8 母さんと楓の両親
その夜の母さんのはっちゃけっぷりは凄かった。
特上寿司を出前でとって、三人で食べた。
母さんはビール片手にまだ上機嫌だ。
と、思っていたんだけど。
「悟、そこに座りなさい。」
「いや、もう座ってんだけど。」
「よく勇気を出して一歩踏み出したね!お母さんは嬉しい!」
「酔ってんのか?」
「酔ってない!……明日も楓ちゃんはウチに来る?」
「は、はい。そのつもりでした。」
「そう。じゃあ、明日の帰りは私が車で送ってあげる!」
「は?なんで?」
「いいの!悟が勇気出したんだから、お母さんも応援するの!」
「?どういう事?」
「いいから!私に任せなさい!」
一体何なんだ?
翌日。
「なんでさゆりさん、急にあんなこと言い出したの?」
「わかんねえ。楓の両親に物申す系な?」
「ええ?大丈夫かな?ウチの両親、周りの評価は結構いい方だよ?」
「さあ?なんか考えでもあるのか、ただ文句言ってやるって思ってそうな気もするけどな。」
「えー、なんかちょっと不安なんだけど……。」
「まあ、言い過ぎたりしたら俺と楓で抑えるしかないだろ。」
「うーん……。」
そしてその日の夜。
夕食も終え、リビングで少し寛いでから、母さんが楓の両親に電話を掛けた。
「今から楓ちゃんを送っていくって連絡しておいたから!」
「あ、ありがとうございます。」
若干楓も不安そうだ。
「いざ!!!!」
母さんだけが張り切ってる。
楓の家に到着。
母さんが先頭に立ち、インターホンを鳴らす。
ドアを開けて楓の母親が出てきた。
「なんですか?いちいちインターホンなんて鳴らさずに楓を置いて帰ったらどうですか?」
「わたくし、山下さゆりと申します。遠山課長はご在宅でしょうか?」




