第103話
(表彰台辛……観戦席からの視線がヤバい)
種族型の決勝が終わり、私は舞台の上に作られた表彰台に立っていた。隣には同率3位の虫系の人も居る。3位決定戦は無かった……正直、ナギとの戦闘で疲れてたから3位決定戦しなくて助かった。
(優勝はナギ。優勝したプレイヤーに負けたならクティアさんも満足してくれるかな?)
ちなみに決勝は怪獣大決戦みたいな感じになってた。死霊系側は大型のゾンビにスケルトン、隠していたドラゴンゾンビを選出。ナギ側は私の時の面子を選出。互いにドッタン!バッタン!と振動&轟音の凄い試合だったね。
決まり手としてはナギ側の羽毛トカゲ、エンジェの存在……光属性で死霊系の天敵。浄化で弱らせて味方をサポートし、そこに高火力の攻撃が叩き込んで優勢となった。死霊側もエンジェとスティグレを倒してたから割と惜しかった……最後はドラゴンゾンビとラヴィアのブレス対決でラヴィアが競り勝ち決着が付いた。
(迫力ありすぎて今までの試合が霞みかけたからね……)
なお観客席は大盛り上がり。特に男性プレイヤーが興奮してたね……やっぱり大きいモンスター同士のぶつかり合いが好きなのかな?かく言う私も好きだけど。ロマンがあるからね。
私が表彰式を乗り切るためにそんなことを考えている間も表彰式は進んでいく。後は千獣国フレンドリアの王様からトロフィーを受け取れば終わり……見せ物もようやく終わる。
トロフィーの授与は3位からで虫系のプレイヤーが受け取り、私の番になった。
「その服装……成程、あの女のお気に入りか。3位入賞見事であった」
「あ、ありがとうございます?」
なんか王様気になること言ってたな。あの女って……もしかしてクティアさんのこと?私が頭に?を浮かべている間にトロフィー授与は終わった。そして最後に観客席から拍手が送られる。そして身体を光が包み込み王都の拠点へと送られた。
「ノロォ!」
「ぐふ……!?」
転移して早々、留守番していたルベリーが抱きつき変な声が出た。わ、脇のいいところを頭突きされた。グリグリしないで……
「ドロォ……」「スナァ……」
「メキュ!」「ビリリ!」「メララ!」「ヒヤァ」
「プラァ……」「ヒュウ!」
同じく留守番していたスチンとレンシアがライムたちを労った。次のイベントはしっかりと連れていきたいね。
「とりあえずトロフィー飾ろう……」
ルベリーにしがみつかれている私は、持っていたトロフィーを近くの棚の上に置いた。後でちゃんとした鑑賞棚を買ってこよう。
「ん?なんか運営とチェリーからメール来てるね」
イベントが終わったのでプレマの方を確認しようとした私は、運営からメールが来ているのに気がついた。開けてみると今回のイベントについてのアンケートのお知らせ……それとサプライズのようなアップデートの発表だった。
「1番最初の情報は対人戦専用の施設の追加かぁ……今回のイベントを受けてかな?」
今回のアップデートの最大の目玉。対人戦をするためのコロシアムの設置。王都の東側に新たな区画が作られ、そこにコロシアムが作られるらしい。
コロシアムでは今回のイベントと同じ3対3の試合の他に、フルメンバーの5対5の試合など色々な形式がある。細かいルールとかはまだ調整中みたいだけど……これは対人戦専門のプレイヤーが出てきそうだね。
「次に第4回公式イベントの開催発表……今回は第3陣のプレイヤーも活躍できるものみたいだね」
詳しい内容は書いてない。開催日は10月27日……丁度2週間後だね。しばらくはこれに向けて色々やっていこう。
「後は細々とした調整がいくつか……これは後で確認しよ」
運営からはこんなもんか。じゃあチェリーの方を確認しよう。えーと、何々……
「食事のお誘い?」
なんでもチェリーの知り合いのプレイヤーが王都で料亭をしているらしく。お疲れ様会として奢ってくれるらしい……なんか私のトトカルチョで儲かったららしいからね。
