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35・ つい、本音を口にしそうになりました。

  

『オドレエタ! ロキ、ゼンブ、クッチマッタ!』


「ナルホド、マリサマガ、ワタシタチノタメニ、ワザワザ、ヨウイシテクダサッタ、マカナイヲ」

『給仕長! 誤解ですから』


 マリがとんでもない事を言いやがります。そりゃあ、私も食べ過ぎたとは思いますが、他の誰よりも小食だったとの自覚がありますし『ロキ』ではなく『ロキタチ』と、正確に言って欲しいです。


『ロキエル様、それで調理部の方々に、代わりにコンフィのブランデーソースをお出ししたという事ですね?』


 え~! なぜ私が責められているの? 


『あ~、そういうことか』


 酒管長が横から口を挟みました。ややこしい事になりそうです。いやな予感全開です。


『何か貴男は知っているのですか?』

『いや、感心していたんだ。マリは総料理長が絶賛する凄腕の料理人だという噂は、昨日の今日で直ぐ耳にした。実際に合うと、あんな小娘がか? と思ったけどよぉ、数多ある酒樽の中から狙いすましたように、極上の赤ワインとブランデーを選んでいったからな、嗅覚が余程優れているんだろうな、噂通りの凄腕の料理人だと確信したよ』

『極上の赤ワインとブランデー?』

『そう、俺も時々やるんだがよぉ、酒を煮詰めると旨味が凝縮して、その旨味の本質が良く分かるんだよ。料理に使えば最高だろうよ』

『料理に使うと最高?』


 うん、最高でした。


『ロキエル様! その最高のお料理の、成れの果てが、この空っぽの大皿ですか』

『ロキエルさん! それでですか。おかしいとは思っていたのです。このコンフィブランデーソースをロキエルさんが食べようとしなかったのですから。地下で転移魔法を発動させたのは感じ取ったのですが、その後しばらく気配が掴めなかったのは、魔法陣を展開させたままだったのですね。その間にロキエルさんは、一体何を、まあ、訊くまでもありませんか』

『ロキエル! 何だ、その極上の赤ワインっていうのは、俺はまだお目にかかっていないぞ』

『ロキエル様!「まあまあ、おいしい!」ではないという事ですな。私も是非、頂きたいものです』

『ロキエル! 酒類管理部の極上の酒が、どんな料理になったのか興味津々だ。俺にも喰わせろよな』


 理不尽すぎます!

 なぜ私が皆さんから責め立てられなければ、いけないのですか。

 いちいち反論するのも面倒ですし、いっその事、暴れ出した方が精神衛生的に正解なのか? と、思った……その時です。


『お黙り!』


 おっかねー! 

 皆が口々に勝手な事を言うのをピシャリと撥ねつけたのは、ココ様でした。席を立ち、給仕長の方へ向かいながら言います。


『枝葉の瑣末な事をグチグチと、あなた方は物事の根幹というものが分かっていません』


 するとココ様は給仕長に抱えられた、マリの頬を両手の平で包み込んで、


「マリ、わたくしコンフィで作る他のお料理も、是非、頂きたいのですか……ダメ?」


 何ですか、その、小首傾げて瞳ウルウルは!


「これから、仕込み始めます、ので、お時間を、頂ければ」

「わたくし、マリのお料理が頂けるのなら何時間でも待てますわ」


 いや、もう、アンタ帰れよ!

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