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p.3

 何事かと、力丸が坊丸へ目をやると、坊丸は、何やら、手に持った資料を読み込んでいる。


「坊兄さん。どうしたんですか? 早く明智支部長に連絡を取らなくては……」

「ちょっと待て、力丸。もしかしたら、我らは、早合点していたかも知れないのだ」


 焦る力丸を口で制しながら、坊丸は資料から目を離さない。


 ジリジリとした気持ちを抑えながら、力丸が大人しく待っていると、ようやく資料に目を通し終えた坊丸が、顔を上げた。


「もしかしたら、我らが連絡を取らねばならないのは、羽柴中国支部長かもしれん」

「羽柴支部長? 何故ですか?」


 怪訝そうに首を傾げる力丸に、坊丸は手にしていた資料を渡す。


 手渡された資料は、中国支部から提出された収支報告書のようだ。


「これが何か?」


 不思議そうに資料に目を通す力丸の隣で、坊丸は、ある一点を指して言う。


「この収支は、他の支部に比べてどちらも数が大きいのではないだろうか?」

「そうなのですか?」


 新人秘書の二人は、まだ会計報告に立ち会った事がなく、収支の細かなことなどわからなかった。


「私も、よくは分からないが、先日、蘭兄さんに見せてもらった他支部の収支表よりも、一桁ほど多い気がするのだ」


 坊丸は、眉間に皺を寄せ、じっと資料を見据える。そんな坊丸の横顔に、疑問を含んだ力丸の視線が注がれる。


「そうなのですか? でも、中国支部は、最近物凄い勢いで営業エリアを拡大しているようですし、他支部よりも収支の増減は大きいのかも知れないですよ?」


 力丸の言う通り、中国支部は、今、どこの支部よりも勢いが大きく、社内でも一目置かれているエリアだった。


「しかし、やはり、この短期間にこの額と言うのは、あり得る事だろうか? まさか、水増し?」

「まさかっ!? 中国支部は、織田社長の腹心と言われている、あの羽柴支部長の管轄ですよ? そんな事、あるわけありませんよ」

「だが、腹心だからこそ、内々に処理しようと個別に呼ばれるのかも知れないぞ?」


 坊丸の突拍子もない推理に、二人は恐れ慄き、しばし黙って見つめ合った。それから、力丸は声を震わせ、坊丸に確認する。


「では、織田社長がお呼びなのは、羽柴中国支部長でしょうか?」

「う〜ん。そんな気が……」


 再度念押しをすると、途端に弱気になってしまった坊丸を尻目に、力丸は内線電話の受話器を持ち上げた。


「もう! 坊兄さん。時間がありません。羽柴支部長に連絡しますよ」


 そう言って、力丸は、内線番号を押し始める。

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