12 弘斗の受難
二人を目撃してから、近くの喫茶店に入った。
俺はメシどころじゃなかった。
「ね、ねえ悟?少しでも何か食べよう?」
「ああ。」
「ほら、サンドイッチ!美味しいよ?」
「ああ。」
「……ダメだ。それどころじゃないか……。」
どうする?弘斗に写真を見せれば、あの女とは別れることになるだろう。
その方が良い。
良いに決まってる!
けど……十年以上の付き合いだって言ってたな。
俺にはそんな友達いないから、わかんねえ。
関係は確実に壊れるだろう。
弘斗はそれを望むのか?
せっかく付き合った彼女だ。
弘斗がべた惚れなのも知ってる。
幼馴染としての関係と彼女との関係、同時に失うってどんな気持ちだ?
弘斗は耐えられるのか?
アイツが友達思いなのも知ってる。
そんなアイツの特別な存在。
その存在に裏切られたと知ったら、俺がもし弘斗の立場だったら、どんな気持ちになる?
わからねえ。
わかんねえよ。
「悟!!!」
ムギュッ!!!
「モゴッ!」
楓がサンドイッチを口に押し込んでくる。
「な、なにすんだよ!」
「いいから!食べて!」
「お、おう……?」
「ねえ、悟は今何を考えてたの?」
「え?あ、ああ。さっきのを弘斗に言った方がいいのか、黙ってた方がいいのか考えてた。」
「そんなの言った方が良いに決まってるよ。」
「け、けど、弘斗は傷つくぞ?」
「黙ってた方が、あとあともっと傷つくよ?」
「そ、そうか?」
「うん、絶対。問題は言った後だよね。」
「ああ。」
「悟は弘斗君の友達なんだから、力になってあげなきゃね!」
「力になるったって、俺に何が出来るんだよ?」
「わかんないよ。」
「……ダメじゃねえか。」
「ダメじゃないよ!弘斗君の為に何が出来るか、ちゃんと考えることが大事だと思うよ?」
「何も出来なきゃ意味ねえだろ?」
「そんな事ないよ!その気持ちが弘斗君に伝われば、意味あるよ!」
「気持ちが……?」
「そう!だから、報告した後、弘斗君とちゃんと向き合ってれば、きっと大丈夫だよ!」
「弘斗と……向き合う……?」
「うん。だから言った方が良いと思うよ?」
「……そうだな。わかった。」
翌日、弘斗に伝えた。
弘斗たちの幼馴染としての関係は崩壊した。




