2 楓との出会い
俺の名前は山下悟。中学三年生だ。
小さい頃から俺は目つきが悪く、友達なんかいなかった。
身体も平均より高く、力も強かった為周りから怖がられていた。
小さい頃、父親が女を作って出て言った為、母子家庭だ。
母親は化粧品だか何だかの輸入販売の会社を経営している。
だから、母子家庭と言っても貧しいという事は無い。
母親は俺としっかり話をするタイプだったから、特にグレてどうこう、という事もない。
ただ俺の目つきと口下手なところ、力が強いところから、誤解され続けてきた。
だから、友達なんかいらない。
今日も一人でバイクショップに向かう。
もちろん俺は中学生だから免許もないし、母親からの小遣いでバイクを買う事は出来ない。
だけど、好きなんだ。
いろんなバイクを見るのが。
「おう、今日も来たのか、坊主。」
「ああ、見ててもいいかな?」
「構わねえよ、茶でも出してやる。」
このオヤジさんは俺が母子家庭で、友達もいないのを知っている。
家が近所だからかな。
いつも飲み物を出して話し相手になってくれる。
「学校は楽しいか?」
「別に。」
「気の合う奴はいないのか?」
「いない。」
「そうか、友達が出来たら連れて来いよ?」
「出来ねえよ。いらねえし。」
「そうか。」
別に何の意味もない会話なんだけど、この時間は好きだった。
「もう帰るよ。」
「そうか、もうそんな時間か。気を付けて帰れよ。」
バイクショップを後にして家に帰る。
周りも暗くなってきた。
途中の公園で誰かが騒いでいるのが聞こえた。
「放せって言ってんだろ!お前なんかに興味ねえんだよ!!」
大声で金髪の女が騒いでる。あの制服は……一中か?
「こんなトコでボーっとしてんならウチ来ねえかって言ってるだけだろ?」
「だ!か!ら!行かねえって言ってんの!!」
「そんなこと言わねえでさ?メシも奢ってやるからさあ!」
「いらねえよ!バカ!」
「あんま調子乗るなよ?優しくしてる内に言う事聞いといた方がいいぞ?」
「うるせえ!はなせ!」
女の手首を掴んで放さないヤツを見ると高校生か?
一人か。
「なにしてんの?せんぱーい?」
「あ?誰だ?お前?」
「いやあ、中学生の女を無理やりどっかに連れてこうなんてカッコいいね!先輩!」
「あ?おちょくってんのか?てめえ?!」
「おちょくってんだよ、センパイ!!」
ジッとソイツの目を見つめる。
「ぐっ、な、なんだよ、いいところだったのに……。」
すごすごとソイツは去っていった。
「へえ、アンタ、アタシと同じ中学生なのに、ビビらないんだ?」
「別に。」
「ねえねえ、ちょっと話そうよ!」
「は?なんで?」
「アタシ暇なんだよねー。ね、いいでしょ?」
「いや、俺は帰る。」
「あ!待ってよ!ジュース奢るから!」
「いらねえ。」
「ちょ、ホントに待ってって!ね、ねえ!アタシに興味あったりしない?」
「しない。」
「く……ホントに興味無しかよ…。あ、アタシの名前!遠山楓!」
「じゃあな。」
「ちょ、ちょっと聞いてる?一中の三年!アンタは?」
「なにが?」
「アンタの名前!!」
「剛田武。」
さあ、家に帰ろう。