16 一臣と雪奈
「え?今、雪奈、ヒロくんって……。」
「あっ!ち、違うの!ただ間違えちゃっただけなの!」
「間違えた……?」
「そ、そう!今まで一緒だったから……それで……。」
本当か?そんな事ってあるか?
今、雪奈の傍に居るのは俺だけだろ?
雪奈には俺しかいないだろ?
俺しかいないのに、弘斗の事がまだ好きなのか?
俺だけじゃなく、弘斗の事もまだ好きなのか?
嘘だろ?
もう俺も雪奈も弘斗とは関われない。
こんな裏切りをしておいて、弘斗とまた、なんて考えられないだろ?
なのに、雪奈は今でも俺と弘斗の事が好きなのか?
……待てよ?
本当に二人の事が好きだったのか?
本当に俺の事が好きだったのか?
雪奈と弘斗、二人と十年以上の付き合いがある。
そんな俺が、弘斗は雪奈が好きだと気付いていた。
雪奈も弘斗が好きなんだと思っていた。
なら、俺は?
雪奈は俺の事が好きだと言っていた。
だが、俺はそうは思っていなかったからこそ、諦めきれずに告白した。
俺は、雪奈からの好意に気付かなかった。
気付かなかっただけか?
本当に好意はあったのか?
無かったんじゃないか?
俺が弘斗を裏切ってまで手に入れた雪奈は……。
「か、カズくん?ご、ごめんね?私、本当に無意識で!」
無意識で弘斗の名前を呼んだのか?
どうして?
どうしてだよ!!!!!!!
「雪奈、俺達、距離を置かないか?」
「えっ?ど、どうして?」
「雪奈が俺の事を好きだと思えない。」
「そっ、そんな事ないよ!本当に私はカズくんのこと……」
「弘斗の事、まだ好きか?」
「えっ?あっ、あの……い、今はカズくんだけだよ!」
雪奈、嘘ついたな。
わかるんだよ、俺には。
ずっと雪奈を見てきたから。
弘斗の事、好きなんだろ?
俺よりも……。
いや、弘斗の事だけが、か?
「とにかく、しばらく俺たちは会わない方がいい。」
「そ、そんなのってないよ!私にはカズくんだけなのに!」
「頼むよ、雪奈。もう俺、キツイんだよ。別れてくれ、雪奈。」
「どうして?!私はカズくんが好きって言ってるのに!」
「雪奈が嘘ついてるのが、わかっちまったから。」
「!嘘なんてついてないよ!」
「さよならだ、雪奈。」
「いやあああああああああ!!」
それからカズくんは私が家に行っても会ってくれなくなった。
どうして?
あんなに私の事好きって言ってくれたじゃない!
酷いよ!
カズくんもヒロくんも居なくなっちゃった。
私はただ、二人の事が好きだっただけなのに。
二人と付き合ってた時は幸せだった。
私の事を二人が愛してくれる。
あんなに幸せなことは無かった。
ずっと一緒だったのに……。
二人とも酷いよ……。
気付けば辺りは真っ暗。
ここ、どこ?
「お嬢ちゃん、高校生?いくら?」




