17 同窓会
同窓会当日。
大分大きめな会場を取れたらしい。
同窓会に行く前に悟の家で待ち合わせをしていた。
「よお!弘斗!上がってけよ!まだ時間あるだろ?」
「おう、じゃあお邪魔するわ。」
「久し振り!弘斗君!」
「おっと、彼女さんもいたのか。俺、邪魔じゃね?」
「邪魔じゃねえよ、楓、コーヒー淹れてくれるか?」
「あいよー、ちょっと待っててね!」
「なあ、悟、彼女さん随分お前の家に馴染んでねえ?」
「まあ、しょっちゅう出入りしてるからな。」
「四六時中一緒に居たら疲れるって言ってなかったか?」
「あ、いや、まあアレだ。言葉の綾ってヤツだ。」
「へー、そー。」
「お、俺の話はいいんだよ。綾って言えば、瀬戸とはどうなんだ?」
「あー、相変わらず、かな。」
「……そうか。まあ、お前がそれでいいならいいけどよ。」
「お待たせー!はい!どうぞ!」
「ありがとな、楓。」
「ありがとう。」
「どーいたしまして!」
悟と彼女さん、いい感じだな。
羨ましいな。
いつまでもウジウジしてる俺にはまだ無理なんだろうな。
「そろそろ時間だな、弘斗、行こうぜ。」
「ああ。コーヒーごちそうさん!」
「いいえー!二人とも行ってらっしゃい!悟は浮気すんなよ!」
「しねえよ、バカ!」
会場に着くと、懐かしい面々が揃っていた。
立食形式だったので、好きな物をつまみながら昔話で盛り上がった。
悟も元クラスメイトとの久しぶりの再会で、テンションが上がっているように見えた。
俺はクラスメイト以外のヤツとも親しかったので、悟とは離れ、会話を楽しんでいた。
楽しい気分でいたが、アイツを見つけてしまった。
須藤一臣。
あれ以来俺との接点も無く、目も合わせた事が無かった。
一人で壁に寄りかかり、飲み物を飲んでいた。
と、思い詰めた表情で一臣が悟に向かっていく。
一言二言言葉を交わし、一臣と悟が会場を出ていく。
なんだ?
二人は面識があったのか?
静かに後を追う。
「なんだよ、須藤。話って。」
「悪い。こんなところまで来てもらって。」
「それはいいからよ、用件を言えよ。」
「ああ。頼みがある。弘斗に謝りたい!間に入ってくれないか?」
「はあ?何で俺が」
「あれから弘斗と一番仲がいいのは山下だろ?」
「どーだかな。」
「許してもらえるとは思ってない!ただ謝りたいんだ!」
「へえ?本気で言ってんのか?」
「ああ!本気だ!」
「そうは思えねえんだよな。あんな事しといてよ?」
「後悔してるんだ!本当だ!」
「お前、弘斗と十年以上の付き合いだったんだよな?どうしてあんな事をした?」
「あの時は、雪奈とどうしても付き合いたかった!だから」
「だから弘斗を裏切った、と?」
「そうだ、けどそうまでして手に入れたと思っていた雪奈は……。」
「まあ、お前と森口が別れたのは聞いた。その辺はどうでもいい。」
「あ、ああ。ずっと、後悔してた。親友の弘斗を裏切っちまったことを……。」
「親友だあ?!良くも言えたモンだな!コラてめえ、須藤!!!」
「あ、あの時の俺は」
「心配すんな!須藤!てめえは弘斗の親友なんかじゃねえよ!」
「はあ?俺と弘斗は十年以上の」
「そうだよ!十年以上弘斗の”親友ポジション”に居ただけの、ただの知り合いだよ!!」
「そ!そんな事ねえよ!」
「親友だっつうなら、同じ女を好きになったとしても、ケンカしたとしても、正面からぶつかるモンだろうが!!!」
「そ!れ、は……。」
「少なくとも俺だったらそうする!」
「お、れは……。」
「こそこそ隠れて弘斗を裏切りやがって!!!!!俺はな!弘斗が許してもお前を許すつもりなんかねえんだよ!!!」
「…………。」
「俺はお前と弘斗との間に入ったりはしねえ。協力なんかしねえよ!」
「…………。」
「本気で謝りてえって言うなら、自分で動け!本気だっつーなら人の目も気にしねえで土下座でも何でも出来んだろーが!甘えてんじゃねえ!」
「……わかった。悪かった。」
悟……。
やっぱりお前は一臣とは違うんだな。
そうだな。
お前なら信じられる。
俺もまた、人を信じてもいいのかな。
信じられるような気がしてきた。
ありがとな、悟。




