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スライムマスターちゃんのVRMMO  作者: アザレア
第1章 ゲームスタートと第1回公式イベント編
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第11話


「泥の中でも凄くスムーズに動ける……装備が無かったらどんだけ動けなかったんだろう?」


 脛の真ん中辺りまで泥に浸かりながら沼地の植物を採取していく。この沼地で採取できるのは汚れた水を浄化できる浄水草。薬に混ぜると炭酸のようなパチパチ感が何故か発生する蜜を溜め込んでいる泡沫華(ほうまつか)。悪臭のガスを溜め込んだ実を付ける悪臭樹から取れる悪臭の実(取り扱い注意枠)……中々に面白いものが多い。


 あとは薬草の上位の上薬草、MP回復の薬に使われる魔力草とかも手に入った。これはちょっとありきたりな感じだから他よりは興味が薄い……そもそもうちの子たちMP使わないし。


(悪臭の実に関しては既に武器みたいなもん……そして使い道が分からない)


 手の平サイズのアーモンドみたいな見た目で、そこそこ強い衝撃を与えた途端に弾けて鼻が曲がりそうな悪臭を放つ……最早爆弾のようなもの。


 私は破裂させてないけど別のプレイヤーが採取に失敗して地獄を見た……あとパートナーらしきモンスターたちが見るからに避けてた。風下に居たからこっちまで臭ってきたし。


(臭いとしてはメタン系のガス特有のものに近かったね……)


 ガス自体も可燃性があるらしいし……そのため悪臭樹の近くで火を使うのは暗黙の了解で禁止とされている。レモンの放電も多分アウトだね。


「悪臭樹の近くで襲われたら逃げるしかない」


「ビリ」


 モンスターが潜む沼に対策無しで入るのは命知らず過ぎるから、頭の上に50%蓄電したレモンを乗せて採取してる。ライムとスチンは遊歩道の上で待機し、スチンは黒泥と肥沃な土を混ぜた餌を食べてる。水に関しては薬用の瓶に町の井戸から汲んだ水を入れて用意し、混ぜる用の器とかも用意した。沼の水?そんなの使えるわけないじゃん。


「ゲコ!」


「ビリ!」


 沼地から遊歩道へ戻ろうとすると、隠れていたポイズンフロッグが泥から飛び出し飛びかかってきた。それに対しレモンがポイズンフロッグへと飛び……


バチバチバチ!


「ゲコココ!!?」


 放電タックルを食らってポイズンフロッグはノックアウト。沼に沈んでいった……素材が入ってきたから倒せたようだね。


「レモン。はいコレ」


「ビリ」


 私は沼に入らず頭の上に戻ってきたレモンに帯電小石を渡す。遊歩道までにまた襲われるだろうから蓄電しないと……


「シャァァァ!!」


「次来るの早いって……」


 カエルの次はヘビ。スワンプスネークが泥から飛び出してきた。こいつは珍しく毒無し……沼からの不意打ちが鬱陶しくて嫌いだけど。あと……


「ビリリリ!」


「シャァァァ……!?」


 こいつ私じゃなくてレモンを優先して丸呑みしようとするから、放電食らってそのまま退場していく……ちょっかいだけ出して消えていくから地味にイラってするんだよね。そんなことを思いつつ遊歩道まで戻ってきた。


「よいしょ。ふぅ、疲れた」


 遊歩道の上に戻るのちょっと大変。泥じゃなくて身長的な問題でね……毎日牛乳に煮干しを食べてるのに何故伸びない。


「……スライムの餌でこの2種類与えたらカルシウムスライムになるのかな?」


 食べたら身長伸びるかな?でもゲーム内のスライム食べてもリアルの身長は伸びない……そんなくだらないことを考えていると沼からザバァ!とモンスターが飛び出してきた。


「ベノォ……」


「うへぇ……戦いたくないやつ出てきた」


 今回現れたのは紫色のスライム……ポイズンスライム。全身が毒液で構成されたスライムで、この沼地で1番嫌われている。理由は他のモンスターに比べて毒が強い。私の丸薬なら治せるけど市販の安いものじゃ治せない。だから丸薬を高く買い取ってくれる。


(戦いたくない理由はそこじゃなくてスライムって部分なんだけどね……)


 ライムたちと過ごしてて、スライムはあんまり倒したくない……でも向こうはこっちを殺す気でくるから戦うしかない。


「ベノォ……!」


「わっと」


 私が「うへぇ……」と思っているとポイズンスライムはこっちに向けて毒液を飛ばしてきた。私はスチンを抱えて後ろに跳び回避する。ライムとレモンは言わずともきっちり避けてる……なんならレモンは体当たりを仕掛けにいってる。


「ビリリ!」


「ベノォ……!」


 レモンの体当たりからの放電を食らっても、ポイズンスライムは割とピンピンしていた。70%蓄電した状態の放電でも耐えるからなぁ……さっきポイズンフロッグ倒して蓄電してなかったから15%も蓄電できてなかった筈。


(多少痺れてはくれるから無駄では無いけども)


 とはいえ倒し切るにはレモンに帯電小石を与える。時間稼ぎは……やりたくないけどやるか。


「そい!」


「ベノォ……!?ベ、ノノノォォ……!!」


 私はポイズンスライムに毒消しの丸薬を投げた。ポイズンスライムが丸薬を取り込むと身体をボゴボゴと変化させて苦しんでいく。

 全身が毒のポイズンスライムに対して毒消しは身体を破壊する劇薬。とはいっても殺すことはできないんだけどね……すぐに吐き出されるし。それに苦しむ姿あんまりみたくない。


(スライム相手は本当にやりにくい……)


