4 楓と悟2
「おおう?!!な、なんだ坊主、いきなり女の子連れてきやがって!」
「連れて来たんじゃねえよ。勝手に付いて来たんだよ!」
「どーも!!彼女の遠山楓って言います!」
「おい!何言ってんだ!」
「ほー、坊主もやるねえ。友達じゃなくて彼女連れてきたか!」
「だから違うって!」
「まあ、茶でも飲んでけ。」
「ありがとうございます!頂きます!」
「聞いちゃいねえ……。」
「いっぱいバイクがあるねー。」
「そりゃあ、バイクショップだからな。」
「どれが一番好き?」
「んー、一番か…。難しいけど、あそこの端から二番目の黒いヤツ。」
「どれ?あー、カッコいいね!」
「でも高いんだよな。高校入ったらバイトして買おうと思ってるけど。」
「いいね!なんかそういうの!」
「そ、そうか?」
「うん!っていうか、悟と話してるの楽しい!」
「え?」
「あれ?悟は楽しくない?」
あ…………。
「あ、もしかしてアタシ邪魔だった?」
いや…………。
「いや、そんなことない。」
そう、楽しいと感じてた。
「なら良かった!!」
心の底から。
「おーい、お前ら、もういい時間だぞー?」
「あ、もう外暗くなってるな。」
「ホントだ。もう帰るの?」
「ああ。」
「おじさん!お邪魔しましたー!」
「おお!また来いよ!」
「はーい!」
バイクショップを後にする。
「送って行こうか?」
「え?あー、アタシは……。」
なんだ?歯切れが悪いな。
「いいよ!ここで!今日は楽しかった!」
「いや、そういうワケにもいかないだろ?」
「え、いや、本当に大丈夫だから。」
「暗くなってるし、割と距離あるだろ?」
「そ、そうだけど……。」
「ここからずっと歩くのか?」
「うん。」
「結構時間かかるだろ?暗いし危ねえぞ?」
「そうかもだけど……。」
「じゃあ、行くぞ!ほら。」
「あ、うん。」
そこから歩きながら色々話した。
相手は女だけど、友達ってこういうモンなのかな。
楽しい。
楽しいと感じてしまった。
しばらくは楓も楽しそうに話をしながら歩いていたが、家に近付くにつれて段々と元気が無くなっていった。
何でだ?
不思議だったが、聞いていいものかどうかわからない。
なんせ、友達なんて今までいなかったんだから。
暫くすると、楓が足を止める。
着いたのか?
「ちょっとお母さんお醤油買ってくるから待っててね!」
そう言いながら30代くらいの女性がドアを開けて出てきた。
そして、家の前に居る俺と楓を見て表情を変えた。
「あら、楓。珍しく早く帰ってきたと思ったら、男連れ?」
楓は黙ったまま俯いていた。
「こんな時間に帰ってきてもアンタのご飯なんて用意してないわよ?」
楓は返事もしない。
「まったく、お姉ちゃんはいつも勉強頑張ってるのに、アンタときたら!」
え?なんだ?
「こんな出来損ないが家族だなんて!恥ずかしいったらありゃしない!まったく、誰に似たんだか!」
…娘にそんな事言うのか?
「そこをどきなさい!私は忙しいの!」
そりゃねえだろ。
「俺は山下悟っていいます。楓さんの夕飯をウチで食わせてもいいっスか?」
「はあ?勝手にしなさいよ?いちいち私にそんな事聞かないで!ほら!どいて!」
なんだよ、それ。
母親は車で出かけて行った。
「行こうぜ、楓。」
「えっ?あ、うん。」
その場に一秒でも長く居たくなかった。
来た道を楓と二人で引き返す。
しばらく無言だった。
「何も聞かないの?」
「ああ、俺な?今まで友達とか居た事なかったから、どうしていいかわかんねえ。」
「そう。じゃあ、聞いてくれる?」
ポツポツと楓が話し出した。