第1話
緩くまったりやっていきます
よろしく
『ようこそ。【Monster・Evolve・Online】の世界へ』
図書館のような本棚が並ぶ部屋。荘厳さを感じさせる場所で私、清水心は女性のような音声を聞いていた。
【Monster・Evolve・Online】。通称MEOはモンスターの育成に特化したファンタジーVRMMO。プレイヤーは一切の戦闘能力を持てず、育て進化を重ねたモンスターの力を借りて冒険する……ここまでは普通の育成系ゲーム。
MEOが他の育成系と区別できる点はモンスターの進化のレパートリーの多さ。1種のモンスターが何種類もの進化先を持ち、その進化先も更に沢山の進化先を持っている。進化先はそのモンスターの経験が反映されるため、ひたすら戦わせるだけではいけない。扱き使ってストレスが溜まると離反して逆に襲われるらしいしね。
(まぁ、私はあんまり『ガンガン行こうぜ!』的なの得意じゃないしね)
私はMEOに日常の疲れに対する癒しを求めてるから。夏休みの暇つぶし兼まったりと楽しませてもらおう……とりあえずキャラクリは終わりっと。私はゲームの概要を思い出しながら、進めていたキャラクリを終了した。
このゲーム、プレイヤーが戦えないから名前と容姿を決めればキャラクリ終わりなんだよね。名前は考えるの面倒だったからココロ。容姿は白髪紫眼にしてみたけど……なお、服装はファンタジーのThe村人って感じ。
「身長弄れないのがなぁ……」
17歳の高校生……なのに身長は150cm程度。クラスメイトからは心ちゃんと小動物のように扱われる。まぁ、お菓子貰えるからそれなりに美味しい立場なんだけども。
「胸が少しあるのが幸い。ツルペタストーンだったらメンタルブレイクしてたよね」
なんか身長よりもメンタルに来るみたいだし。友達が、私より胸が無い別の友達に巨乳アピールされた際に、この世の終わり的な表情してたから。とりあえずゲーム進めよ……さっさと遊びたい。チュートリアルはまだ続くし。
『次は最初のパートナーにするモンスターを選んでください。パートナーにできるモンスターの一覧はこちらです』
目の前に本が1冊浮かび上がってくる。手に取って開くとモンスターのカタログのようになっていた……選べるの多いね。
「最初の時点でこんなに多い……直感で選ぼう」
能力値とか得意なこと苦手なことが書いてあるのを全部チェックしてたら頭がパンクする。育成ガチ勢の人はしっかり確認するだろうけど、私はもうパラパラ捲ってビビッときたモンスターにしよ。私はカタログをパラパラと捲っていった。
(獣系はモフモフできるけどそれはリアルでもできるからなぁ……ゴブリンとかは不細工だから嫌)
なんかこう……現実では味わえない感じの愛玩動物系モンスターは居ないものか。私は溜め息を吐きながら次のページにする。そして指を止めた。このモンスターは……
「丸くてスベスベプニプニ……しかもリアルでは絶対に出会うことができない生物!」
私が少し興奮しながら見るのは青い饅頭のようなフォルムのスライムってモンスター。説明欄には……
ーーーーーー
スライム
なんでも食べる掃除屋
弱いモンスターの代表格
進化の可能性を凄く秘めているがとても弱い
弱いことがある意味チャームポイント
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凄い弱さを強調されてる。だけどそれが良い!寧ろ弱いからこそ育成する価値があるとも言えるしね。私はスライムを最初のパートナーとして選択した。カタログが光の粒になって溶けていき、光の粒が集まると丸い形になっていく。そして一瞬強く光るとカタログに載っていた通りのスライムになっていた。
『スライムがパートナーになりました。名前を付けてください』
「あなたの名前はライム。よろしくね」
「ピュキ!」
スライムから「ス」を取っただけの名前。まぁ、ライムって丸くて青い(緑)柑橘類だからそれなりに合ってるでしょ。私はライムを抱え上げながら自分に言い聞かせる。じゃないとセンスが悪いと認めることに……
私が自分のセンスの無さを自覚しないようにしている間もチュートリアルは進んでいく。メニューの使い方や今後の進め方的なものだったから割愛するけどね。
『以上でチュートリアルを終了します。それでは良い旅を』
チュートリアルを終えた途端、私とライムを光が包み込む。そして気がつくと広場のような場所に立っていた。
ピロン♪
『称号:新人テイマーを獲得しました』
なんか称号も手に入れた。称号は貧弱なプレイヤーが活躍できる要素の1つ。条件を満たすことで獲得でき、その称号を付けることで自身やパートナーにバフを与えることができる。今回手に入れた新人テイマーの効果は……
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新人テイマー
▷効果
プレイヤーのlvが10になるまでデスペナルティを半減する
(この称号はlv10になるか、ゲーム内168時間経過で消失します)
▷取得条件
【Monster・Evolve・Online】を開始する
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スタートダッシュ用ってところかな。プレイヤーのlvはパートナーが戦闘を行うことで上がっていく。lvが上がるとパートナーにできる数が増えるんだったかな?確か今は2体までしか仲間にできないはず。
「lv上げか……とりあえずライムの能力を確認しよ」
私はメニューを開いてライムの能力を確認した。
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ライムlv1/10
種族:スライム(未進化)
HP:30/30
MP:20/20
スキル
《悪食》
どんなものでも食べることができる
食事によるデメリットを無くす
《食育》
食事によって経験値を得ることができる
《打撃耐性・Ⅰ》
打撃攻撃による被ダメを10%軽減する
△△△△△△
攻撃に使えそうなスキル無いね……こりゃ弱い弱い言われるわ。
(《悪食》と《食育》……これは食事で最初の進化を目指すのが良さそう)
となると何を食べさせるかが重要……適当に食べさせるのはダメそうだから食事を厳選しなくちゃ。どちらにしろ……
「お金は必要だね。金策しなきゃ」
チュートリアルの最後の方でテイマーギルドに所属するのが良いってあった。クエストを受けて報酬を得られるし、モンスターの情報も集めやすい。
(早速向かうとしよ……)
私は町の地図を確認しながらテイマーギルドに向かった。ライムのプニプニを楽しみながらね。
「あー……癒される」
これは癖になりそう。私は癒されながら歩いていった。