第92話
「安全地帯到着。まさかアントライオンが周りに沢山居るとは……迂回路探すの地味に大変だった」
2つ目の安全地帯。周辺に10体近くのアントライオンが巣を作っていた。しかも分かりにくいように作られてたものもあって、安全地帯を見つけてウキウキのプレイヤーを殺す気満々だったね。全部倒して亜竜の化石骨を回収したけどね。
「さて、それじゃあお待ちかねのレンシアの進化といこう」
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進化先
▶︎サンドトラップ・スライム
砂漠に生息するスライム
砂のコントロールに長けており流砂を発生させ獲物を砂漠の下へと引き摺りこむ
操った砂によって地形が変化することで地図が無意味になり、数多の旅人を遭難させた悪魔
砂の中を素早く移動できるため、広大な砂漠では神出鬼没であり
その辺のドラゴンよりも恐れられている
▶︎デザートローズ・スライムヒューマ
人に近づきたい、人になりたいと願った土属性のスライムの進化先
主人に愛され、主人を深く信頼していないと進化先に現れない
人に近くなったことでより砂の扱いに長け、結晶化させた砂は岩のような硬さを持つ
人とモンスター。その境目に至る可能性をもつ
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デザートローズ。確か砂漠とかで見られる薔薇の花みたいな形の石だったかな?特殊な条件で生成されるものだったはず……昔、テレビで見ただけだから合ってるか分からないけど。
「それじゃあデザートローズ・スライムヒューマに進化させるね」
私はレンシアの進化を開始した。進化したレンシアはレモンみたいな低身長タイプ。砂でできた身体には白いキラキラ光る結晶の粒が混ざっていて、頭には髪飾りのように小さな砂でできた薔薇の花があった。前髪長くて目隠れみたいになってるのは臆病な部分が容姿に出た?
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レンシアlv1/60
種族:デザートローズ・スライムヒューマ
(第3進化)
HP:180/180
MP:150/150
スキル
《悪食》《物理耐性・Ⅳ》《砂擬態》
《消音移動》《砂操作・Ⅳ》
《砂結晶化》
砂の粒を結合、圧縮させることで結晶化させる
結晶化した砂は簡単には砕けず、武器や盾として利用できる
《砂漠熱砂》
周囲の砂を高温にする
高温となった砂は周囲の水分を少しずつ蒸発させ、土を砂へと変えていく
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なんかチェリモが冷却能力を持ったからなのか、レンシアは加熱能力を手に入れてるんだけど。しかも湿った地面だろうが乾燥……砂漠化させて砂を作れるようになってる。
「薬草の乾燥にも使えるかな?」
地味にあれ時間かかるからね。アセロラにやらせようものなら炭になるし。アセロラは加減が下手だから……
「とりあえず1回戦闘してもらおうか」
私たちは1回安全地帯を出た。手頃な獲物を探してたら、そこそこ離れたところにアースラプトルが居た……あれで試してみるか。もう気づかれてるし……相変わらず探知範囲が広い。
「スナァ……」
レンシアはサラサラ……と身体を崩して砂漠と同化していく。そして私たちに向けて走ってきているアースラプトルの周りから砂の棘が無数に生えた。棘は先が白い結晶のようになっており、キラキラと日光を反射している。
「キュィィィ!?」
棘はアースラプトルの鱗を容易く貫き傷を負わせる。進化前は柔らかい部位とかじゃないと刺さらなかったのに。
「結晶化させた砂。中々に優秀だね」
結晶化した砂に評価をしていると、今度はブワっと布のように砂が広がった。砂はダメージで怯んでいたアースラプトルを包み動けなくしていく。そして完全に動けなくしたところで砂が赤みを帯びた。
ジュゥゥゥゥ……
「キュィィィ……!」
肉が焼けるような音と共に白い煙が上がり、アースラプトルは悲鳴をあげる。あれが《砂漠熱砂》の効果か……なんて拷問向きな技なんだろう。
「アセロラの炎とは違う使い方だなぁ……」
あっちは炎による炎上効果。こっちは加熱による火傷効果がメインってとこか……レンシアの方は拘束で逃げれないから中々に凶悪。
(最悪、レンシアの方は結晶化させて完全に動きを止めることもできる)
拘束力は高そう……大体分かってきたし、そろそろアースラプトルを解放してあげよう。可哀想だし。
「まぁ、解放は解放でも生からの解放なんだけど……レンシア、トドメ刺してー!」
ちょっと離れてるから大きな声で指示を出す。それが聞こえたのかアースラプトルを焼いている砂の周囲から砂の触手がいくつも伸び、先を結晶化させてからアースラプトルへと次々に刺さっていく。
「黒ひげ危機一髪みたいな倒し方してる」
てか1人でアースラプトルを完封できるの普通に凄いね。これは良い戦力として期待できる。
「これで目標も達成。化石骨を試したいし拠点に帰ろう」
それと帰る前に新しい粉砕機と加熱機を購入しよ。今回の素材を売れば買えるぐらいお金が貯まるはずだからね。あとレンシアの服。
(そういえば服って同化系スキルあるとどうなるんだろう?その辺もチェックしないと……)
私は色々考えながら安全地帯へ戻りポータルで帰還した。
◇
ガリガリガリガリ!
