18 弘斗の決意
結局同窓会の間、一臣は俺に近寄ってこなかった。
怖かったのか、悟に言われたことがショックだったのか。
それとも、本気で謝ろうと思っていなかったのか。
高校時代以降、友達とは普通に接することが出来た。
笑うことも出来るようになった。
けど、どうしても信じきれなかった。
悟の事も、綾の事も。
一臣の事は親友だと思っていた。
悟の事も親友だと思った。
でも、一臣は裏切った。
十年以上の付き合いの一臣が裏切るんだ。
悟や綾を信じ切れるはずも無かった。
感謝はしている。
俺の事を気遣ってくれている、心配してくれているのはわかっていた。
でも、どうしてもあの夢を見てしまう。
信じきれない。
だが。
昨日の悟と一臣の会話を聞いた後、信じられそうな気がしてきた。
悟の幼い頃からの話も聞いていた。
周りから信じてもらえずに、ずっと独りでいた悟の話を。
それでも今の彼女さんが初めて信じてくれて、悟は俺の事を信じてくれた。
だからダチになれた。
そして悟は一臣の事を俺の親友だったんじゃない、と言った。
悟は一臣とは違った。
綾は、俺が高校二年の時から今まで、ずっと傍に居てくれた。
最初は強引にだったが、俺への気持ちをストレートにぶつけてきた。
俺が応えなくても、ずっと俺の傍から離れる事は無かった。
今度は俺の番じゃないか?
俺が皆を信じる番じゃないのか?
怖くても、此処までしてくれた二人を、今でも俺の周りにいる友達を、信じてみてもいいんじゃないか?
そう、思えた。
長い間、待たせちまったな、綾。
大学での学食にて。
「綾、今日夜、時間あるか?」
「え?はい、大丈夫ですけど?」
「夜に、メシ食いに行かねえ?予約するからさ。」
「えー!!弘斗先輩から誘ってくれるなんて!!!」
「ちょ、声がデカいって!」
「あ、ごめんなさい!そ、それでオッケーです!」
「そっか。じゃあ、個室予約しとくな?」
「は、はい!でもどうしたんですか?急に。」
「うん?ああ。大切な話があるんだ。綾に聞いてほしい。」
「は、はい……。」
「ああ、いいなあ。付き合ってんだろうな、あの二人。」
「チッ!リア充が!」
「ホントな?こっちは大学生になったってモテねえのにな!」
「いいんだよ、俺にはAVがあるからな!」
「寂しいことをドヤ顔で言うのはどうなんよ?」
「いいんだよ!好きなんだから!」
「お前本当にAV好きだよな?」
「おう、新人のデビュー作品は大体チェックしてるからな!」
「そんなんでマウント取ってくるお前が可哀想に見えてきたよ。」
「今度デビューした子も可愛いんだよ!これが!」
「そして全く気にしない、ときた。凄いよ、お前。」
「ほら、見てみろよ!この子!」
「お、おい!大学の学食で動画再生しようとすんな!」
「チッ!わかったよ、ほら見てくれよ、この子!」
「へえ、可愛いな。同い年くらいか?」
「そうだな!二十歳ってプロフィールに書いてある。」
「肩にかかるくらいの黒髪、清楚系だな!」
「そうなんだよ!その割に結構大胆な」
「おい、あんまり詳細を語るな!ここは学食だ!」
「チッ!まあ、期待の新人だな!」
「どれどれ?名前は?」
「森 雪 だって。」
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