表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

帝国陸軍vsゴブリン軍団 一回戦

小銃が一斉に火を吹き、小鬼たちが悲鳴をあげた。


牧が拳銃を撃ちながら叫ぶ。

「撃てぃ!撃ち続けろ!」


小鬼は頑強でしぶとい。が、さすがに三発、四発と喰らえば倒れ伏すほかない。


家々の屋根の上で、村人たちがどよめいた。


「なんだ!?どうなってるんだ?」

「やつら、勝手に倒れてるぞ」

「雷だ!棒の先から雷が出てる!」


正蔵が両の手を叩いた。

「はは!見事ですなあ」


飛鳥女子は「号外!帝国陸軍、常世にて残虐非道なる鬼を粉砕ッッッ!」とつぶやきながら、カメラのシャッターを切る。


陸軍兵たちがひとしきり撃ち終えたところで、牧が片手を上げた。


「撃ち方やめ! 着剣! トドメを刺す!」


兵士たちがさっと銃剣を装着する。


川の中は静まりかえっていた。

小鬼たちの遺体がぷかぷか浮かんでいるだけだ。


陸軍兵たちが川中に踏み、しぶきをあげる。


と、くだんの手斧を持った小鬼が身を起こし、激しく吠えた。


間をおかずして、川向こうの丘陵の影から新手の小鬼たちが現れた。

数はおよそ百。


牧が「全員水から上がれ!」と叫ぶ。


間に合わない。


新手の小鬼たちは五輪選手もかくやという速さで駆けると次々に川に飛び込み、陸軍兵に襲いかかった。


だが、こちらも精兵である。的確に撃ち、銃剣で刺突する。たちまち乱戦になった。


鋼太郎は屋根の上から確実に小鬼たちを撃ち抜いた。

若手の陸軍兵の後ろに回り込もうとした一匹を仕留め、土手を這いあがろうとする一匹を仕留め、村に向かって四つん這いで駆けてくる一匹を仕留める。


戦況は五分。が、じわじわと陸軍兵たちが押され始めた。小鬼たちの耐久力、回復力はまさに野生!手や足を撃たれても平然と攻撃を続けている。はじめに虐殺されたはずの小鬼のうち何匹かは、いつのまにか起き上がり、戦列に復帰している。


悲鳴と雄叫びのなか、指揮官の牧が「円陣だ!四人一組で円陣を作れ!」と声を張り上げる。


その牧に向かって手斧の小鬼が吠えた。

別の小鬼が牧に踊りかかる。


あの手斧の小鬼が群れを統率しているのだ!


鋼太郎は即座に手斧の小鬼を撃った。銃弾は小鬼の肩にめり込んだ。ぎゃおん!と悲鳴があがり、一瞬、ほかの小鬼たちの動きが止まった。


ここしかない! 鋼太郎は狙撃銃の連射レバーを押し下げた。

引き金を引くと、銃は弾倉の中身を猛烈な勢いで吐き出した。


土手を乗り越えた数匹の小鬼がまとめて始末される。


鋼太郎は弾倉を交換し、再び掃射した。


小鬼たちが浮き足立つ。


「みな!ついてきてくれ!」彼はそう叫ぶと、屋根を滑り降り、吠えながら川に向かって走った。


村長が「くそ!」と毒づいてから後に続く。さらにほかの男衆も。


小鬼たちは勢いの差を感じたのか。一匹、また一匹と踵を返し、やがて波が引くように川向こうに消えた。


しばらくすると、山裾から、無数の怒りの叫びが聞こえてきた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