第85話
エピソード的には100話になりました
祝100話!……って言って良いんですかね?
「しばらく風笛の霞森は行かなくていいね……あそこの攻略は面倒過ぎる」
レンシアとチェリモを進化させた翌日の午前。私は調薬室で色々実験していた。昨日手に入れた素材をちょっと試してた……珍しく1人でね。ライムとルベリーは離れたところで料理してる。人が食べれなさそうなものが作られていってて笑うしかない。今も何か煮込んでる……
進化したレンシアとチェリモは各々砂の操作と飛行の練習中、プルーンが付き添ってくれてるから安心して任せられる。
「薬に関しては状態異常対策はいくつか更新できたけど、特薬草と霊力草はちょっと失敗したね……素材に対して水が力不足って所かな?」
浄水と聖水はダメだった……それぞれの上位の素材が必要になるかもね。亜竜の血液とかちょっと気になってる。
「浄水とか最近はライムの浄化液で楽してたしね……これの用意が1番面倒」
中間素材を用意するのが生産で1番大変な作業だけど、これも生産の醍醐味だからね。
(といってもなぁ……浄化草の上位のアイテムって何処で手に入るんだろう?)
聖水の方もね……あっ、そういえば。ライムの浄化液に漬け込んだ呪詛氷晶のこと忘れてたね。呪いの欠片みたいに霊結晶にできるかな?ってやってみたんだけど……浄化し切るのに時間がかかりそうだったから浄化液に漬け込んで放置してたんだよね。
「文化祭とかですっかり忘れてた……」
私はルベリーに食べられないように隠しておいたビーカーを出してきた。
「なんか……凄いドス黒い液体になってるんだけど?」
なんかドロドロしてるし……私は液体を別のビーカーに移しながら入っている筈の結晶を取り出した。黒い固まりだった呪詛氷晶は淡く光る結晶へと変化していた。結晶の中には光の粒みたいなのが見える……
「素材名は浄化氷晶……望んだ通り霊結晶の上位の素材だね」
呪いが取り払われ反転した氷の結晶。強力な浄化の力を秘めていて、強力な聖水や浄化アイテムの素材になる。ただ光属性の強化アイテムにはならなさそう……それは南のフィールドにあるんだったかな?
「問題はこっちか」
私は黒くドロドロになった液体を見た。これも素材……名称は蝕まれた聖水。聖水が浄化し切れない呪いに蝕まれたもの。液体化した呪いであり、漬け込んだものを呪う効果がある。
ただし素材によっては溶けて消えてしまう。試しに薬草を入れてみたらジュ!って音を出しながら溶けてしまった……
「これは後で色々検証しよ……」
下手すると手持ちの素材の種類が倍に増えそうだからね。あと呪われた素材とか使いにくそう……一先ずは特薬草で作る上級回復薬、霊力草で作る中級魔力薬を作れるようになることが先決だね。そのためにはこの浄化氷晶を使って上位の聖水を作ってみよう。私は加工するために粉砕機に浄化氷晶を入れた。
ガ……ガガガガ!
「わー!?ストップ!ストップ!」
いつものように粉砕をしようとしたら粉砕機から聞いたことのない音が出た。緊急停止させたから大事にはならなかった。セーフ……
「この粉砕機のパワーで砕けないのか……呪詛氷晶はできたんだけどなぁ……」
あーでも、呪詛氷晶の時もちょっと怪しい音はしてたんだよね……これは粉砕機も新しいやつにしなきゃかな?
「お金が無くなる……」
いつまでお金に苦しめられるのだろうか……私は机に突っ伏す。やばいストレスなのか嗅覚が変になってきたかも。なんか変な異臭が……ん、異臭?
「メキュ?」
「ノロォ?」
「ちょっ!?ライムとルベリー何してるの!!?」
私が顔を上げるとライムとルベリーが煮込んでいた鍋からモクモクと毒々しい緑色の煙が出ていた。異臭の原因はそれかー!!
