出会いと別れ
1
「三浦君、君が田仲さんに暴力を振るったのは本当かい?」
牧野博美先生は三浦憲二を睨みつけて質問する
三浦憲二は、沈黙した。
牧野博美先生はその沈黙を田仲に対する暴力の回答と判断したのだろう
「君はもっと真面目な子だとおもってたんだがな」
牧野先生が深いため息をつく
「ち、違う!田仲さんを殴ったのは」
三浦憲二は勇気を振り絞って誤解を解こうとする
「自分じゃないと言いたいのか?」
牧野先生が先回りをする
「いや、それは違わないけど」
三浦憲二は言葉に詰まる
「でもちゃんと理由があって」
「全く!男が女の子に暴力を振るって恥ずかしいとは思わんのか!」
牧野博美先生は三浦憲二の言葉を遮ってドスの効いた声で三浦憲二を叱る
「どんな理由があったとしても、女の子に暴力を振るうのは男として終わっている」
(え?何ってんだ?こいつ)
三浦憲二は空虚に牧野博美先生を見る
(ぼくが虐められた時は対して相手にしなかったのに)
そもそも三浦憲二が田仲を殴った理由は、虐めに反発した結果に過ぎない
「コラ!聞いてるのか?」
牧野博美先生の説教は三浦憲二の耳に入らなかった
「はい」
三浦憲二はとりあえず反応した
「今後、こんなことが無いように!」
牧野博美先生が釘をさす
「もし同じような事をしたら、親と相談するからな!」
三浦憲二は虐めに対して反撃する手段を失った
(お父さんが死んで、お母さんかなり大変なのにこれ以上迷惑かけられない)
三浦憲二は職員室を後にした
2
教室に戻った三浦憲二を待ち受けていたのは、あざ笑うかのようなクラスメイトからの冷たい視線だった
机の落書きは消せず、教科書やノートは破かれて、捨てられている
(何のために学校に来てるんだろ?)
この学校に味方はいない
親友である東江君を除いて
先生たちも見て見ぬふりをしている
落書きされた机を見れば、イジメがあるのは一目瞭然にも拘わらずだ
(授業が始まるまで何処かに行ってよう)
三浦憲二はいても経ってもいられず、教室を出る
「うわ!」
三浦憲二は教室のドアを開けた瞬間誰かとぶつかった
三浦憲二がぶつかったのは、親友の東江だった
「ごめん、東江君!」
三浦憲二は東江君にぶつかったことを謝った
「携帯、落としてるよ」
三浦憲二は東江君の携帯を拾う
「え?」
三浦憲二は不本意ながらルァインの中身を見てしまった
ルァインの中身は三浦憲二のイジメを主導する内容だった
もし、東江君がルァインしてなかったら、三浦憲二は知らずに済んだだろう
今まで親友だと信じていた東江君がいじめの主犯格だった
三浦憲二がこれまで学校に来れていた理由は東江の存在があったからだ
三浦憲二はただ目の前の親友は見ていることだけしか出来なかった
「東江君この内容って」
三浦憲二はルァインの内容について尋ねる
「これ、三浦君の虐めに参加しろって来てさ」
東江君は明らかにウソをついている
「そうなんだ」
三浦憲二はこれ以上深く詮索しなかった
3
この日の授業は全く耳に入らなかった
(気のせいだよね?)
三浦憲二は、必死に東江に対する疑いを振り払う
(友達の東江君がそんなことするはずがない)
そこに根拠はない
ただ、三浦憲二は、東江を信じる事しか出来ない
三浦憲二にとって、東江は学校生活の最後の砦なのだから
(東江君が虐めに加担している証拠はないじゃないか)
三浦憲二は東江の携帯のルァインを少し見ただけに過ぎない
(もしかしたら、見間違いだったかもしれないし)
三浦憲二は、現実から目を背けようとしている
(きっとそうだよ!うん!間違いに違いない!)
