第98話
というわけで1日経過してお昼を回り、種族型本戦になった。自由型と属性型の結果?自由形は有名な攻略クランのリーダー、属性型は土属性の人が優勝してたね。
「自由型は色んなモンスターが見れて楽しかったね……属性型は戦術が結構参考になった」
特に属性型は運も絡んでたからね。弱点の風属性が1回戦で負けてしまって当たらず、相手が攻め系の戦術がメインだった。土属性の防御性能の高さを活かせる戦いができていた。
(攻めてくる相手の攻撃を壁を使って防ぎ、消耗したところを一気に叩く……)
構成も防御力が高いゴーレムのパートナーと回復役のパートナー。そして相手の属性に合わせた攻撃役……攻撃役は土や石だけじゃなく、泥や砂でかなり対応幅が広かった。特に決勝の火属性との戦いでは敵の炎を泥の波で鎮火させながら押し流すという物量の暴力してた。
「あれはレンシアの戦闘の参考になったね……」
ちなみになぜ私が土属性の人のことをこんなに話すかというと、この人のパートナーにスライムヒューマが居たんだよね。。
種族名はマッドウェイブ・スライムヒューマ……名前の通り泥を操り、決勝で火属性のパートナーたちを泥の波で押し流していた。
「スライムが活躍するのは自分のパートナーじゃなくても嬉しいよね」
そういえば自由型の方にもスライムがパートナーで居たね。そっちはスライムヒューマじゃなくて普通の丸いスライム……名前はミスリル・スライムっていう金属のスライム。ちょこまか動いて相手を撹乱してて面白かった。
(そういえば……本戦に出てる人たち、割とスライムを登録してたね)
スライム評価されてきてる?なら本戦で恥ずかしいところを見せられないね……次の試合が私だし。
種族型のこれまでの試合結果は……
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種族型 第1回戦
▶︎1試合目
コガネ(虫系)vs ウオマル(水生系)
winner コガネ
▶︎2試合目
サイクツオウ(物質系)vsカクリヨ(死霊系)
winner カクリヨ
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第1試合は虫系のプレイヤーの勝ち。レギオンアントっていう種族で統一されていて《連携》を軸にした戦い方をしていた。相手の人は魚のパートナーたちで応戦していたけど……レギオンアントたちの機械のような統率力に負けてしまっていたね。あと魚系のモンスターって空中を泳げるんだね……初めて知った。
第2試合は死霊系のプレイヤーが勝っていた。5m程のゾンビとスケルトンが相手のゴーレムたちを力比べをしていて面白かった。まぁ、力比べをしている間に死霊系側の幽霊が魔法を放ってゴーレムたちが倒されてしまった。
「第3試合はどうなるかな……まぁ、ほぼ勝敗が着きそうだけど」
私は目の前のスクリーンを見る。今更だけど私が今いるのは闘技場の選手控え室。登録してるパートナーたちと一緒に試合の時を待ってる状況。その他のメンバーは拠点でお留守番してる……スクリーンは設置しっぱなしにできたからこっちの様子は見れるようにはしてある。
ちなみに第3試合の様子としては精霊系側が最初ガンガン攻め立てていたけど、獣系側のプレイヤーが的確な指示で攻撃を捌き相手が消耗したところを反撃していっている。
精霊系側はなんか戦い方が雑だった感じがした。なんというか火力のゴリ押し、戦闘に出していたパートナーは火、雷、風って攻撃性能全振りの子たちだったし。
(短期決戦を狙ったものの耐え切られ、MPが枯渇してるから反撃もできずにボコられる)
精霊系とスライムは少し似ている部分もあるから、ああならないように気をつけよう。と、獣系側のプレイヤーが勝ったね。それじゃあ私の番だ……
「ココロ様。準備はよろしいでしょうか?」
「大丈夫です」
案内役の人(NPC)の後を出場する子たちと一緒に移動する。長い廊下を歩き私は遂に戦いの場である舞台の上に立った。
ワァァァァァ!!!
