第90話
ちょっと設定ミスがあったので修正しました
(2024年11月17日)
「そういえば、ここの先って行ったことないなぁ……」
雷鳴の小砂漠で雷光砂を掘って回収していた私はふと呟いた。前回来た時は砂を取ってすぐに帰った……そのせいで奥がどうなっているのか知らないんだよね。
(悦楽の沼地や旧ノーステルマには化け物が居たけど……ここにも居るのかな?)
スワンプ・メガロドンにヘルゲート・ガーディアン……今まで行ったことのあるサブフィールドには強いやつが居た。ここに居てもおかしくはない……
「興味が湧いたしちょっと奥まで行ってみようか……」
雷光砂の採取も終わったしね。私はライムたちに声をかけて奥に進むことにした。ちなみにメンバーはライム、レモン、プルーン、ルベリー、レンシア。
「レンシアのlv上げも順調……ここの敵は相性良いから上げやすい。相手が弱いから経験値少ないけど」
雷属性は土属性に弱いからね……ここは砂漠だからレンシアの武器は沢山あるし。戦闘経験を積めて
(あとレンシアの進化先に変化を与えられれば良かったんだけど……)
レンシアはどうやら雷光砂を含め、ここの砂はお気に召さなかったみたい。まぁ、別に良いけどね……特殊進化に拘ってるわけじゃないし。
「奥に進むと雷の頻度が凄い……レモンよろしく」
「ビリリ」
近くに落ちた雷は鉄の棒を持ったレモンに引き寄せられていく。充電充電……いつもMAXだから無駄だけども。ここだとレモンの攻撃も意味無いからね。相手に吸収されちゃって。
「ガァァァァ!」
「スナァ……」
奥に進んでいる私たちを邪魔するようにライジングウルフが出てくるが……レンシアの砂に絡め取られ、砂の槍でグサグサと刺されて光へ変わる。うーん、無慈悲……
「ここの敵、ちょっと弱めだし」
環境が厳しいからかモンスターの強さが気持ち控えめなんだよね。てかモンスターの骨もそろそろ違うやつから採取したい……今のところは霞森が第1候補か。獣型はまだあそこ以外で見たことないし。
(南の方も行かないとだけど……あっちは相性悪いんだよ。属性の問題で)
南の町、サウスレイクス。大きな湖の真ん中に作られた水上の町……設定として漁業が盛ん。周囲にはダンジョンが1個と攻略のためのフィールドがあるんだけど……ダンジョンは半分水没していてメインアタッカーのレモン、アセロラが機能停止。雷は水で拡散して威力が少し下がる、火は普通に相性的が悪い……今ところはプルーンとチェリモしか攻撃できないかな?
(チェリモも微妙だけどね……迷路型で狭い場所らしいから)
フィールドの方は山だったかな?あちこちから湧き水の湧き出ている山。行くならこっちかな……なんか調べたところ水雪崩とかいう独自の災害が発生するらしいけども。
「と、ここが奥地かな……これより奥は行ったら確実に死ぬね」
私はちょっと小高い砂丘の上から奥を眺めた。雷鳴の小砂漠の奥にあったのは光輝く巨大な流砂……バチバチと電撃を放ちながら渦巻き中心に流れていく。幻想的だけども飲み込まれれば死ぬ……綺麗さと殺意の高さを感じさせられる。
(だけどモンスターは居なさそ……ん?)