4
「ただいま」
三浦憲二は、家のドアを開ける
「おかえりなさい、今日は随分と遅かったのね」
三浦憲二は、近くの公園で暇つぶしをしていた
「うん、今日は用事があったから」
三浦憲二は、少し嘘を付いた
「そう、もうすぐ、運動会だものね」
今月の半ばに運動会が行なわれる
「そう、そんな感じ」
三浦憲二は、曖昧な返事でごまかした
『次のニュースです、日本時間の本日未明にメリカ軍と中原、ルーシー連合軍が太平洋で衝突したもようです。』
適当にテレビをつけると戦争のニュースをやっていた
メリカ合衆国が中原共和国、ルーシー連邦国と太平洋で戦ったようだ
「早く、ここも戦場にならないかな」
三浦憲二はニュースを見ながらボソリと呟いた
「コラ!冗談でもそんなこと言うんじゃありません!」
小言は、母親の三浦七三に聞かれていた
「ごめんなさい」
三浦憲二は言い返せず、謝った
5
三浦憲二は重たい足取りで学校に向かった
(あ、今日は上履きに画鋲が入って無い)
上履きの中に画鋲が無いのはかなり久しぶりだった
三浦憲二は教室に入ると、自分の席に座った
落書きは相変わらずあるが、それ以外は何もなかった
「あのさ、その・・・昨日の事なんだけど・・」
東江君が話づらそうにしている
昨日、ルァインを見られた事を気にしているのだろう
自分も虐めに加担していると疑われていると
「気にしなくて良いよ、東江君は虐めを辞めるように、説得していたんだよね」
東江は目を丸くした
「そ!そうなんだよ!」
東江のテンションが上がった
「もしかしたら、疑われていると思って、冷や冷やしたよ」
東江は、「ホット」肩を落とした
「俺のためにありがとう、東江君」
三浦憲二は。東江君にお礼を言う
「友達のためだから、当然だよ」
東江君の口元が「二ヤリ!」と上がる
「何かあったら、絶対に俺を頼ってよ!」
三浦憲二と東江は友情を確かめあった
「うん!東江君も困ったことがあったら、遠慮無く言ってきて」
三浦憲二は東江君に手を振って別れる
「本当に騙しやすいな!あのバカ」
三浦憲二の姿が見えなくなると、東江が小言を呟く
「あれを見たのにまだ、俺を疑ってないとかお花畑過ぎだろw」
虐めの主犯はこの東江である
しかし、三浦憲二はそのことを知らない
いや知らない方が幸せだ
「犯罪者の子供が同じ学校にいるとか気持ち悪すぎだろw」
知らない方がマシだったと言うべきか
「今すぐ、きえてくれないかな~」
ガラッ
三浦憲二は後ろ教室のドアを開ける
三浦憲二は廊下側の後ろの席の椅子を持ち上げる
「うわあぁ~!?」
三浦憲二はもち上げた椅子を東江達がいる場所目がけて投げつける
ドガ!
椅子は東江を中心としたいじめっ子の一人に直撃した
「あぶッ!」
今度は机を持ち上げて、机を投げつける
ガン!
投げつけられた机はいじめっ子の一人の顔面に直撃いた
「!?」
机が顔面に直撃いじめっ子は顔を抑えてしゃがみ込む
「ずっと信じてた」
三浦憲二は東江を見つめる
「あ・あ・あ・ぁ・ぁ・ぁ」
東江は恐怖で震えている
三浦憲二は東江向かってカバンで殴り飛ばした
ガシャン!?
