表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/71

30・ お料理研究家です。


『オドレエタ!』


 マリが呆れ顔です。


「皆さん食い意地が張っていますからね」


 魔王様が不貞腐れています。

 マリの腹積もりでは朝食兼昼食として、私達だけでなく試食に訪れる方々にも、合間に小腹が空いたら軽く摘まんで頂けるように、わざわざ油紙で包んだというのに、あれだけあったパンを全部食べてしまいました。

 まあ、私も食べ過ぎてしまったとは思いますが、誰よりも凄い勢いで食べていた御方は蝶々の姿に戻って、私のお乳の谷間でお昼寝中で、


『ロキちゃ~ん。お昼ごはんになったら起こしてねぇ~』


 との事です。


 腹ごしらえも済み、マリ達は総料理長達を迎え入れる準備を始めました。何故か勇者が一番張り切っているのですが、みんなの足を引っ張らないか心配です。準備が終わる頃合いに、折良く総料理長一行がやって来ました。早速とばかりに「きやがったな!」マリは総料理長のお腹に挑んで「つよすぎます!」弾き返されています。倒れそうになったマリを料理長が抱え上げると、大喜びで、


『リョウリチョウサマ、オイデヤス』


 と、そこ迄は良かったのですが、その後に続いて入室して来た見知らぬ料理人さん達を目にすると、途端に尻込みをしてしまい、総料理長のお腹の後ろに隠れてしまいました。


「ほら、マリ、皆さんにご挨拶は?」

「う゛~」


 促しても総料理長のお腹にへばりついて、離れようとしません。人懐こい反面人見知りをするという、面倒な性格は相変わらずです。


『ロキエル様、お気になさらずに、料理の準備は出来ているようにお見受けしますので、早速お始め頂ければ結構です』

「マリ、総料理長が始めてって」

「わかったぁ~」


 マリのテンション、ダダ下がりです。気の抜けた返事をして、こそこそと総料理長のお腹の陰を抜け出して、ラビちゃんとウルちゃんに何やら耳打ちをします。

 するとラビちゃんが焜炉の前に立ち、


『こちらで「ピザソース」と、お野菜の「ピュレ」と、お豆の「カスレ」を作りますのでお集まりください。何名かの方には、お手伝いをお願いします。作業台の方ではウルが「ピザドゥ」の作成と「ピザ」の具材の切り出しと「コンフィ」の下準備を始めます。それぞれ調理手順と食材分量は指示書をご参考にして下さい』


 おー! ラビちゃん仕切ります。いつもは引っ込み思案なラビちゃんが、えらく頼もしく見えます。

 ん? ウルちゃんが私の許に駆け寄って来ます?


『っス。ロキエル様、失礼しまっス』


 失礼? ウルちゃん何を……。

 いきなり私のお乳を鷲づかみでモニュモニュします!?


『ロキエル様、こんな感じっスか?』


 ウルちゃん、大真面目な顔で言うものですから文句の一つも言えません。


『うん、そんな……かんじ? かな?』


『分かったっス!』


 それはなにより。


『う~ん、ロキちゃん、お昼ごはんですかぁ~』


 揺れて目が覚めたのか、ココ様が寝ぼけた声を上げると、スンスンと鼻を鳴らしましたが、


『ちがいますぅ~』


 と、言って、またお乳の谷間に潜り込んでしまいました。


『ロ、ロキエル様、まさか今のは……』

『ま、まさか……』

『あ~、お二人とも気にしなくて結構です。ただの大喰らいが紛れ込んでいるだけですから』


 総料理長と料理長が驚きで顔を蒼ざめさせるのを、魔王様が諌めました。


『魔王様! 迂闊にも気づかない……』

『あぁ、私的に伺っただけですから、堅苦しい挨拶は結構です』


 総料理長の言葉に反応して、総員が拝跪しようとするのを押し止めます。テーブルの隅っこでいじけて背を向けて、丸まっていたので気付かないのも当然です。


 何だかその後ろ姿が妙に哀れに思えてきてしまった……その時です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