(私の倍率高かったからね)
儲けた分食べるか……パートナーはライムとルベリー連れて行こうかな。大人数で行くと邪魔になるし。あとちゃんとした料理がどういうものか体験させたいしね……
「集合時間は20時か……リアルの夕食後ね」
時間あるし少し色々やろうかな……あっ、そうだ。大事なこと忘れてた。
「10体目のパートナーを迎え入れる準備しようか」
昨日丁度lv80になったからね。与えるご飯とか用意しないと……地味に何をあげるか悩んでるし。
(金属って地味にレパートリーあるからね)
特にゲーム独自の金属もあるしね……この辺はクティアさんに相談かな?この後神殿に顔出しに行くしその時に聞いてこよう。しばらくはルベリーのご機嫌取りしないとだからね。
ギリギリギリ……
「……ルベリー。ちょっと脇腹がジワジワ絞まってるから力緩めて」
私は抱きついてるルベリーに内臓を吐かされそうになりつつ、ルベリーが満足するまで頭を撫でたりしていった。
◇
「3位おめでとう。そしてよくできました!」
「ショゴ!」
「ありがとうございます」
神殿に報告に来た私は応接室でクティアさんに褒められていた。ショゴちゃんもパチパチと触手で拍手してくれている。
「特にゴブリン系を一方的に倒したのが良かったわ……ふふふ、あのセクハラタヌキはしばらく大きな顔できないわね。精霊とドラゴンの所も1回戦敗退してお通夜ムードだったし……次の神殿会議が今から楽しみ」
余程鬱憤が溜まってたのか、クティアさんは見たことが無いような愉悦の笑みを浮かべていた。ご満足頂けたようで何よりです。
「さて、私のお願いも聞いてくれたことだし……ご褒美としてこれを渡しとくわね」
クティアさんはそう言うとテーブルの上に銀色の光沢のある石を置いた。これは……鉱石?
「これはテーパダイト。高温と低温の両方に強くて急激な温度変化も平気な金属。それでいて鋼よりも硬いから金属属性のスライムに与えるご飯としては優秀な素材よ」
テーパダイト……温度って意味のテンパチュアから取った名前かな。温度変化に強いってところが強いね。
金属属性の子の弱点の1つとして熱々に熱した後にキンキンに冷やすと熱破壊によってダメージを受けることがある。一応、身体を構成している金属によって耐えられる幅が変わるらしいけどね。
「丁度相談しようと思ってたので助かります……でもこれ高かったのでは?」
「あー、実はそうでも無いのよ。むしろ鉱石としては安い方。特性のせいで使いにくいからね」
温度変化に強いテーパダイト。その欠点は加工が物凄く面倒くさいというもの。強い火属性のパートナーの力を借りないと溶かすことができず、整形後は強い氷属性のパートナーの力で急速冷却しないと歪んでしまう。
そのため絶対にテーパダイトじゃないとダメという状況でも無ければテーパダイトは使えない。活用方法としては鉱石を食べて進化先が決まる物質系やスライムくらい。
「活用方法が少ないから採掘量が少なくて、纏まった量を一度に買うのは難しいのよね。買う時はテイマーギルドに話を通しておくとスムーズになるから……あとスライムの神殿所属って一緒に言っておくと楽ね」
「分かりました」
私はクティアさんから纏まったテーパダイトを受け取った。後はモンスターショップで新しい子を迎え入れるだけだね。
「あー、それと。大会の様子を見た感じ、そろそろ下の試練に挑戦しても大丈夫。あっちは戦闘ってよりは経験が重要だし……聖女になるの頑張ってね」
「了解です」
さりげなく試練を進めてねって言われた気がする……大丈夫って話だし挑戦してみようかな。どこから進めるか悩むね。
その後、ログアウトするまで私はクティアさんとお茶しながら世間話をしていた。