東江の後頭部が窓ガラスに直撃する
窓ガラスは粉々に割れて、東江の後頭部は赤く染まった
「いったい今のは何の騒ぎだ!?」
騒動を聞きつけたのか?、誰かが通報したのか?担任の牧野博美先生が駆けつけてきた
「おい!三浦!今すぐ、東江達から離れろ!」
三浦憲二は前田博美先生を睨み付ける
三浦憲二は椅子を持ち上げると牧野博美先生に投げつけ、机を持ち上げるとまたしても牧野博美先生に投げつけた
「お前が指図するなあ!?」
三浦憲二がここまで追い詰められた理由は担任である牧野博美と言う男性が親身にならなかったのが一つよ原因である。
もしも、担任である牧野博美が三浦憲二の相談に親身になっていたのなら、このようなことは起きなかったのかもしれない
「お前は、この1年半何をしてた!」
三浦憲二の怒りは牧野博美先生に向けられた
「いじめがあった事を見て見ぬふりをして、ふざけるな!」
三浦憲二が怒るのは無理もない
三浦憲二はこの牧野博美に助けを求めていた
それを見て見ぬふりをしたのだ
これは、牧野博美自身が招いた結果と言える
8
(明日から学校に行きづらいな)
三浦憲二は逃げるように早退した
(別にいっか、あんなところに行かなくて済むと考えると気が楽だし)
三浦憲二は速足で家に帰る
「ただいま」
三浦憲二は家から帰るとある異変に覚えた
「お母さん?」
リビングから煙が上がっている
三浦憲二は急いでリビングへと向かった
「え?」
三浦憲二は目を疑うような光景を目の当たりにした
そこには、倒れこんでいる母親の姿とそれを囲むかのような炎である
「お母さん!」
三浦憲二は母親である三浦七三の元へと走る
三浦七三の動向が開いている
三浦憲二の母親である三浦七三には体液が至る所に付いており、首を絞められた後があった
「・・・・・・」
三浦憲二は母親のあまりにも無惨な姿に言葉を失った
バガン!
三浦憲二は後頭部を何者かに思いっ切り殴られ気を失った
三浦七三を強姦した犯人はまだこの家にいたのだ
「おい!長いは無用だ!頭らかるぞ!」
三浦憲二は気を失っていく中、その強姦魔を目に焼き付けた
「悪い!ガキが居たもんで」
「そのガキちゃんと殺したんだろうな?生きてたら厄介だぞ!」
「そのガキならこれで殴り飛ばしたさ」
強姦魔の一人が血の付いた木の棒を見せる
「動かないから大丈夫だろう?」
よく見えないが2人の人間が倒れている様子が見える
「おい!急がねえとこっちが巻き込まれるぞ?」
強姦魔たちは急いで燃えている家を後にした
(待てよ!ふざけんな!)
三浦憲二は叫ぶも声は出ていなかった
9
「子供の方は無事だな」
40歳前後と思われる壮年の女性は三浦憲二を抱きかかえる
「んあ?」
三浦憲二は目を覚ました
「お!お母さんは?」
三浦憲二は勢いよく起き上がり、辺りを見渡した
「お母さん?」
三浦憲二は母親である三浦七三を探す
「残念だけど、君のお母さんは既に亡くなっているよ」
三浦憲二を助けた壮年の女性は静かに伝えた
三浦憲二は一瞬だけ静かになった
「あっあっあっあぁ~!?」
三浦憲二は現実を直視した
あの火事も母親の無残な姿も夢では無かった
夢であって欲しかった。しかし、悪夢は現実だった
三浦憲二は自分のおでこを触と包帯が巻かれていた
「落ち着いた?」
三浦憲二を助けた壮年の女性がホットミルクを渡す
プルルルル
三浦憲二を助けた壮年の女性の携帯が鳴る
「分かった。直ぐ行く」
三浦憲二を助けた壮年の女性は内容を聞くと、一言だけ言って、電話を切った
「そこの貴方。この子をお願いね」
三浦憲二を助けた壮年の女性は、救助に同行していた消防隊員の青年に三浦憲二を託した
「分かりました!」
