第101話
なんとか年内に間に合った……
準決勝。ちょっとの休憩時間を挟んで行われた第1試合は中々に派手だった。一糸乱れぬ動きで進軍するレギオンアントたちと、大きな身体とタフな生命力で動き続けるアンデッドたち。
始めはレギオンアントたちは強靭な顎や蟻酸で敵をジワジワと削って苦しめ、アンデッドたちは攻撃に耐えてる感じだった。が、レギオンアントたちのスタミナやMPが切れてからはアンデッドたちの逆襲が始まった。
(結果としては耐え切った死霊系側の勝ち……)
虫系側の攻撃力が高かったり、アンデッド側に属性で弱点を突くことができれば勝者は違ったかもね。死霊系側もギリギリになるまで削られていたからね……さて、そろそろ現実逃避やめるか。
「次の試合……気が重い」
相手はドラゴンを完封してきたプレイヤー……とりあえずメンバーはライム、レモン、プルーンで行く予定。アセロラ、メロン、チェリモには見守ってて貰おう。
(アセロラに関してはデルタさんとの戦いの反動で燃え尽きてるし……)
「メラ〜……」
満足したのか凄い静か。プルーンがアセロラが変になったと思って珍しく気にかけてたからね……アセロラがこうなってるの私も初めて見たし。
「時間が経てば治るでしょ……」
私がそう呟くとドアがノックされた。さて、時間だね。私はライムたちを連れ移動する。
(せめて無様には散らない……スライムの底力を見せてやろ)
控え室でのネガティブな感情は全部捨てた。私はやる気を漲らせて舞台へと上がる。相手は既に来ていてパートナーたちも既に並んでいる……
「「シャァァァァァ!!」」
「ギィルルル……」
相手のパートナーは赤い大蛇のラヴァ・キラーサーペント。それと稲妻のような模様のあり頭から3本の青白光る角を生やした黄色のコブラに、羽毛で覆われ背中から2対の翼を生やした白いトカゲ。
(ラヴァ・キラーサーペントはドラゴンとの試合で見たけど、残りの2体は初めて見るね)
と言うか公表されてるデータに無い。コブラは見るからに雷属性。羽毛トカゲの方は……一見すると風属性に見えるけど、見た時に天使が思い浮かんだから光属性かな?
(コブラは純粋にアタッカー……羽毛トカゲはメロンの香り対策かな)
光属性だと状態異常を治せる能力が多そうだからね。まぁ、1番の問題はキラーサーペントだけども……プルーンとの相性最悪だね。火属性かつ大型、プルーンがどれだけ耐えれるか。
(ライムの回復に期待しよう……にしても対戦相手の人の顔、初めて見たね)
相手のナギって人。フードの付いたコートを装備してて、そのフードを被ってて観戦だと顔が分からなかった。正面で相対してようやくどんな顔をしてるのか分かった。なお、性別に関しては胸の部分で女性って分かってた。
(なんというか幸薄そうな感じの顔だね……あと目が凄い眠そう)
髪色は灰色の混ざった水色。目はオレンジ色でめちゃくちゃ眠そうな目をしてる……なんだろう。
「「何処か既視感があるような…………えっ?」」
私と対戦相手でハモる。それと同時に相手の声を聞いて相手の正体に大体察しがついた……ただそれを今言うのはやめておこう。他人の目や耳が多いしね。私はそう思って相手に確認するのを後に回した。しかし私は忘れていた……
「…………名前、顔つき、そしてその体型。もしかして心?」
(馬鹿ヤロー!!何、私の名前言ってんだー!!)
こいつ、白凪渚はそういうのを気にしない無神経な奴だと言うことを。プレイヤーネームとリアルの名前が一緒で良かった……じゃなかったら面倒になってた。
「確かに私の名前はココロですよ?もしかしてカタカナ読めないんですか?」
「……いや、そういうわけじゃ」
私は嫌味を混ぜて誤魔化しながら軽い身振りで『余計なことを言うな!』と伝える。流石の無神経馬鹿も察したのか口を閉じた。こいつ……後でも文句言おう。それか口に苦い薬を流し込むか。
(てか渚もこのゲームしてたのか……)
しかも第1回公式イベントで1位ってことは私と同じ第1陣か……なら夏休み明けにでも言ってくれれば良かったのに。
(いや、渚はそういうの言わないタイプだった……)
大事なこと以外はどうでもいいと思ってる節があるからね……私がそんなことを思っていると審判が開始の合図を出そうとした。私は気を引き締めて合図を待った。
「準備は良いですね…………それでは準決勝第2試合。始め!」
「ラヴィア。スティグレ。やれ」
「「シャアアアア!!」」
「プルーン防御!ライムとレモンはプルーンの後ろに!」
向こうのアタッカーに攻撃命令が下され、キラーサーペントの口内に真っ赤な炎。コブラの角にバチバチと電撃が迸り始めたのを見て、私はプルーンに防御を指示を出す。
キラーサーペントの口から爆炎が放射状に放たれ、コブラの角から空に放たれた雷撃が降り注ぐ……なんだこれ?世界の終わり?
「ヒ、ヤァ……」
「ビ、ビリリ!」
爆炎はプルーンが大盾で防ぎ、雷撃はレモンが電撃の鞭で誘導し吸収しようとした。しかし爆炎は氷の大盾をガンガン溶かすためプルーンは凍結液で補修しなければならず、レモンの方も電撃が強過ぎて吸収し切れず周りにビリビリと小さく放電している。
「メキュ!」
ジワジワと削られていくプルーンとレモンをライムが回復させていく。ライム自身も熱と電気でダメージを受けているけれど、レモンたちを優先して治していく。
「「シャアアアア……」」
爆炎のブレスと無数の雷撃が収まった。キラーサーペントは口から煙をモクモクと出し、コブラは全体的に身体の模様が燻んで角は灰色になっている。
「へぇ…………今のを耐えるんだ。大体のボスを殺し切れる攻撃なのに」
パチパチとナギは拍手をして賞賛してくる。ムカつくー……てかなんでスライムに対して恐ろしい攻撃してきてんのさ!
「こっちも反撃……って行きたいけど」
レモンの攻撃を絶対にあのコブラに吸収されるよね……プルーンに相手して欲しいけど、キラーサーペントに邪魔されそう。あの羽毛トカゲの能力も判明してないし。
(こっちはまだダメージが回復し切れてないし。さーて、どうしようかな?)
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