「おー……流石店で1番性能の良いやつ。浄化結晶をどんどん削っていってくれるね」
前のよりも大きいから一度に粉砕できる量も増えて楽。前の粉砕機は今まで砕いていた素材用に活用してる。
「加熱機の方も良い感じだね」
同時に購入した加熱機ではゴーレムの氷塊を溶かしている。こっちもどんどん溶けて水になっていっている。これは今のところ氷塊用だなぁ……あっ、ちなみに鍋は今までのは火力に耐え切れないので専用の鍋を買う羽目になった。そのせいで分離機に残しておきたかったお金も吹っ飛んだ。
(分離機買わないと飢餓関係の薬に手を付けられないんだよね……)
ちなみに手持ちの遠心分離機ではできなかった。やると猛毒と飢餓が混ざった固形物と水に分離しちゃったんだよね。なので必要になるのは魔導分離機っていう、混ざっている効果を分離させる分離機が必要になる。そしてこの魔導分離機は馬鹿みたいに高い……今回の買い物が大体30万ぐらいだったんだけど。魔導分離機って70万ぐらいするんだよね。
「そもそも遠心分離機は亜竜の血を分離するのに使ってるしね」
こっちの方が優先度高い。エアリアル・モスキートの血袋の血から作った抗体液に比べて、亜竜の血から作った抗体液は3倍くらい効果に差が出たからね。特に副次的効果は出なかったけど……効果が3倍になる時点で満足。
「ま、今回の設備投資で充分稼げるはず……魔導分離機はそのうち買おう」
下準備頑張ろう。氷塊はこの際全部溶かして水にしとく……そのためにタンクも買ったんだし。こっちは買ったの随分前だけど……
(てか加熱機はもう1個あっても良いなぁ……)
今後はしばらく氷塊を溶かした水を使うだろうし……また金が飛ぶ。このゲームでまともな貯金ができたの最初だけなんですが?
「スナァ……」
「あっ、ありがとうレンシア。しばらく頼みたいこと無いから自由にしてていいよ」
私はレンシアからカサカサになった薬草を受け取った。レンシアの服もバッチリ購入している。いつも通りメイド服で今回は巫女服風。色はオレンジ色だね。
(巫女の袴……緋袴って赤以外は邪道なんだっけ?)
すっごいオレンジ色なんだけど大丈夫?まぁ、ゲームだし大丈夫か……にしても本当に種類あるな。
「さてと、乾燥した薬草はどうかな?」
自然乾燥のものと比べてみる。一気に乾燥させたからかレンシアの方が色良いね。効果の方も試してみるか……私はパパッと回復薬を作った。
(1番最初の薬……もう作るのも手慣れたね)
今回はシンプルに普通の水と薬草だけで作った。効果比較するならシンプルな方が良いしね……
「色は特に変わらず……効果もそこまでかな」
味の方は……あっ、レンシアの方がエグ味や苦味が少ないね。どこかスッキリした味わい。
「味が良くなるのは良いね」
パートナーのこの中には味が原因で薬を飲まない子もいるらしいからね。私の丸薬とかは飲まないと効果発揮できないから味は結構大事。
(今度レンシアに薬草の乾燥頼むか……)
乾燥させとけば地下に置いておけるしね。レンシアの乾燥は水分が限りなく0になるから早々腐らないでしょ。
「んー……これでこの土日にやりたかったことは終わったね」
あとはちょくちょく予選の順位を確認しつつ1位をキープするため……レートを荒稼ぎしてるから多分大丈夫だろうけどね。さっき見た時順位が全く変動してなかったし。
(上位は兎も角……下位も変動してなかったのは違和感あったけどね)
まぁ、1位キープし続けられるから良いことなんだけど。とりあえず予選に関してはそんな感じで……残りは実験でもしてよう。かなり試したい素材が溜まっちゃったし。
「平日はそんな感じで時間を潰していこ」
私は素材の下準備を続けていった。