 気分も良く無い。スライム避け作りたくなるけど……それやるとライムたちにも影響出るからね。


「ビリリ!」


「ベノォ……!!?」


 ぺッ!と毒消しを吐いたポイズンスライムに向けて粗方蓄電をしたレモンが再び攻撃。ポイズンスライムを仕留めた。


「再び遭遇しないことをお気持ち程度に祈っておこ……ただ素材は有用なんだよね」


 ポイズンスライムの毒液は毒薬の材料にワンランク上の毒消しの素材になる……調薬に役立つから仲間に加えたい。毒薬を与えれば進化しそうだから仲間にするのは難しくない。


(とはいえ今すぐ欲しいかと言われると微妙。泥のスライムになるスチンの進化後にもよるけど攻撃役を増やしたい)


 毒……要するにデバッファーはまだ必要無い。ついでに毒薬も上位の毒消しも作る需要が無い。現状、ライムの薬液で作れる毒消し丸薬で毒対策は充分。

 毒薬はプレイヤーが使ってもダメージが与えられず、モンスターの武器に塗ったりしないと効果が発揮されない。ゴブリンメインで使ってる人が矢に塗って使ったりはしてるらしい。


(今後需要が増えるだろうけど……今は生産よりは戦闘面を強くしていきたい)


 拠点を構えてから生産に力を入れたいし、そうすれば戦闘と生産でチームを分けられる。ライムは戦闘と生産の両方になりそうだけども……


(この先の楽しみの1つになりそうだね……さてとレモンの蓄電を終わらせたらもう少し先に進もうかな?)


 lv上げも順調だし……やっぱ戦える子がいるとスムーズに行くね。


(素材も実験用でもう少し欲しいし……スチンが進化したら一旦帰って薬作ろ)


 どんな薬が作れるかな?私は楽しみにしつつ遊歩道を進んだ。



 悦楽の沼地で1番人を引き寄せるものは何か。薬の材料となる薬草や毒物及びその対策に使えるモンスターの素材……どれも有用なものだけど1番有用とされているのが。


「霊結晶……聖水の材料になるものらしいけど。この沼地の素材としては異色だよね」


 私は沼地から突き出すように何本も出ている白い巨大な結晶柱を眺めた。結晶柱の周りには同じような白い結晶が散らばっている。

 あれは鉱石ではなく、この沼地で死んだモンスターたちの魔力が物質化し蓄積したもの。原理は不明だけど死んだ際に放出される魔力が沼地の奥へと集まるようになっているらしい……凄いファンタジーらしい。


(見た感じは簡単に取れそうなんだけどね……)


 貴重な素材なのに私が取りに行かない理由。それは結晶へと向かう1人の勇敢なプレイヤーが教えてくれる。プレイヤーは2羽の鳥のモンスターを引き連れていた。


ザァァァ……


 泥を掻き分けて結晶に近づくプレイヤーの背後からサメの背ビレのようなものが出現し、どんどんプレイヤーへと近づいていく。プレイヤーはパートナーに指示をしたようで、パートナーたちが羽を飛ばして背ビレを攻撃していく。

 しかし背ビレはジグザグに動いて回避し距離を詰め……


バクン!


 泥から飛び出しプレイヤーをパートナーごと丸呑みした。飛び出したときに見えたのはサメの頭部……下顎部が真ん中から横に広がっててエイリアンみたいだったね。


「あれがスワンプ・メガロドン……現状絶対勝てないモンスター。霊結晶のガーディアン」


 霊結晶の柱が発見されてからその存在が確認されている化け物。霊結晶へと近づく愚か者を見つけると現れて丸呑みにして何処かへ去っていく。町の資料によると何度も討伐部隊が組まれたけれど、環境の悪さに瀕死になる前に何処かへ去っていくので生き残り続けている。ちなみにボスは別に居るからあれと戦う必要は無い……絶対勝てないし。


(まぁ、ここ次の町に行くのに関係無いからボス自体も倒す必要無いんだけどね……割と面倒なモンスターらしいし)


 スワンプ・メガロドンに関して他に言うこととしては霊結晶に近づかなければ襲われない。沼地のモンスターを間引いてくれるそこそこ有用なモンスターということで討伐依頼は取り消し。現在テイマーギルドは定期的に撤退させ、スワンプ・メガロドンが居ない隙に霊結晶を回収しているんだとか。

 ちなみに近づくことに対して制限は設けられていないから自由に取りに行ってOK(死ぬ覚悟があるのなら)。プレイヤーは死んでも蘇るからチャレンジする人が多いらしい。肝試し感覚なのかな?


(私は……今まで1回も死んでないのが唯一誇れることだし。無謀なチャレンジはしたくない)


 それに決死の覚悟で取りに行っても少ししか手に入らない。実験やスライムの餌にしにくいし、町じゃ買えない(テイマーギルドが買い取ったものは教会に優先して売られるため)。あれに手を出すなら安定した数を集められるようになってからだね。


(あの結晶の柱は観光のゴールとして良かったし……よし、帰ろう)


 スワンプ・メガロドンも見れたことだし……というか今も目の前で新しいプレイヤーが飲み込まれていった。桟橋に残されたパートナーが消えていってるね……プレイヤーの復活地点に送られてるのかな?

 多分、死ぬことでデスペナのチュートリアルが発生するんだろうけど……わざと死ぬのも面倒だしお金が無駄になる。拠点のために貯金してるからね。


(今後も安全に取り組んでいこう……)


 私はフードバイキング(人間が喰われる側)を背に、セカンディアへ向かっていった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポよく進んでいて面白い [気になる点] 日常で匂うメタンガスは漏れてるのに気づきやすいように後から匂いが足されてて、本来のメタンガスは無臭です。
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