猫の天国
三十数年前、同僚から聞いた話。
真っ暗な中をエレベーターみたいに昇って行くと、突然バンッと明るくなって、だだっ広い花畑みたいな所に出た。
そこはもう涙が出る程美しい所で、なんだか嬉しくてどうしようもなく楽しくなってしまった彼は、思いっきり走り回ったり跳んだり跳ねたりした。
嬉しくて楽しくて幸せで幸せで、いくらでも走りまわっていられた。
でも目覚ましが鳴って目が覚めた。
泣きたい気分だったそうだ。
そして会社に行こうと外に出ると、窓の下、ちょうど枕元の辺りで一匹の猫が死んでいた。
彼はその猫にくっついて、猫の天国を見て来たのだと信じていた。