45・ 恐ろしや。
ジンリッキー大絶賛です。
自分が大好きな物を、他の人も喜んでくれるのはとても嬉しいものですね……って、アンタら、飲み過ぎじゃねぇー!。
マリたちが代わる代わる運んできてくれる、様々な具材のピザを、これが美味い、あれが良い、あーでもない、こーでもないと、ワイワイ騒ぎながら、飲むわ、食うわ、あっという間に完食、完飲です。
満足気にお腹をさすっているメイドさん達に尋ねます。
『皆さん如何でしたか、ピザのお味は?』
『はい、ロキエル様。こんなにも美味しいお料理が頂けるなんて思ってもいませんでした。とっても幸せです!』
まぁ、何て正直な娘なのでしょうか。
『ロキエル様、ありがとうございます!』
口々にお礼を言うのを押し止め、
『御礼なら、あの娘たちに、ね!』
そっとマリ達に目をやりました。
『はい!』
メイドさん達が元気いっぱい、席を蹴立ててマリ達へと向かって行きました。
給仕長、苦笑いです。ゆっくりと席を立ち、ことさら優雅にメイドさん達の後を追います。マリを取り囲んで大はしゃぎのメイドさん達の肩に、そっと手を置いて、
『さあ、貴女たち、御礼が済んだら通常業務にお戻り下さい』
給仕長の優しさの中に威厳のこもった声音を聞いた途端に、
『かしこまりました、給仕長様』
メイドさん達が揃って優雅にスカートの裾を摘まんで会釈を返します。う~ん、調理部の方々同様に、職業意識の高さに感心してしまいます。
『私はこれからピザ店出店に関して、相談しなければなりませんので』
と、給仕長が言って、メイドさん達を見送り、扉を閉めた途端です。
もの凄い勢いで踵を返し、青白きオーラを滲ませながら、色をなして酒管長に詰め寄ります。
『この炭酸水は継続的に商業利用する必要量を入荷する事が可能なのですか!?』
酒管長はいきなりの詰問に、タジタジとなりながらも答えます。
『あ、あぁ、天然に湧き出ている物だから、そこに行けばタダで幾らでも汲んでこれるぞ。少々遠い場所だから輸送経費は掛かるがな』
『ふん、雑作も無い。一度行って場所を確認すれば後は転移魔法を使えば良いだけの事です……酒管長、この後の予定は何か?』
『い、いや、特に急ぎの予定は……』
『行きますよ!』
『い、行くって、何処に?……』
『貴男、頭は大丈夫ですか? どこに行くって、その天然炭酸水の湧き出ている場所に決まっているではありませんか!』
いや、いや、頭が大丈夫なのか、心配なのは給仕長の方ですって、いくら何でも急過ぎ……給仕長ったら本気です。酒管長のぶっとい腕を取るや、強引に席を立たせて引きずるように『い゛だたたた』扉へと向かいます。呆気に取られる皆さんを尻目に、
『それでは皆さん、私はこれにて失礼させて頂きます。ご機嫌麗しゅう』
見惚れるような立ち居振舞いで一礼すると、酒管長を気合を入れて『おるらぁー!』蹴り飛ばしながら『あ゛んぐぁー!』開発室を後にしました。
一連の光景を目にして、
『給仕長には、滅多な事では逆らわない事』
私は改めて頭の隅に書き記して置きました。