私が流砂の周りを見ていると上に気配を感じた。流砂の丁度真上は雷を発生させている砂雲の中心……渦巻く砂の雲が光ると雲の中に大きな何かの影が見えた。
見えた影は雷光が発生するたびに影が見え、次第にそれは大きくなった。近づいてきている?と思った瞬間、影の主が砂雲から出現した。
「キュオオオオオ……!」
砂雲の中から現れたのはクジラ。青白い身体に砂色の雲を天女の羽衣のように纏う姿は幻想的……サイズは大型漁船ぐらいあって丸呑みされるかもしれない恐怖があるけど。
「キュオオオオオ……!」
クジラは流砂の中心まで降りていくと口を開けて流砂に突っ込んだ。そして砂をガバっと口に含んでいくと砂雲へと帰って行った。口から溢れる砂がキラキラと跡を残していっていた。
「あれがここの主かぁ……見た感じそこまで攻撃的では無いね」
かといって倒せそうも無いけど。基本的には空高い砂雲の中……降りてきてもあの巨体だからボディプレス一発で潰されて終わり。他にも特殊能力モリモリだろうからね。
「まぁ、良いものは見れた……それじゃあ帰ろうか」
本腰入れてレンシアのlv上げ……大砂丘で頑張ろう。アースラプトル対策どうにかしないとだなぁ……
「まぁ、色々策は用意してある……」
とりあえずは拠点に帰ろう。
◇
雷鳴の小砂漠から無事に帰ってきた。帰ってきてすぐに大砂丘でlv上げ……と行きたいけれど、間髪入れずに行くのはライムたちに負担がかかる。なのでしばらく休憩時間……ついでにやっておきたかったことあったしね。
「この組み合わせはダメだったかぁ……じゃあ次はこれとこれを組み合わせてやってみて」
「プラァ……」
裏庭の角にある温室(1番安い狭いやつ)で私はメロンと作業していた。やっているのは品種改良……そう私は終わりの見えない底なし沼に手を出していた。
(今ある素材だけでも種類が莫大だからね……しかも品種改良後の植物も選択肢に含まれるからね)
今は特薬草と霊力草でやっている。今後の主軸になる商品に使うからね……今のうちにやっておきたい。
「例のアレとかはすんなり行ったんだけどね……まぁ、粉砕機がまだ買えないし。大量生産はまだだから気長にやっていこうか」
「プラァ……」
私の言葉にメロンは凄い眠そうな返事を返す。温室が暖かいから眠くなるみたいなんだよね……この温室は品種改良中に別の植物の花粉が入らないようにするためなんだけども。
「じゃあ、私は戻るね。寝ても良いけど作業はやってね」
「プラァ……」
暖かさに頭がユラユラ揺れ始めたメロンに声をかけ、私は温室を後にした。あれは寝るね。まぁ、やることはちゃんとやってくれるから良いけど……いつも働いてもらってるし。
「メロンには今後も栽培で頑張って貰わないと……」
私は裏庭でワサワサと生えている薬草類を眺めた。あとでまた少し貰っていこう……
(種を植えれば4日で収穫できる……ゲームだとはいえ凄いよね)
雑草もびっくりな成長速度。まぁ、肥料とスチンの水を使ってブーストしてるからね。成長が早い分、効果が下がることもないし。
「ビリリ!」
「メララ!」
「ヒュウ!」
裏庭から本館に入るとレモンたちが目の前を横切っていった。鬼ごっこ中か……ライムたち用の部屋の中でやって欲しいんだけどな。あそこは暴れても大丈夫な部屋だから。
(まぁ、実験室に入らなければいいや……今鍵かけてるし)
実験室は使ってない時は鍵をかけてる。ライムにも1本渡してるから、料理する時は自分で開けて使ってる。
「残りのみんなは……応接室かな?」
応接室っていうか居間なんだけどね。私はそんなことを思いながら応接室に移動した。思った通り、残りのメンバーは応接室に勢揃いしていた。ライムとプルーン、ルベリーはトランプ中、スチンとレンシアは一緒に本を読んでた……まったりしてるね。
「私も少しまったりするか……最近、忙しく動いてた気がするし」
lv上げも急ぎじゃないし……ちょっとゆっくりしよ。私はソファに座り、ゲーム内で買った薬の専門書を手に取った。これを書いた人、中々に有名な調薬士らしいんだよね……クイラさんとは別部門の。
(まぁ、クイラさんの方が邪道っぽいんだけどね……基本的にこの世界だとパートナーの力を借りるのが当たり前のようだから)
むしろパートナー無しのあの人がおかしい……そういえばパートナーを連れていない理由って知らないや。今度会えたら聞いてみようかな?
「へー、この素材ってこういう使い方もあるんだ……」
私は読書を楽しみ時間を溶かしていった。




