第116話
キュ、キュ、キュ
無事、ボスを倒すことができ私はバルブハンドルを回すことができた。タンクから出ていた液体が止まった。これで良し……
「まぁ、地下には入れないみたいだけどね」
メモを見るとあと3箇所ほどバルブハンドルがあるみたい……それを全部閉めなきゃ地下には行けないみたい。
(地下街とは違って、こっちはボスには簡単には挑めなさそうだね)
残りは他のプレイヤーに任せるとしよう。私も目的は果たせたからね……
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イロウジョン・スパイクリザードの呪毒棘
イロウジョン・スパイクリザードが生成する呪毒の棘。
掠るだけでも呪毒が身体を蝕み始め、精神を蝕み侵食する。
***に侵食されつつも適合しかけている
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説明から呪毒の性質もある程度は掴めた。実験に使えそうな素材もアメーバから沢山手に入っているし……帰って薬を作るとしよう。
「貴方達とはここでお別れだね」
「「「「「「ウィル?」」」」」」
私はここまで連れてきてくれたバイオ・スライムたちに別れを告げる。それと1つお願いも……襲われない限りプレイヤーを攻撃しないで欲しいっていうお願いをね。
「襲われたら囲んでボコボコにして良いからね。パートナーじゃなくてプレイヤーをボコせば勝てるよ」
私はバイオ・スライムたちにプレイヤーの倒し方をレクチャーしておく……この研究所、あちこちに亀裂があるせいでバイオ・スライムたちは自由に移動や潜伏ができる。
(プレイヤーにはバイオ・スライムに手出しすると痛い目見るって情報を広めておけば良いか)
アーカイブに頼ればなんとかなるだろうしね……それにこの子らはさっき調べた情報によると、面倒な割に経験値と素材がイマイチで狩る必要が無いって評価らしい。それなら積極的に狩られることもないでしょ。
「メキュ」「ビリ!」「ヒュウ!」
「ドロォ」「ノロォ」
「「「「「「ウィル!」」」」」」
ライムたちも別れを告げ、私は研究所を後にした。さーて、ここからが本番だね……薬の開発。薬を作るプレイヤーとして完成させなきゃだね。
◇
「ただいまー」
浮上都市から拠点へと転移する。ふー……拠点は落ち着くね。
「それじゃあ実験しに向かおうか」
「メキュ」「ノロォ」
私はライムとルベリーと共に実験室に向かった。レモンとチェリモは速攻アセロラ探しに行って、スチンは気がついたら居なくなってた……中庭のメロンのところ行ったかな?
「「「「「「キュ!」」」」」」
「メタァ……」
私が生産室の扉を開けると分体ライムたちとドランが掃除していた。あぁ、ドランだけど……やっぱり服はメイド服。スチームパンクな感じのメイド服を着てる……デカいレンチが似合いそう。
あと分体ライムたちも頭にホワイトプリム付けてたりする。分体たちは本体の着ている服の一部を反映させられるんだよね。
「皆、お疲れ様。今からちょっと実験するから休んでていいよ」
「「「「「「キュ!」」」」」
「メタァ……」
私は分体ライムたちとドランを部屋から出す。休憩は建前……これからやる実験は危ないからね。レモンやアセロラ、チェリモのお転婆組が入れないように鍵はかけとく。
「それじゃあ……まずは呪毒の本質を解明しようか」
私はアメーバの液体を最近導入した液体分離機へと入れる。液体は機械を通って黄緑と黒紫の2種類の液体へと分離される。
「目論み通り……毒の液体と呪いの液体にできたね」
分離できたら今度は液体分析機へと投入する。液体分析機は投入した液体の特性を調べることができる……中々高い設備だけど百鬼夜行やナギとの取引で資金が貯まったから導入できた。
「まぁ、私のはめっちゃ時間がかかるし。1回じゃ解析しきれないやつなんだけど……」
とりあえず今日は毒の方の分析を終わらせよう……呪いは最悪ライムのゴリ押しできるし。私は毒の液体を液体分析器に入れて分析を待つ。待っている間はイベントで得た素材の再確認や情報収集に努める……あっ、アーカイブには情報を既に連絡済み。調査拠点に出張支店できてたからね……なんか情報色々出したら凄いお金貰えた。あとドタバタ慌ててたね。
(アーカイブ……ちゃんと利用したの初めてだったけど、あんなもんなのかな?)
そんなことを思ったりしつつ、2時間程で毒の分析が完了した。呪いの液体を投入して分析している間に毒の特性を確認する。
「ふむふむ……これ毒というよりもウイルスみたいな特性してるね」
分析結果によるとこの毒には2つの特性があって、1つは呪い耐性を下げる特性、もう1つは呪いの効果を増強し浄化しにくくする特性……これのせいで聖水の効きが悪かったんだろうね。
その後、夕食のログアウトを挟みながら呪いの液体の方も解析が完了した。
「ある程度は察していたけど……毒とシナジーがある特性だね」
呪いも2つの特性があり、1つはジワジワと精神を削り凶暴化させる特性。もう1つが解毒効果を弱める特性。これは呪い耐性が下がっているとより強くなる厄介な特性になっている。
つまり呪毒は毒が呪いの侵食を助長、呪いは呪いで毒を治しにくくして凶暴化させていく……これ見方を変えるとゾンビ化させるウイルスみたいに見えるね。
「まぁ、特性が分かればどうにでもなる……」
呪毒に対する薬は呪いをねじ伏せれば良い。呪いが無ければ毒は簡単に治せるからね。毒の浄化阻害を超えられる薬を作ろう。
「浄化結晶をベースに解毒効果のある素材を数種類ブレンド……ここに薄めた《慈悲の祝福》を」
浄化をメインにし、毒を弱めるための素材を入れた。《慈悲の祝福》を薄めたのは大量生産しやすくするためだね。あと原液そのままは過剰浄化で大半が無意味になりそうだからね。
そんな感じで試行錯誤していき……完成品が出来上がった。
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浄化解毒薬
▷効果
強力な浄化効果により呪いを打ち払う
また解毒効果により強力な毒を和らげる
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あとは実証実験だけど……私たちだと耐性的にできないんだよね。かと言って他人に任せてもあれだし……やりたくないけどやるか。
私は自分の装備を交換。昔のボディスーツを着て……アメーバの液体を飲んだ。シスター服じゃないならライムたちの耐性は得られないからね。
「あー……成程。こんな感じなのね」
私の身体に黒い蔓草のような紋様が浮かんでる。あと怠い……私は呪毒を体感しながら浄化解毒薬を飲む。身体が軽くなる感覚がし、身体に浮かび上がっていた紋様もスゥ……と消えていく。ステータスを確認して……完全に呪毒の治療できてるね。
「それじゃあ大量生産の準備をしようか」
生産は……今日はもう時間無いし明日の午前中になりそうだね。ナギにはある程度生産したら連絡しよう。
こうして私のイベント1日目は終了した。