青年は敬礼をした
「ちょっと、野暮用を片付けてくるわ」
三浦憲二を助けた壮年の女性はこの場を去った
「それじゃあ、お兄さんとお話しようか?」
青年が振り向くとそこには三浦憲二の姿は無かった
10
廃ビルの近くに、スキンヘッドで筋肉質な壮年の女性が立っている
三浦憲二を火事から救い出した女性である
「なるほど、ここか!」
スキンヘッドの壮年女性は廃ビルに入って行った
「おい、おばさん!これいj」
スキンヘッドの女性は不良少年が言い終わる前に打撃を加える
「この女!」
ナイフや銃を持った不良たちが一斉に襲い掛かる
スキンヘッドの女性をそれを物ともせずに射殺しまくった
「社会のゴミ共が」
スキンヘッドの女性は死体の山を築きながら、奥へと進む
奥に進むと、一つだけ鍵がかかった部屋があった
スキンヘッドの女性は鍵を壊して中に入る
「お前がこの組織のボスか?」
スキンヘッドの女性は偉そうに座り込んでいる長髪の青年に尋ねる
「く!来るな!」
長髪の青年は逃げようとするもバランスを崩して、倒れてしまう
長髪の青年の目の前には、三浦憲二がいた
三浦憲二は拾ってきた拳銃を長髪に青年目がけて発砲した
「もしかして、付いて来てたのか?」
スキンヘッドの女性の女性の質問に三浦憲二は頷く
「こいつらがお母さんを殺して、僕の家を燃やしたんだよね?」
三浦憲二の質問にスキンヘッドの女性の女性は黙り込む
「君は僕が知っている顔じゃないから、どうでもいいよ」
長髪の青年は一安心する
「ほうっ」
ジャコ!
長髪の青年が気を緩めると、目の前の少年が銃を構えていた
「何て言うわけないだろ!お前も同罪だ!」
バシュ!?
三浦憲二が放った銃弾は長髪の青年の額を貫いた
ドサ!
長髪の青年はその場で即死した
「そうだよ、殺せばいいんだ」
三浦憲二はぽつりと独り言を呟く
その様子をスキンヘッドの女性は目を見開いて見ていた
11
スキンヘッドの女性は三浦憲二に近づく
「君はもう帰った方が良い」
スキンヘッドの女性は人を殺して眉一つ動かさない三浦憲二に恐れを感じた
「いいや、帰らないよ。命の恩人を一人で戦わせるわけにはいかないからね」
三浦憲二はスキンヘッドの女性の申し出を断った
「君は人を殺した事があるのか?」
「今のが初めてだけど」
三浦憲二はさらっと答える
「ついてこい!絶対に離れるなよ」
スキンヘッドの女性は三浦憲二を無理矢理帰すよりも、近くに居させた方が安全だと判断した
そして、廃ビルに住み付いたハングレ集団は壊滅した
12
ハングレを壊滅させた2人はビルから出る
「僕をあなたの弟子にしてください!」
ビルから出ると三浦憲二は土下座してきた
「ダメだ!家族の元へ帰りなさい!」
スキンヘッドの女性は三浦憲二の頼みを強く拒否する
「家族はみんな殺されて、もういません!」
三浦憲二は強く叫ぶ
「すまない、先ほどの失言を取り消そう」
スキンヘッドの女性は三浦憲二に知らなかったとは言え酷い事を言ってしまった
「分かった、君を弟子と認めよう
スキンヘッドの女性は三浦憲二のお願いを断る事は出来なかった。
もしも、三浦憲二に片親が残っていれば、三浦憲二のお願いは却下されていた事だろう
「最初に言っておくが、私の修行は厳しいぞ。」
スキンヘッドの女性は服を脱いだ
スキンヘッドの女性は男性プロボクサーのように筋肉が付いている
女性でこれほどまでの筋肉を付ける事はかなりの努力がいる事だろう
「まずは第一段階・基礎体力作りからだ。それが終われば第二段階・無人島の山で12ケ月間生き延びてもらう。それが終われば第三段階・実戦だ」
修行はかなり厳しいようだ
「はい!」
三浦憲二は気合を入れて返事をする