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47・ 中心で叫ぶのは愛です。

  

 あーもう、めんどくさい。 


 マリです。


 真剣な表情をした調理部の方々に囲まれ、テキパキと作業工程を進めながら、的確な説明をしているラビちゃんと、ウルちゃん? を、最初のうちはマリのくせに、偉そうに腕組みをして満足気に頷きながら、鷹揚な態度で見守っていたのですが、だんだん不満気な表情を浮かべ始めたのです。

 最初は何か二人が間違った教え方をしているのかな? とも思いました。しかし、私の眼には手順に間違ったところは見受けられませんし、説明なら遥かにマリを凌駕しているのは明白です。


 そうこうしているうちに、マリの表情に僅かに怒気が含まれました。

 何か怒っている? 私の気づかない細かい部分が違うのかな、と思っていたら見る間に表情が曇り始めて、肩を落としました。


 はい、はい、そーいう事ですか。


 私はマリの傍に駆け寄り膝を屈してしゃがみこんで、うな垂れてしょぼくれているマリの顔を下から覗き込むようにして……って、マリが泣き出しそうな顔をしているではありませんか!

 これはいけません。

 しかし、慌てずに、ゆっくりと静かに言います。


「マリの教えた通りだね」


「……マリの?」


 マリは私に目を向ける事無く、ポツリとつぶやくように言いました。


「うん、マリの教えた通り、ラビちゃんとウルちゃんは間違えずに頑張っているね」


「……マリの教えた通り?」


 マリがチラリと私に目を向けて言いました。


「そうよ~、マリ先生の教えた通りに、ね。だから皆さん、あんなに真剣な顔をして聞いているのよ」


 マリの頬を指でつつくと、私の眼をしっかりと見据えて言います。


「そっか」


「マリはチョットこちらの言葉が分からないところがあるかもしれないけれど、私はちゃんと聞いていたわよ」


「そっか」


「うん、そうだよ」


「そっか!」


 おー! 元気になりやがった。ホッと一安心です。


 マリは調理部の皆さんにお料理をお出しして馴染んできたとはいえ、ラビちゃんとウルちゃんを取り囲んで、真剣さの中にも和気あいあいとした雰囲気で、お料理に関する質疑応答をしている輪の中に飛び込んではいけずに、一人疎外感を膨らませてしまったに違いありません。何せ人見知りが激しいくせに、人一倍の寂しがり屋という面倒極まりない性格です。


 そっと背中を押すと、マリは躊躇いがちに前へと踏み出しますが、その足が止まり、こちらを振り返ります。私が首を小さく横に振り、顎を突き出して促すようにすると、おっかびっくりといった様子ながらも輪の中に入って行きました。

 

 もちろん皆さん大歓迎で、弾けるような笑顔を浮かべます。素敵すぎます。


 マリは皆さんの笑顔を見渡して、自らもとびっきりの笑顔を浮かべ、飛びあがって拳を突き上げ、輪の中心で叫びます。


「ロキの、お乳をもむ、かんじ!」


 それは、止めやがれ!


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