり看過できないダメージが……まぁ、ただの自爆特攻みたいなもんだしね。磁力であれやこれやしてるけれど。
「発生させる磁力も強過ぎてMPバカ喰い……あの時はこのやり方のおかげで助かったけど。あんな無茶な戦い方はダメだからね」
うちでは自己犠牲の精神は許しません。やるなら自分も無事に済むように行動するように……このことをライムと一緒に言い聞かせた。ドランの反応薄いからちゃんと聞いてるか不安だけど。
「さてとアセロラ全然起きる気配無いし……アセロラが起きてからやろうと思っていたけどスチンの進化始めちゃうか」
「ドロォ」
私はスチンの進化先を確認する。
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▶︎進化先
アビスコーラー・スライムヒューマ
水属性のスライムヒューマの進化先の1つ
安寧を求める全てを受け入れられるスライムヒューマのみが進化できる
暗く静かな深海の底に住み。海を荒らす不届者を己の領域へと招き入れ藻屑と変える伝承が残っている。
ある海に面した地域では悪さをする子どもに話す御伽話にも、その存在が記述されている。
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水没ときて深海か……一気に飛んだね。深海って聞くと今のイベントが思い浮かぶね。そんな感想を抱きながら進化を開始させる。
進化したスチンは容姿は大きく変化しなかったが腰から下の部分が、下に向かって黒くなっていくグラデーションになってる。深海になっていく感じを表しているのかな?大事な能力の方も確認する。
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スチンlv1/80
種族:アビスコーラー・スライムヒューマ
(第4進化)
HP:700/700
MP:300/300
スキル
《悪食》《物理耐性・Ⅴ》《再生強化》
《海水生成》1000/10000
自分の体内に水を貯め海水に変換する
MPを消費することで海水を生成できる
塩分濃度は飽和するまでは調整可能であり
0にすることで淡水として生成もできる
《液体操作・水》
水を由来とした液体を操作することができる
レーザーのように放ったり、盾のように使ったり使い方は自由
《水圧操作》
操作している水の水圧を操作する
高めるほど多くの水を必要とする
《深海の加護》
水辺、特に海に近い場合に能力が上昇する
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色々変わったね……注目するべき点は海水と淡水の使い分けができるようになったこと。水の操作がより幅広くなり水圧による圧殺が可能になったこと。そして海の近くに居ると強くなるところかな。
「液体で自由度上がるのは結構大きい気がする……」
液体……流体は形が定まっていないもの。だからどんな形にもなることができる。それが自由に扱えるようになったらどれだけ強いかはレモンが証明してる。レモンも電気という形の定まらないものを使ってるからね。
「能力チェックはまた後でやろうか……アセロラも起きたみたいだし」
「メ、メララ?」
ソファに目を向けると目を覚ましたアセロラが戸惑っている。気絶してたからね……とりあえず状況は説明しておく。タコを倒したことと進化できるようになったことを特に……あと説明の途中であの覚醒状態について聞いてみたけど、どうもアセロラは覚えていなかった。キレてからの記憶が曖昧で……スッキリしたと思ったら記憶が消えてしまったらしい。
(結局、あれに関しては分からないままか……)
とりあえず怒りによるパワーアップってことにしておこう。それじゃあアセロラも起きたし……アセロラも進化させようか。どんな進化先かな?
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▶︎進化先
ソウルバーン・スライムヒューマ
火属性のスライムヒューマの進化先の1つ
仲間の為に燃え上がれるスライムヒューマのみが進化できる
炎を限界を超えて燃焼させることができ、その際に胸の部分が青白く発光するため魂を燃やしているように見える
火属性のスライムヒューマの中でも火力は随一だが……その分、燃費の悪さも随一である
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あの炎の強化ここに組み込まれたのか……ちゃんと経験を反映してくれるのは嬉しいね。確認できたので進化実行。アセロラも容姿は髪の部分が少し伸びたくらいで、そこまで大きく変化していない。ほんの少し大人びた雰囲気はあるけどね。
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アセロラlv1/80
種族:ソウルバーン・スライムヒューマ
(第4進化)
HP:400/400
MP:600/600
スキル
《悪食》《打撃耐性・Ⅳ》《炎無効》
《火焔放射・Ⅵ》
発火性の高い粘液を揮発しガスとして燃やす
粘液は揮発させガスにすることでより広範囲を効率的に燃やせる他、収束させることで焼き切ることもできる
《爆焔粘砲》
発火性の高い粘液で高温のガスを包んだ砲弾
着弾と同時に粘液が割れ、中のガスが空気に触れて燃焼し爆発する
粘液のコーティングを薄くすることでフワフワと浮遊させ機雷のように扱える
《火焔熱波》
揮発させた可燃性のガスを前方に向けて放ち起爆させる。ガスは溜めるほど濃くより爆発する
射程は短いが発動速度は速く自衛としては優秀
《過燃焼》
MPを3倍消費する代わりに一定時間、炎の温度を上げ威力を向上させる
炎の温度が上がるほど色が変化していく
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炎が焔って漢字に変化してるね。あとは粘液をガスにできるようになった……攻撃能力も結構ガスを活用する形にもなってる。
(まぁ、液体と気体……気体の方が節約になるしね)
燃費の悪さをそこで誤魔化していそう。《過燃焼》使ったら意味無いだろうけどね。温度を上げるのにガスの消費量増えそうだし。
「MP回復薬は沢山用意しておこう」
とりあえずこれでスチンとアセロラの進化完了……次はプルーンの番だね。プルーンを進化させたら半分は第4進化到達ってことになる。
(ルベリーたちもそれなりに経験値は溜まってるしね……1番の問題はメロンか)
メロンは栽培担当だから戦闘参加数が少ないんだよね……多分、ワースト2位とか。ドランがまだ仲間にして時間が経ってないからね。そのうち抜かしそうだけども。
「スチンとアセロラの能力チェックが終わったらメロンを重点的に連れて行こうか……」
試練はできるだけ仲間にした順でクリアしていきたい。それに最近は品種改良も一段落して寝てばかりだし……闘技大会で使えなかったあれらを活用するのに丁度良い。
「ゴブリンの時に使えば良かったんだけど……それ以降、使う場面がね」
それ以降は有効活用ができそうに無かったし……無駄になると品種改良が無駄になるし。
「どこで練習しようかな?」
私は中庭で寝てるであろうメロンの元に向かいながら実験場所を考える。流石に今日はもう時間が無いし……行くのは明日だね。月曜日だから学校あって午後になるけど。
(平日はできることが限られるね)
そこはきっちりスケジュールを決めて動いていこう。何をするべきか考えて動けば時間の無さを少しはカバーできる。
「平日のイベントは廃人の人に任せるとしよ」
学生は学生らしく学校で勉強だね……ナギのやつサボらないよね?前にゲームのイベントで学校をサボった前科があるし。チェリーとプリント届けに行ったらエナジードリンク飲みながらカチャカチャしてた。
「明日、家まで迎えに行くか。チェリーと一緒に」
後でメールを送っとこう。というかチェリーって今何してるんだろう?明日迎えに行く時に聞いてみよ。