舞台に上がると観客席の声援、そして人が沢山居るからなのか熱気を感じた。うわぁ……こんなに人が見てるとか胃が痛くなる。でも……
(初戦で負けたらもっと胃が痛くなる……)
クティラさんに何を言われるか……想像しただけで寒気がしてくる。あの人の圧とか怖い……
(とりあえずこの嫌な想像が無いものになるように試合頑張ろう)
私はたった今舞台に上がってきた相手……対戦相手を見る。向こうのパートナーは赤い金属鎧を装備し黄色の金属盾を持ったゴブリンが3体。武器は2体が剣、1体が青い宝石の付いた杖を持っていた。
(あの鎧……火属性対策かな?盾は雷属性か)
こっちのアタッカーの属性に合わせた防具……装備が潤沢な種族は良いよね。汎用性があって。こっちは色々考えなきゃいけないのに。まぁ、今回はその準備も無駄だろうけど。
(てかゴブリンの神殿の服……割と普通だね)
相手の服。修道服のお手本みたいな服なんだよね……あっ、相手のプレイヤー男性ね。なんというか裏切って魔王軍に付いた司教って感じがする。
「それでは試合を始めます。準備は良いですね?」
「こっちは大丈夫だ」
「問題無いです」
審判が双方に確認を取る。私は返事を返してパートナーたちを前に出す。向こうも自分のパートナーを前に出した。
「それでは戦闘開始!」
審判が戦闘開始の合図を出すと相手のゴブリンたちが盾を前に出して突撃してくる。私はそれに対してプルーンに指示を出して前に出しつつ……
「メロン。《酒肉華の香り》全開」
「プラァ……」
最終兵器メロンに指示を出す。メロンの身体の桃色の花が満開になり桃色のモヤが周囲に広がっていった。今回のメンバーはライム、プルーン、メロン……アタッカー担当無しの編成。でもこれで問題無い……だって。
「「「ゴブッ!?ゴブゥゥゥ!!!」」」
「お、お前ら。何で同士討ちしてるんだ!!?」
誘惑対策の無い相手ならこうなるから。私はボコボコと殴り合うゴブリンたちを見てニヤッと笑う。魔法使いのゴブリンも杖で殴ってるしね。相手のプレイヤーは仲間割れし始めたパートナーたちに頭を抱えるしかできない。
ゴブリン……装備の幅が潤沢でできることが多いけれど、状態異常……特に魅力や誘惑にめちゃくちゃ弱いんだよね。誘惑対策ガチガチして誘惑消しを飲ませないと無効にできないくらいに。つまり……ゴブリンたちにとってメロンは最大の天敵ってこと。
(ふふふ……メロンの能力は予想も付かなかっただろう……)
第2回イベントの時は仲間にしてなかったし、予選も出さずに隠していた。これで対策されてるなら拍手するしかないね。
なお、メロンを初戦で出して良かったのか?って思う人も居るだろうけど。2回戦の相手がね……どっちもメロンの活躍が無さそうで。
(植物系はそもそも魅了が効かなそうだし。鳥系は飛ばれたら届かないからね)
というわけで初戦に投入。結果相手を完封できたので大満足。
「これが普通の戦闘だったら薬で治せるでしょうけど……この闘技大会では薬は使えませんからね」
「くっ!!」
治すにはゴブリンたちが気力で捩じ伏せるしかないけど……あの様子じゃ無理だね。仮に治せたとしても誘惑と一緒に酩酊も発生してる。千鳥足でこっちを倒せるかな?
「そろそろいい感じにHP削れたかな?プルーン」
「ヒヤァ……」
ゴブリンたちの仲間割れを傍観していたプルーンがゴブリンたちに近づく。巻き込まれて攻撃受けるとか詰まらないので、ゴブリンたちの動きは凍結液でガチガチに凍らせておいた。
(この使い方、普段あんまり使わないんだよね)
理由としては飛距離が短い、手からしか出せないから槍+大楯を出してると使えないんだよね。今回はまだ大楯しか出してないから……
「「「ゴ、ゴブ……」」」
ゴブリンたちは誘惑状態のまま身体のあちこちが凍りつき停止する。この状況でも誘惑が切れてないのは呆れるどころか逆に凄いと思う。
(凍って頭が冷えても良いだろうに……)
煩悩が強過ぎる。私は槍を作ってグサ!グサ!グサ!とトドメを刺していくプルーンを見ながらそう思った。
「そこまで。勝者ココロ」
「負けた……あいつら煩悩を薄くするために座禅でもさせるとするか」
「西方系の神官服で座禅って、違和感凄いですね」
「ハハハ。それもそうだな。まぁ、俺の分も頑張ってくれ」
私は相手のプレイヤーと握手し舞台を降りた。無事、第1回戦突破……次は第2回戦だね。
「どんな戦い方をするのか……しっかりチェックしよう」
余談
ゴブリンの神殿はNPCは生臭坊主が多いけど
所属してるプレイヤーはストイックだったり、まともな性格の人が多い
なので他の神殿のNPCたちは「異邦人が下剋上して生臭坊主共追い出してくれないかな?」と思ってたり……




