表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

5 楓の事情



「アタシには二つ上のお姉ちゃんがいるんだけどさ、すっごく優秀なの。」


「うん。」


「幼稚園くらいの時は良かったの。お父さんもお母さんも二人に優しかった。」


「ああ。」


「小学校に入ってからかな。お姉ちゃんは勉強も運動も出来て、私はどっちも苦手だった。」


「うん。」


「両親はお姉ちゃんを可愛がった。近所からの評判も良かったし。でも私はその頃からあんまり相手にされなくなった。」


「実の両親で、姉妹なのにか?」


「うん。まだ小学校の頃は私だって頑張ったんだよ?だけど、どうやってもお姉ちゃんみたいにはなれなかったの。」


「そんな事気にしなくてもいいんじゃねえか?」


「そう、かもしれないけど、ウチの両親は違った。なんでお前には出来ないんだって、結構キツかったな。」


「そんな……。」


「そういう両親を見て、お姉ちゃんも変わっちゃった。アタシの事気にもしなくなった。」


「今も?」


「今は口も利かないよ。あの家にアタシの居場所なんてないの。」


そんな………。血のつながった家族だろ?


どうしてそんな事が出来るんだよ?


「そっか。だから家に帰らずに公園なんかで時間を潰してたのか。」


「そう。もう両親にどう思われたっていいやって思って。こんな感じになっちゃった。」


「飯とかどうしてるんだ?」


「朝は食べないかな。両親は世間体は気にするから弁当は用意してくれてる。夜は家にあるカップラーメン食べたり、冷蔵庫の残りを食べたりしてるかな。」


「マジかよ……。」


「ごめんね?みっともないトコ見せちゃって!」


「いや、謝るなよ……。」


「けど、いいの?悟の家でご飯って……。」


「ああ。ウチで食ってけよ。この時間なら母さんもいるだろうし。」


「え?大丈夫なの?」


「大丈夫だろ。事情は話すことになるかもしれねえけど。」


「別にそれは構わないよ?でもなんだか悪い気がする。」


「気にすんな。俺が言った事だしな。」


「ありがとね。」




家に着いた。




「おおう?!!悟が女の子連れてきた!!!!」


母さんも同じリアクションするのかよ……。


「あー、あのさ、ちょっと事情があって、コイツも一緒に晩飯いいかな?」


「え、あ、う、うん。それは良いんだけど……。」


「あ、あの!お邪魔します!遠山楓っていいます!」


「は、はい。初めまして。えーと、悟の母のさゆりっていいます、よろしくね!」


「よ、よろしくお願いします、おばさ」


「さゆりさん。」


「えっ?」


「さ・ゆ・り・さ・ん。」


「さ、さゆりさん…。」


「はい!よく出来ました!じゃあご飯作るからゆっくりしてて!」


「あ!アタシも何か手伝います!」


「いいのよ!楓ちゃんはお客さんなんだから!ほら、悟!おもてなししてあげなさい!」


「え?あ、コーヒーでも飲むか?」


「い、いいのかな?」


「ああ、遠慮すんな。」


「あ、ありがとう。」



リビングでコーヒーを飲みながら楓と待っていると、夕飯の準備が終わったようだ。


三人で食卓を囲む。


まだ楓は緊張しているみたいだな。


と、気付いたら楓が声も出さずに泣いていた。


「ど、どうしたの?口に合わなかった?」


母さんが心配そうに楓に尋ねる。


「ち、違うんです。美味しいです!でも…こんなの久し振りで……。」


楓……。


「母さん、後で話すから。楓、大丈夫か?」


「う、うん。ごめん……。」


「いいから食おうぜ?冷めちまうから。」


「そうね、楓ちゃん?遠慮しないで一杯食べてね?」


「はい、ありがとうございます。」





食後、母さんに楓の事情を話した。


「そう……。そんなことが……。」


母さんは考え込んでいる。


と思ったら急に顔を上げ、


「楓ちゃん!明日は祝日で学校休みよね?」


「は、はい、休みですけど……。」


「今日はウチに泊っていきなさい!」


「えっ?」


「悟は文句ないわよね?」


「えっ?あ、ああ、別に構わないけど……。」


「じゃあ、決まり!ご両親には私から連絡するから!」


「え?いいんですか?」


「いいの!私娘も欲しかったのよー!一緒にお風呂入りましょ!」


「ええ?」


「あ、悟はダメだからね?」


「あ、当たり前だろ!」


「じゃあ、電話してくるからね。楓ちゃんスマホ貸してくれる?」


「あ、はい。」



母さんはそう言うとリビングを出て行った。


「い、いいのかな?ご飯だけじゃなくてお泊りまで……。」


「まあ、母さんから言った事だからいいんじゃね?」


「うーん……。」



しばらくすると、母さんがリビングに戻ってきた。


あー、怒ってるな、これ。


顔は笑ってるけど、引きつってる。


楓の母親か父親と話してキレかかってるな。


「交渉成立!!」


一応入って来るなり笑顔で楓に向かってドヤ顔をする母さん。


「そういう事だから、悟?お風呂の準備お願いね?」


「りょーかい。」




こうして楓がウチに泊まることになった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 母さん⇒怒って⇒笑って⇒ひきつって⇒キレかかって⇒ドヤ顔。 2週目でやっとわかりました!この時の母さんの心の動きがm(__)m [一言]  にやり様の作品は2周目でも新発見があってとても面…
[気になる点] お姉ちゃんなにも言うことはないのか...
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