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56・ 辛いの知っているでしょうに。


『ミナノモノ、シュツジンジャ、オクレヲトルナ!』


 もう、ホントにこの娘は。


『お~! マリ殿。いざ、参ら~ん!』


 ココ様まで調子に乗って、マリの頭の上に乗って騒いでいます。マリが緑のリボンを着けたみたいで、可愛いといえば可愛いのですが。


 皆さんが、ココ様の作られた温室を見学したいと言うので、向かう事と相成りました。


「おー! すげー! すげー!」


『おー! すげーっス!』


 中庭に出た途端、マリとウルちゃんが二人揃って、飛び跳ねながら駆けだします。


「ふふん、どうよ、マリちゃん。すごいでしょ~う。ココも頑張ったんですよぅ~」


 ココ様が自慢する通り、安っぽいビニールハウスを想像していた私が浅はかでした。中庭いっぱいに突如、七色にきらめく荘厳なクリスタルの城が出現していたのです。 

 ん? そういえば、


「ココ様? 結界って目に見える物なのですか?」


「ロキちゃんったら、見えなきゃぶつかっちゃいますぅ~」


 はい、ごもっとも。


「も~ロキったら」


 なぜに、マリにまで可哀想な娘を見るような目を、されなくてはいけないのですか。

 壁にへばりついて中を覗き込んでいるマリとウルちゃんを引きはがして、室内へと入ると、力強く、濃密な草いきれが立ち昇っています。


『すごいですー! 命の香りがします!』


 ラビちゃん、小鼻を膨らませて大興奮です。


 温室にはクリスタルの筒が縦横に張り巡らせてあり、その中を、ココ様の緑の粒子が混ぜ込まれた水が流れているようです。


「ふふふん、ロキちゃん、気付いちゃった? このココの粒子が要なの。淀むことなく、腐敗することなく、外気温に反応した水温で循環し続けるんですぅ~」


「ココ様、スゴ!」


「マリちゃん、もっと褒めて、褒めて~」


「ココ様、スゴすぎます!」


 はい、はい、スゴイデスネー。

 まあ、確かに、如何いう仕組みか分かりませんが、メンテナンスフリーの永久機関をいとも簡単に、文字通り朝飯前に作り上げてしまうのですから、恐れ入ってしまいます。


『給仕長ちゃんが、急ぎで、且つ継続的にって言うから、順繰りに実が成るように赤茄子の苗木を集めて来たから、ほら、ラビちゃん、その辺のは、もう、食べられるよ~』


 ココ様が言うのを、待っていましたとばかりに、ラビちゃんが実をもぎって口にすると、


『酸っぱー。でも美味しいです!』


 トマトの原種なのでしょう、細長いミニトマトといった見た目です。私も一つもぎって口にすると、果肉は柔らかく、ラビちゃんの言う通り濃厚な旨味があるのですが、酸味が強すぎる気がしますし、わずかですがエグ味もあります。生食より加熱食に適した品種なのですね。


『赤唐辛子は保存がきくから、直ぐ大量に収穫できるようにしてありますぅ~』


『赤くて、きれいで美味そうっス!』


 あ! 何やっているんですか!


『駄目よ! ウルちゃん!』


 ウルちゃんが、いきなり赤唐辛子をまとめて毟り取って、口に放り込もうとしていたのを間一髪で止めました。油断も隙もあったもんじゃ……あ! マリ! 


「何やってんの、マリ!」


 止める#暇__いとま__#もありませんでした。

 マリがいきなりウルちゃんの指ごと赤唐辛子に、しゃぶりついて「からいですぅ~」当たり前でしょうが。あ~あ、涙目になっちゃって。


 ホント、世話の焼ける娘たち、です。

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