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65・ 暗黒邪神って、誰の事?

 

『ウル、スゲーウメーゾ! ホメテツカワス!』


 マリはハンバーガーを一口食べて大絶賛です。

 余計な一言は聞かなかったことにしておいて、早速みんなで「イタダキマス!」


 う~ん、美味しい!


 100%ビーフのワンパウンドパテは食べ応え十分。バンズもお肉の重厚さを、しっかりと受け止め切れる風味豊かなカンパーニュ。トマトとオニオンの輪切りもパテ同様に炭火で焙ってあり、それぞれの酸味と辛味を抑え、甘味と旨味を増していて、想像以上の美味しさです。


『それにしてもウルちゃん凄いわ。マリに教わりもせずに、新しいお料理を作ってしまうんですもの。「二ホン」にも同じような料理があるけれど、それよりずっと美味しいわ』

『っス』


 あれれ? ウルちゃんは俯いて、いつになく不機嫌そうに応えました。

 ふふふ、褒められて恥ずかしいのですね。ぶっきら棒な返事なのですが、尻尾がブルブル震えるのは押さえきれ無いようです。マリと顔を合わせて笑いをかみころしてしまいました。


『ロキエル様は、このお料理をご存じなのですか?』


 じっくりとハンバーガーを味わっていた給仕長が尋ねてきました。


『えぇ、このお料理は「ハンバーガー」と言って「二ホン」だけでなく、マリの世界では「カレー」や「ピザ「」と並んで、最も人気のあるお料理の一つです』


『最も人気のある!?』『最も人気のある!?』『最も人気のある!?』


 うわー、私ったら、また余計な事を言っちまった。同時に皆さんから声が上がりました。


『……え、えぇ、世界一と言っても過言ではないです。ただ、このままでは原価的に売価を高く設定しなければなりませんので、店舗展開を想定するなら、その点を考慮しなければいけませんが』

『あー、皆さん。また諍いになるといけませんから、この「ハンバーガー」に関しては、私に一任して下さい』


 魔王様の一言に、皆さんあからさまに不服そうな顔をしますが、さすがに魔王様を相手に、我を通す訳には行きませんでした。


 ん? ウルちゃんが突然、私の手を掴んできて、


『ロキエル様、ロキエル様!』


 ……って、ウルちゃんの瞳がキラッキラッです!?


『「ハンバーガー」って、どーゆー意味っスか?』


 まずいです。

 発祥は諸説あるにせよ、ハンバーガーラウンドスタック「ハンブルグの丸い奴」という意味だと記憶しています。そのまま直訳したら、ウルちゃんはがっかりするに違いありません。


『うん、このお料理は正確には「ハンバーガーラウンドスタック」と言って、「ハンバーガー」は『偉大なる暗黒邪神降臨せし聖域』である「ハンブルグ」という地名の事なの。「ラウンドスタック」は直訳は『丸い物』、意訳すると『魔法陣より顕現す』と言う意味ね』

『かっけーっス! 暗黒邪神様って強いんスか?』

『私は直接お会いしたことは無いのだけれど、その魔力の残滓を感じただけで、思わず拝跪してしまった程よ』

『ロキエル様がっスか!? すげーっス! まさに最強の神様っス!』 


 ウルちゃん、大喜びで尻尾ブンブン、ホッと一安心です。

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