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61・ 大物登場!

  

 私を挟んで殺気を含んだ視線が交錯します。


『総料理長、料理長。念を押しておきますが「クラムチャウダー」は、マリ様がピザ専門店用のメニューとしてお作りになった商品だという事をお忘れなきよう』

『……』『……』

 

 うすら笑いを浮かべて勝ち誇ったように言う給仕長に、苦々しい表情を浮かべて、押し黙ったままの総料理長、料理長のお二方。


 マリがマグカップに入れて運んできてくれた、クラムチャウダーを口にした途端、この有様です。う~ん、何だか気になって、せっかくの美味しいクラムチャウダーを味わうことができません。


「マリ、おかわり。それとパンあるか? クラムチャウダーに浸して食べたいんだ」

「あるよー!? 勇者さま、ちょっとあじ、こかったかなぁ~?」

「コースの一品だと丁度いいと思うけどな。野菜を裏ごしした分トロミがついて、ちょっと重たいかな?」

「ジャガイモ入れない方が、よかったかなぁ~?」

「かもな。ピザに合わせるなら」

「わかったー!」


 イラッ!! 勇者は殺伐とした雰囲気など我関せずです。

 その上、また、マリは勇者の言う事を素直に聞いて。

 私としては合う合わないよりも、このコクのあるクラムチャウダーは捨てがたいのですが、確かに勇者の言う通り、商品としてピザに合わせるには少々重たい気がします。

 私が勇者に同意しようとすると、


「はぁ~、何を言っているのですか、このフンコロガシは? アサリの旨味をしっかりと受け止めきれる、このコクのあるクリーム―スープの何処が重たいのです! マリ! そんな奴の言う事を聞く必要は有りませんわ」「コノ、カンペキナ、クラムチャウダーニモンクヲツケルトハ……マリサマ、イッソノコト、コノワタクシガ、ケシサッテ……」


 席を蹴立てて、ココ様と給仕長が立ち上がります。怖いです。

 

 日本語を理解できない方たちは『何事!?』と、唖然としているのは当然として、常ならば仲裁役に回る魔王様も『さもありなん』とばかりに腕を組んで、小さく頷きながら傍観しています。

 マリはパンを取りに行こうとしたところを、給仕長に抱きかかえられて、嬉しいような困ったような顔をしていますので、ここは私が仲裁に入るしかありません。


『お二人とも落ち着いて下さい。勇者の言う事にも一理あります。ここは皆さんのご意見をうかがってみてはいかがですか?』


『あ゛~、ロキまで訳の分からない事を?』『ん゛~、ロキエル様何か仰りました?』


 だから、怖いって。

 何故、私が睨みつけられなければいけないのですか……すると眼の端にニヤついている魔王様の姿が……。くっそー! あったま来た。アンタも巻き込んでやる! 勢い込んで口を開こうとすると、


「魔王様は、どーおもう?」


 マリの無邪気な声が響きました。


『そうですね。是非、魔王様の御意見をお伺いしたいです』


 私も、すかさず追い打ちです。


「私はこのままで良いと思いますが」


 シレッとした顔で言いやがった。

 すると、じっくりと確かめるようにクラムチャウダーを味わっていたラビちゃんが、


『あの~ロキエル様。宜しいでしょうか?』


 おずおずと口を開くと、居住いを正し、耳をピンと立たせて、


『私の意見としては、乳製品の濃厚さが、ピザのチーズと被ってしまいます。一品料理ならいざ知らず、シンプルなコンソメスープ同様、あくまでピザを引き立たせる為の位置づけの商品である必要性を重視し、もう少々あっさり目にした方が良いと思います』


 これには、ココ様も給仕長も、ついでに魔王様もグゥの音も上げられません。


 ラビちゃんカッケー!

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