私はバタバタとライムとルベリーの料理?の後始末をした。なんか毒に悪臭、嗅覚異常って状態異常が併発してるんですけど!?
「料理名?アイテム名?が謎の物質Sってなってるんですけど?」
効果説明無しってところが1番怖いんだけど……とりあえずこれは廃棄しよう。こんな特級クラスの危険物は完全に消滅させるに限る。
「さて……今後同じことが起きないように指導しようか」
「メ、メキュ」
「ノ、ノロォ」
私が料理できないからって放置し過ぎてた……私がログアウトして居ないときに同じことが起きないよう、ちゃんと指導しよう。中学の家庭科程度の知識しかないけどね。
(スライムの価値観を組み込みつつ何とかしよう……)
私は午前の残りの時間を料理指導に使った。色彩の迷宮攻略は午後に回すとしよう……
「ルベリー。とりあえず呪い欠片を砕かずそのまま投入はやめなさい」
「ノロォ?」
◇
午後になって色彩の迷宮攻略を開始した。凄く久しぶりな気がするね。ちょっと前まではよく来てたんだけど……人も増えてるみたいだし。割と状態異常でボコボコにされてるけども。
「なんで猛毒消し買ってきてないんだよ。危うく壊滅する所だったぞ」
「いや、毒消しでいけると思ったんだ……ちょっとパートナーの装備更新でお金無くて……」
「おっ、スライムマスターさんだ……えっ、何でメイド?」
人が多いから凄い視線集まるな……奥までさっくり行ってしまおう。私は地図を見ながら地下3階まで移動した。
今回はレンシアとチェリモを中心にライムとアセロラ、プルーンを連れてきた。
「地下4階への階段の位置もある程度把握してるしね」
ということでレンシアとチェリモの戦闘訓練をしながら進んでいこう。まずはデッドリーベノム・スパイダーから……1匹残して殲滅して残ったやつに攻撃させよう。寄ってきたやつはアセロラに焼き払わせる。
「キシャァァァ!」
「スナァ……」
「ヒュウ!」
残されたデッドリーベノム・スパイダーに対し、レンシアは《砂同化》で地面に潜伏、チェリモは攻撃の届かない高度まで上がる。
「ヒュウ!」
「キシャァァァ!!」
チェリモは高いところからデッドリーベノム・スパイダーに《霧風弾》を撃ち込んでいく。デッドリーベノム・スパイダーは届かない距離からの攻撃にイラついている様子を見せる。そんなデッドリーベノム・スパイダーの足元の地面が動くと砂が足に絡みついた。
「キシャァ!?」
砂の拘束に驚いた反応をしたデッドリーベノム・スパイダーは振り払おうとする。しかし砂はがっちりと固まっていて足を動かせないでいる。
動けない相手など最早ただの的……上からチェリモが《霧風刃》を飛ばして背中を切り裂き、下からは砂でできた杭が胸を貫通する……デッドリーベノム・スパイダーは致命傷により息絶えた。
「戦闘は問題無いどころか想定よりも良かったね……だけど誰?レンシアにあんな恐ろしい技を教えたの」
動けなくしてからの串刺し攻撃……隠密で近づいてからの攻撃だから避けるのは難しい。なんて恐ろしい技なのだろう……
(水気のある場所じゃ使えないのが唯一のデメリットか……そういうところでバランス調整されてるのかな?)
チェリモの方も飛行がだいぶ安定していた。そのおかげで有効射程ギリギリの高度から撃ち下ろしてだからね……個人的には霧の効果を体感できなったのが残念かな?攻撃面でどういった効果があるのか知っておきたかった。
「そこは回数を重ねて推測していくしかないか……じゃあ、次はスタンラバー・センチピードを相手にしてみようか」
色々な相手を経験させていこう。今度は長い相手の対処だね……私はレンシアとチェリモに色々と経験をさせながら奥へと進んでいった。




