奴隷=人生
ポツポツ穴がある茶色い粘土の壁、萎びれた藁を紐で縛った簡単な天井。部屋の中は乾燥した空気が充満していて、呼吸する度に喉が乾いてしまう。部屋の床は砂。細かい砂粒が床の代わりで、砂の上に外壁と天井が設けられた簡易な小屋と言ってもいい。
そんな不衛生極まりない環境下の元、私は砂の上で仰向けになって仮眠している最中だ。両目を左腕で覆い、できるだけ体を動かさないように同じ体勢を保ち続けている。できるだけ体力を回復させ、次の過酷な労働を耐え凌ぐための下準備に徹する。そうでもしなければ、私が壊れてゴミのように捨てられるからだ。
私は奴隷だ。凶悪な主人に日々、痛めつけられ半殺しにされるボロ雑巾だ。家畜以下の糞。糞以下の生物だ。
「ゴホッゴホッ!」
藁の天井から落下してきた砂が口に入り、急いで吐き出す。渇いた口の中にあった唯一の唾液が失われ、さらなる渇きが私を襲う。そして、乾いた砂煙を吸い込み咽せ返る。
最悪だ。無駄な動作をしてしまったせいで、体力が失われてしまった。これでは、労働の時に支障をきたしてしまう。そうなれば、主人の気分を害してしまい制裁を与えられる。
そんな、考えたくもない予測が停止した脳裏に過る。主人が振った鞭が私の体に与えられ、痛み苦しむ風景。はたまた、主人によって蹴りや殴りを入れられ、鼻血を垂れ流しながらサンドバッグにされる風景が目に浮かぶ。
今日も一日……生き残れますように……。
それを最後に私の意識が暗闇の渦に吸い込まれ、深い眠りへと誘われていった。仮眠をして体力を回復するだけのつもりが、いつの間にか熟睡してしまった。
眠ってはいけない。ダメだと分かっている。しかし、襲いかかる睡魔が蓄積された疲労を貪りつくていく。十分な食事を取らず、安心して眠ることがない毎日。その上、私の体に見合っていない激務が既に悲鳴を上げていたのだった。